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===================================================== 発行部数 26 == ★★ 日刊ドラマ速報 ★★ ☆☆ 2009/05/23 (Sat) ☆☆ ====================================================================== == 目次 ============================================================== 1.土曜日の連続ドラマ 2.編集後記 ====================================================================== ---------------------------------------------------------------------- 1. 土曜日の連続ドラマ ---------------------------------------------------------------------- タイトル ザ・クイズショウ 局 名 日本テレビ系 放映日時 土曜21時00分 キャスト MC 神山 悟(27) 桜井 翔 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕 新人AD 高杉玲奈(22) 松浦亜弥 案内人(?) 篠井英介 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司 音効 竹内 昇(29) 和田正人 浦沢 瞳(27) 森脇英理子 冴島の娘 冴島美野里(7) 大橋のぞみ 謎の少女 新田美咲(17) 水沢エレナ 照明技師 松坂源五郎(55) 泉谷しげる 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき 原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP 脚 本 及川拓郎 主題歌 嵐『明日の記憶』 あらすじ 第六回 真っ白な病室の中で神山悟(桜井翔)は、鏡に映った自分をみなが らぼんやりと自分の正体を考えている。 MCとして舞台に立つ自分、高校時代に本間俊雄(横山裕)たちと 笑い合う自分、そして新田美咲(水沢エレナ)に笑いかけられる自 分……。 銀河テレビのスタッフルームでは、新人ADの高杉玲奈(松浦亜弥) が、スイッチャーの米倉信三(田中哲司)、音効の竹内昇(和田正人) 、照明技師の松坂源五郎(泉谷しげる)、浦沢瞳(森脇英理子)らと 打ち上げで酒を飲んでいた。 高杉は神山の正体について、皆に尋ねてみたが、誰も知らない。そ して、神山を連れてきたディレクターの本間が、このところ様子がお かしいと話題になる。 これからどうなってしまうのか、いったい本間は何を考えているの か……。 その頃、銀河テレビの一室では、本間が次の解答者・桂木誠(堀内 健)のプロフィールを眺めていた。じっと桂木のプロフィールを見つ めた後、本間は憎々しげに机にたたきつけた。 桂木は工場のタイムカードを押していた。同じような作業着姿の工 員たちとぞろぞろ歩いていく。と、スーツ姿の社員やってきて、桂木 にクビを宣告する。 「お前、クビだから……クビだから……クビ……クビ……」 桂木が気がつくと、そこは自分の部屋。乱雑にスナック類やゲーム が散らばる部屋に、ジャージ姿でひとり寝入っていたのだ。 不機嫌そうに家の冷蔵庫をあさる桂木。そこへ、母親の桂木美佐子 が帰ってくる。美佐子は咳き込み、体調が悪そうだ。 「ただいま、お腹空いたの?」 「……話しかけてるんじゃねーよ! それより……金は? 生活費だ よ、生活費!」 乱暴に美佐子に詰め寄り、怯えたように差し出された金を桂木は奪 い取る。 コンビニで買い物をしている桂木。 弁当を手にレジに行くと、そこに案内人(篠井英介)の姿。 