梅雨の季節の意外な収穫
その本を読むたびに、目の前に映画のラストシーンのような画面が浮かぶ。真っ白な背景の中に、立てかけられた花柄の傘が一つ。その尖端にゆっくり雨水がたまっていく。まるで愛情深くはにかみ屋の少女の涙のように……。台湾の作家、三毛の名著「雨季不再来(雨季は再び訪れない)」は、自身の青春時代の成長と体験に基づいて、少女の純粋な心と個性的な美的感覚を描き出し、多くの人に愛された。
故郷の雨の多い南中国では、傘立てはあまり見られなかった。乾いていても、濡れていても、人々は傘をドアの後ろや机の脇や壁の隅に気まま立てかけておいて、必要な時に初めてその存在を思い出すという具合だった。日本に来てから、ほとんどの家庭にも傘を整理して保管する傘立てがあることに気がつき、生活の細かいところにまで配慮する感覚に驚かされた。
今年の初夏、何と形容したらいいかわからない独特の姿をした「傘立て」が突然、私の生活に登場した。それは、東京の街のショーウインドウで出会った「SPLASH」だ。プロダクトデザイン、インテリア、パッケージデザインなど幅広い分野で活躍するデザイナー、浅野泰弘さんがグッドデザイン賞を受賞した傑作だ。
「SPLASH」の外側には6つの傘を挿す穴があり、中央にも丸い穴がある。小さくて可愛い傘立てだが、12本の傘が収容できる。乾いた傘と濡れた傘を分けて挿しておけば、乾いた傘を濡らさずにすむのでとても便利だ。尖端だけを挿す構造設計なので、雨水がはけやすく、傘の乾きが速い。本体はゴム製で、1.2kgの重さがあり、底面積は小さいが、簡単に揺らいだり倒れたりしない。
色は全部で11色あり、事務所や店舗にたくさん設置すれば、それぞれの色が華やかさを競い合い、傘がなくてもとても美しい装飾になる。みながそれぞれ自分の傘を挿すと、それはまた華やかな色彩を持つ、雨の日特有の風景画を構成するに違いない。憂鬱な梅雨の季節に、このような鮮やかなゴム製傘立てがあったら、憂鬱な気持ちもきっと飛び散る雨のしずくのように爽やかに散っていくだろう。
家の玄関で、華やかな「水滴」が色彩豊かな「花びら」をほころばせるならば、生活はもっと楽しく豊かになるだろう。そしてこの小さな「SPLASH」を手に入れたために、「雨季不再来」を再読して、また新たにいろいろな発見があった。それがたぶん、今年の梅雨の季節の最も意外な収穫といえるだろう。(姚遠執筆)
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