「……桂木誠さんですね?」 「はあ?」 「私、銀河テレビのものでして……。桂木誠さん、あなたを『ザ・ク イズショウ』にご招待します」 案内人は言いながら、招待状を差し出す。 面食らった桂木だったが、事態を理解してほくそ笑みながら招待状 を受け取る。 銀河テレビのプロデューサー・冴島涼子(真矢みき)は、娘の冴島 美野里(大橋のぞみ)を小学校に送り届ける途中だった。 つい先日、仕事でいらだち怒鳴りつけてしまい、美野里は機嫌が悪 い。どうにか機嫌を直そうと、冴島はいろいろ話しかけてみるが、反 応がない。 ふと通りかかった教会の花壇のマリーゴールドに目をとめて、美野 里に「きれいね」というが、美野里は返事をしない。どうにか娘の心 を解きほぐそうとするが、そこで携帯が鳴る。 忙しげに携帯で仕事の話をしている冴島を無視して、美野里は一人 で行ってしまう。 「美野里!」 冴島の呼びかけは届かない。 銀河テレビの編成局長室に呼び出された冴島は、編成局長の田所治 (榎木孝明)に、「ザ・クイズショウ」のやり方について、詰問され ていた。 番組のスタイルを変えない限り、担当を変更するどころか、首もあ りうると脅される。 が、冴島は覚悟の様子で「はい」と答えるのだった。 スタジオでは「ザ・クイズショウ」の収録前。 スタッフたちが前説で観客を盛り上げたり、編集室であわただしく 機材の準備などに追われている。 冴島は携帯で美野里に電話していた。 別れ際の美野里の態度に不安を覚えていたからだ。しかし、電話は 留守番電話サービスにつながるだけで、返事はない。 不安な表情を浮かべた冴島をよそに、カウントは進み、収録はスタ ートした。 舞台中央にたったMCの神山が、大げさな身振り手振りで言う。 「人は誰でも、華やかな夢に憧れる。世界中を旅したいもの、大きな 家に住みたいもの、はたまた大金を手にしたいもの……。すべての夢 の終着点、それがこの……ザ・クイズショー!」 派手な音楽とともに番組のオープニングがスタートする。 さっそく、神山が今日の回答者を紹介する。 コールすると派手な音楽とスモークの中に、桂木が登場した。 同時に桂木のプロフィールが紹介される。 「桂木誠、東京都出身。大学卒業後派遣社員としてさまざまな職を経 験するが、二年前、すべての職をうしなってしまう。現在、母親と二 人暮らしで休職中の三十五歳」 拍手とともに、ステージの中央に立つ桂木。ものめずらしそうにス タジオ内をきょろきょろと見回している。 神山は桂木に問いかける。 「現在求職中だとのことですが、やっぱり不景気が原因ですかね?」 「いや……求職はしていないっす。働かなくても食っていけてるん で……」 「というと……株とか、インターネットとかコンピューター関係で儲 けているんですか?」 「親がまだ元気なので、働く必要ないっしょ」 スタジオがどよめく。 ぬけぬけという桂木に、神山もあきれた様子。 が、気を取り直してルールの説明に移る。 設問は七つ。ひとつ正解するごとに獲得金額が上がっていき、七問 正解したら獲得賞金は一千万円になる。その後、獲得した一千万円を かけて「ドリームチャンス」に挑戦することが出来る。そのドリーム チャンスをクリアできたら、銀河テレビが総力を挙げて夢を一つだけ 叶える、というルールだ。 「それではお伺いしましょう。桂木誠さん、あなたの夢は、なんです か?」 「いやもう……特にないっすよね」 空を仰ぐ神山。 「いやいやいや……一応、これ、言ってもらわないと」 「なに……夢とか、もう、ぜんぜんどうでもいいんだよ」 「……ちょっとちょっと、あんたは何しにきたの?」 「……さあ?」 「あの、事前のアンケートでは『限度額一杯の賞金』ということでし たけど?」 「……んじゃ、それでいいや」 「賞金でいいんですか? 限度額一杯の一億円で?」 「はい」 「……承知いたしました。それでは、桂木誠が自らの夢をかけて、こ のザ・クイズショウに挑戦します。イッツ・ショウタイム!!」 神山の宣言に合わせて音楽が鳴り、いよいよクイズはスタートした。 CM中の編集室では、スタッフ達もとまどっていた。照明技師の松 坂源五郎(泉谷しげる)がぼやく。 「……なんだか、おかしなやつが出てきたなぁ」 そこへ、番組あてのメールが届く。 手持ちぶさたにしていた冴島がメールを開くと、そこには美野里が 縛られクビから「助けて」とかかれた紙をつるされた写真が。とまど う冴島の携帯に、犯人からの電話が入った。 「冴島涼子さんですね……。突然ですが、美野里ちゃんを誘拐しまし た。……落ち着いてくださいよ。そこ……スタッフの皆さんもいるん ですよね。皆さんにも聞いてもらいたいので、スピーカーに切り替え てもらえますか?」 携帯の設定をスピーカーにする冴島。 スピーカーから犯人の声が編集室に流れた。 「スタッフの皆さん、これは……ゲームです。番組が終わる二十五分 までのあいだに、美野里ちゃんを捜し出してください。次の指示は、 第一問が終わった時点で出します。……ルールは一つ、番組終了まで 警察には言わないこと……。破ったらどうなるか、元報道のあなたら な……わかりますよね?」 「美野里に……美野里に何かあったら絶対に許さないから!」 「もう一度言いますよ。時間内に美野里ちゃんを探しだしてください。 もし、間に合わなければ……」 「あなた誰なの!?」 「……桂木ですよ。桂木誠です」 一斉に、スタジオを見るスタッフ達。そこには、不気味に笑いなが ら携帯電話をかける解答者の桂木の姿が……。 「それではみなさん……イッツ・ショウタイム!」 桂木がふざけてみせて、電話を切った。 スタッフ達は混乱する。 「なんだよこれ!」 「なんでこんなところに出てきているんですか!」 「どうするんだ」 ディレクターの本間は、指示が直接届くようにMCの神山にインカ ムを渡すようにスタッフにいう。 冴島は、本間に詰め寄る。 なんで桂木を呼んだのか、それはどういう意味なのか、と。しかし、 本間は、これは意図したことではない、と激しく否定する。 警察を呼びましょうと進言するスタッフを冴島は強硬に引き留める。 冴島は、報道番組をつくっていたころ、犯人に逆らって子供を殺さ れた親を、何人も見てきたからだ。 ──じゃあどうすれば。 そこへ、桂木から電話が入る。しっかり見ているから、警察に通報 しようとしても全てわかるのだ、もし、ルールを破ったら美野里の命 はなくなる、と。 「ふざけるなよ!」 冴島から携帯を奪ってどなりつけた本間だったが、桂木はふてぶて しく笑う。 「ちなみ……私は、あなたがたの全てをしっていますから……」 電話が切れると、スタッフ達が冴島の周りに集まる。 桂木のいうことに付き合う必要はない。番組を中止して、早く処置 をすべきだと。 しかし、冴島は言う。 「番組をまっとうします。そのうえで、美野里も助ける」 冴島の覚悟を知った本間たちは、番組の続行と美野里の探索に全力 を挙げるのだった。 さっそく問題がスタートする。 第一問「『羅生門』『地獄変』『蜘蛛の糸』などの代表作で知られ る作家といえば誰?」 解答を求める神山に、桂木が提案を持ちかけてくる。 問題のおわりごとに、桂木が神山に逆にクイズを出すので、それに 答えてくれ、というのだ。 スタジオから、ええ? とどよめきがあがる。 とまどいながらも、神山は承諾する。 「それでは問題。『百獣の王』と呼ばれる動物は何?」 「ライオン?」 「正解!」 編集室ではスタッフたちが首をひねっていた。 「……どこが指示なのよ。ちゃんと指示を出しなさいよ……」 冴島が混乱して叫ぶ。 が、本間が何かに気がつく。 「……これは、ヒントなんですよ。この問題が美野里ちゃんの居場所 を示しているんです」 にわかにスタッフが動き出す。 ライオンということは動物園か? 桂木の住所の近くに動物園はな いか? しかし、該当する所は見つからない。 第二問「アニメ『アルプスの少女ハイジ』で、ハイジのおじいさん が飼っている犬の名は?」 桂木は悩んでしまう。が、早く次の問題を出してヒントを引き出し たいスタッフから、「早く次にいかせろ」という指示が出ている。 神山は、強引に桂木から解答を引っ張り出し、問題を進めようとす る。 が、桂木は「何を焦っているのか?」と突っ込みを入れた上で、 「今日の神山さん、なんかおかしいですよねー」と観客達にアピール してみせる。 観客も拍手で賛同する。 スタジオは、すっかり桂木のペースになっていく。 桂木は言う。 「では、二つめの問題です。にょろにょろと動く、ながーい動物はな に?」 「……ヘビ、ですか?」 「正解!」 編集室では、桂木のヒントにスタッフ達がじれていた。 「やっぱ動物園じゃねぇのか?」 「あーもう、これだけじゃわかんないよ」 第三問──。 神山が問題を出そうとすると、桂木がトークをしませんか、ともち かけてきた。 桂木のいいなりになってしまっているスタッフから、神山に「トー クをすすめろ」の指示が出る。 神山は桂木に問いかける。 現在は、母親の稼ぎで生活しているそうだが、心が痛んだりしない のか? 桂木は笑う。親は子供を養う義務があるんだから当然だろう、と。 でも、いつまでもそんな暮らしは出来ない。お母さんもいつまでも 元気とは限らないんだから。 そう告げた神山を、桂木は冷笑して言う。 ──親なんてはやく死んで欲しいし。俺のために。まあ、三回もウ ソつかれているからね。 スタジオは静まりかえる。 第三問「心筋梗塞のもっとも多い理由とされているのは?」 正解を答える桂木。 「じゃあ、俺からの問題です。想像上の動物で、馬に角が生えた生き 物はなに?」 「ユニコーン?」 「正解です」 編集室は混乱する。 「ライオン……ヘビ……ユニコーン……。なんだそりゃ?」 が、スタッフの一人がインターネットで調べて、気がつく。 その3つの動物で検索をかけたら、「七つの大罪」というサイトに ヒットしたと。 「ライオンは傲慢、ヘビは嫉妬、ユニコーンは憤怒の大罪を背負って いる」 とかかれていた。 第四問の前に、神山が桂木の日常生活を尋ねていた。 別に何もしていない、漫画やゲームをやっているだけだと笑う桂木 だが、表情を改めると「あ、でもたまーに散歩しますよ。花を見に行 くんです」と意味深に微笑んだ。 第四問「二年前、桂木誠さんが会社をやめた理由はどれ? Aヘッ ドハンティング、B独立、Cクビ、D上司とのケンカ」 「Cのクビ」 「正解です」 やや憮然とした表情の桂木が言う。 「では、問題です。品川区の左隣にある区は?」 「目黒区ですか?」 「正解」 編集室では、冴島が叫んでいた。 「目黒区には美野里の学校がある!」 「学校にいるのか?」 「……じゃあ、七つの大罪ってなんだよ」 スタッフはさらにとまどう。 「七つの大罪とは聖書の言葉だ」 「……ということは、教会?」 「目黒区の教会は百件以上もある!」 そこで、冴島は桂木の言葉を思い返す。 たまに、花を見に散歩に出かける、と言っていた。 冴島は何かを思いついたように、確認したいことがあるから問題を 変更するように指示を出すのだった。 第五問「目黒区にある聖マリアンヌ教会の玄関前に咲いている花は? Aマリーゴールド、Bコスモス、Cひまわり、Dチューリップ」 この教会に行ったことがあるという桂木は、正解を答える。 ほくそえみながら、神山に問題をだす。 「その活動自体に公益性が高く、尊敬される職業に就いている人を何 という?」 「……聖職者?」 「あいつはあの教会を知っている!」 確信した冴島が叫ぶ。 本間は冴島を見つめて、教会に行って美野里を助けるようにと言う。 後は任せろ、とスタッフ達もそれに賛同する。 冴島は編集室を飛び出していった。 CM中のスタジオでは、桂木が妙にはしゃいでいた。 「神山さん……俺、今最高に生きているって感じですよ」 神山が桂木の目的を尋ねると、真顔の桂木は言う。 「生きていることを……実感すること。最初に言ったでしょう? ゲ ームだって」 ザ・クイズショウに出演したのも、時間制限のある生放送を利用す るためだし、冴島の娘を誘拐したのもたまたま都合のいい駒だったか らだとうそぶく。 CMが開けて番組が再開する。 第六問「桂木さんが昏睡状態から目を覚ましたとき、母である美佐 子さんがあなたにかけた言葉は? Aよかった、B勘弁してよ、C死 ねばよかったのに、D生きててくれてありがとう」 感心した様子で「よく調べましたねー」とつぶやく桂木。 神山は桂木から目をそらさずに言う。 「私は……あなたの全てを知っていますから」 気押されて無言になる桂木。 その頃、冴島は聖マリアンヌ教会に到着していた。 教会に入っていく冴島だが、中には誰もいない。 スタジオでは、桂木が「D」と解答を選んでいた。 ──正解。 母親にそんなことを言ってもらえるなんて、生きていてくれて嬉し かったんですね、愛されている証拠だという神山に桂木は憤慨する。 「そんなのどーだっていいよ。生んでくれなんて頼んでねーし、子供 は親を選べないんだから不幸だよ」 鼻白む神山に桂木が問題を出す。 「次の英文を和訳せよ。“Place that commute every day”」 「……毎日通う場所?」 「正解」 編集室から本間が冴島にヒントを伝える。 聖マリアンヌ教会で捜索を続ける冴島は、思わずへたり込んでしま う。 「ここの場所、毎朝通っている! 美野里! 美野里!!」 冴島は半ばパニックになって、探し回る。 一方、スタジオではCMに入り、神山が桂木と対峙していた。 なぜ、そんなに母親のことを恨むのか。 三回嘘をつかれたって言うのは、裏切られたっていうことか。 と、桂木に問う。 そのやりとりを編集室で聞いていた本間は、桂木がウソの内容を答 えようとしないこと、意味ありげな表情を浮かべていることから、 「三回のウソ」というのは、三問目までのヒントはすべてウソ、とい うことなのだと気がつく。 あらためてヒントを見直していく本間。 ライオン、ヘビ、ユニコーンという「七つの大罪」「教会」に関す るヒントはすべてウソ。 つまり、毎日通う場所で、聖職者がいる場所──「学校」! それを聞いていた冴島は、美野里の通っている学校へと車を走らせ るのだった。 CMが終わり、問題に移る。 第七問「あなたの母親・美佐子さんの一日のパート時間は? A約 4時間、B約8時間、C約10時間、D15時間」 母親のことは興味がないのでわからない、とつぶやく桂木。 「奥義」を選択する。奥義は「召喚」。 神山のコールで現れたのは、桂木の母・桂木美佐子。 「何しに来たんだ」と怒鳴りつける桂木。 しかし、神山は桂木を無視して、一日の労働時間を尋ね、美佐子は ハキハキと答える。 美佐子が去った後で、神山は桂木に解答を促す。 「D15時間」 ──正解。一千万円獲得です。 正解したのに不機嫌そうな桂木。 神山は、一日15時間も働けば病気にもなる、とつぶやく。 慌てて聞き返す桂木。今年に入ってもう3回も狭心症の発作を起こ しているのを知らないのか、と神山。否定する桂木。しかし、神山は 重ねて言う。今日、美佐子がわざわざ番組に出てきたのは自分が死ん でしまっても、桂木がどうにかやっていけるお金を作るためなのだ、 と。 神山から目をそらしたまま、桂木は問題を出す。 「燃料を燃焼させたり、温水、または蒸気を発生させる装置を何とい う?」 「……ボイラー?」 「正解」 小学校に着いた冴島に、本間から指示が飛ぶ。 「ボイラー室に向かってください!」 車から飛び出した冴島が、ダッシュしていく。 スタジオでは、神山がドリームチャンスへの挑戦を尋ねていた。 「……さっさとやっちゃおーよ。早く帰ってメシ食いたいんだ。今日 はカレーらしいからさ」 投げやりにいう桂木。 神山はドリームチャンスをコールする。 小学校のボイラー室に駆け込んだ冴島は、美野里を呼びながら探し 回っていた。 と、奥に縛られ、猿ぐつわをされた美野里の姿。 が、美野里の首には何かの起爆装置にセットされた爆弾が! あわててコードをたぐる冴島。 パソコンがセットされていて、暗証番号を入力しないとセットが解 除されない仕組みになっている。 本間に状況を伝えながら泣き崩れる冴島。 「必ず、暗証番号を聞き出しますから」 本間はそういって、モニターの桂木をにらみつけるのだった。 スタジオでは、ドリームチャンスの設問が始まっていた。 問題「あなたが今現在犯している犯罪は、次のうちどれ? A殺人 罪、B詐欺罪、C詐欺罪、D誘拐罪」 編集室ではスタッフ達が顔色を変えた。 神山が自分の判断で出した質問だったからだ。 「なんつー問題だしているんだ」 「本間! これでいいのかよ」 騒然となる編集室。 が、本間はつぶやく「……これでいいんだ」。 スタジオでは神山が桂木を問い詰めていた。 「賞金を手に入れましょうよ。病気のお母さんを助けましょうよ」 桂木は悩む。 そのうちに、過去のことを思い浮かべていた。 ……桂木が工員の派遣社員をやっていたときのこと。 タイムカードを押したとたん社員の人間に「明日から来なくていい から」と肩をたたかれた。 どうにか職を探そうと、あちこちで頭を下げて回るが、冷たい返事 が帰ってくるばかり。 やがて追い詰められた桂木は、「もう生きている意味がない。これ 以上迷惑をかけられない」と置き手紙をして自殺を図る。 昏睡状態から目を覚ましたとき、美佐子が泣きながら「生きていて くれてよかった」とすがりついてきた。家に帰ってあやまる桂木に 「母さんがずっと面倒をみてあげるから」とわらいかけてくれたのだ った。 しかし、どうやっても仕事が見つからない桂木は、やがて荒れてい く。 美佐子に次から次へと金をせびる。そして、金が足りなきゃ働けよ、 と怒鳴りつけるようになった。 神山の声が耳に響く。 「……知らなかったんですか? 今年に入ってもう三回も狭心症の発 作を起こして居るんですよ」 「あなたに賞金を獲得してらいたかったんでしょうねえ……」 桂木は静かに微笑んだまま答えない。 時間は過ぎていき、桂木が設定した二十五分が過ぎてしまった。 静まりかえった編集室で、松坂源五郎が本間に詰め寄る。 設問を変えたのに、桂木は何も答えなかった。 勝手をやったうえに、無為にタイムアップを迎える羽目になったこ とに、怒り狂う。 本間も絶望して口をつぐんだまま。 ……が、そのとき、冴島から電話が入る。爆発はおこらなかったの だ。 爆弾がセットされたパソコンの画面には、「それ爆弾じゃないし」 というふざけたメッセージが浮かんでいた。 スタジオでは、桂木が大笑いしていた。 「だから言ったでしょう。ゲームだって。……俺に人を殺す度胸なん てねーもん!」 笑い続ける桂木に、神山が問い詰める。 「……正解を答えてください」 「……この中に正解なんて、ない、ない!」 「……不正解です。桂木さん、残念でしたね」 そう告げた神山だが、桂木ははしゃいでいる。 「残念だったけど、最高だった。最高に生きているって感じがしたよ! ねえ、神山さん見た? あいつらの慌てっぷり! アハハハハ。踊 らされてやんの!」 「甘ったれんな!」 神山の怒号がスタジオに響いた。 「……何がおもしろいだよ、何が生きている感じだよ……全然おもし ろくねぇよっ。あんたムカツクよ。本気でムカツクよ。小学生も中学 生も高校生も大学生も社会人もオッサンもオバサンも、もっと苦労し て生きているんだ。逃げたんでしょう? あきらめたんでしょう? あんたみたいな生きているのを実感する資格なんて、ないんだよ」 桂木は悄然とそっぽを向いている。 「……なんでお母さん無理してまで働いているんだと思う? 自分の 身体をこわしてまで、金を稼いでいるんだと思う? あんたが大切だ からだよ。たったひとりの大切な息子だからだよ。生きててくれてあ りがとうって、今でもそう思っているからだよ。そんなお母さんの気 持ち踏みにじって、死んでも言いとか言っちゃって。あんたなんなん だよっ! 世の中には親孝行したくても出来ない人が一杯いるの。子 供が親を選べない? 違うって。家族だろう? たったひとりの肉親 だろう? 誰よりも強い血が、愛情がそこには流れているんだろう? こんなことでしか生きられない……そんなアンタを、俺は絶対に認 めない」 桂木をにらみつける神山。 「今回の解答者・桂木誠は残念ながら自らの夢を実現することが出来 ませんでした。次回、自らの夢に挑むのはだれなのか? あなたの夢 を叶えます!」 神山がコールして、番組は終了する。 番組が終了してから、編集室でスタッフ達が安堵の空気に包まれて いた。 米倉が本間に尋ねた。 「本間くん、きみはいつからわかっていたの?」 本間は番組中に、爆弾が爆発することはないだろうと確信していた のだ。だから、制限時間が過ぎても動揺していなかった。 本間は答える。 「神山がCM中にした質問でわかりました。神山が最後の設問をした ときに、桂木が左上を見上げました。人間が緊張感のなか嘘をつくと きにする、無意識の行動と言われています」 しかし、それだけで爆弾が偽物だとわかるわけがない、とスタッフ が言う。 「だからこそ、最後の問題なんです。なぜ、桂木が最後の問題に答え られなかったのか。それは母親がスタジオにいたから。母親に自分の 犯罪を明かすことはできなかった。そんな人間が人を殺すなんてこと が、できると思いますか?」 銀河テレビのホールでたたずむ本間の所へ、冴島が戻ってきた。 感謝をのべる冴島に、本間はスタッフ達をほめる。 ありがとう、という冴島に、本間は怪しく微笑む。 「でも……気づいたでしょう? あなたは自分の子供が誘拐されたの に番組を止めなかった。結局あなたも……こっち側の人間なんです。 俺はただ、桂木に自分の先を越されるのがいやだっただけですから… …」 去っていく本間に、冴島は言葉もでない。 白い病室で、本間が神山に質問していた。 「最後の問題を変えたのは、お前の意志か?」 「いえ……神山悟の意志です」 本間は黙ったまま神山を見つめる。 神山は立ち上がって本間に尋ねる。 「俺の名前は……神山悟ですか……」 しかし、本間は答えずに病室を出て行くのだった。 寸 評 やっと神山&本間コンビを苦しめる挑戦者が出てきましたね。こ の二人の筋書き通りじゃないっていう展開は、初ですよね。……しか し、肝心の挑戦者自体はちょっと薄っぺらい感じがして、残念です。 今回の挑戦者は、一言で言っちゃうと、世をひねたマザコン男。理由 も不況のせいでリストラ、仕事がないっていう理由だけ。んー、ちょ っと動機に説得力がないですね。 でも、結婚の発表をした堀内健の演技はなかなか……。もっとちゃ らちゃらしたというか、ふざけてばかりのイメージがあったので、き ちんと演技していたのが驚きでした。 執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp) ---------------------------------------------------------------------- 2. 編集後記 ---------------------------------------------------------------------- 最近、リストラだとか、派遣切りだとかという言葉をよく聞きます。確かに 大きな問題だと思います。でも、いくらなんでもいろんなところで出てきすぎ ですよね。ドラマとか小説とか漫画とか、こういう設定の人物、本当に多い。 しかも犯人とか、みじめな立場の主人公だとか……。一種の流行、みたいです。 今回の挑戦者も「またかよ」と思っちゃいましたよ。しかし、ちょっと面白 かった。そういう人たちに対して「社会の犠牲者」「頑張っても報われない可 哀想な人」みたいな扱いをするドラマが多い。そこで、「甘ったれんな!」と 神山に言わせているところが、なかなかこのドラマの挑戦的なところだな、と も考えます。 なんでも流行の事件だとか、社会現象をドラマにするのは今までもよくある 話ですけど、一時の盛り上がり、で終わらせないでもらいたいもんです。(畑 中ヒロ) ====================================================================== 発行元:ドラマ研究会 e-mail:info@j-drama.tv url :http://www.j-drama.tv/ ID :MM3E195F16414CD このメールマガジンは、メールマガジン[MailuX]を利用して発行しています。 (http://www.mailux.com/) ====================================================================== |