SASAOの「花のある日々」
「東京流行通訊」の読者のみなさんにはおなじみの画家・SASAO(笹尾光彦氏)は、現代的でファッショナブルなスタイルと独特な赤の作品で、多くの人々を惹きつけてきた。その数々の作品によって「赤の画家」と呼ばれる彼は、今、ますます注目を集めている。
4月29日から5月6日まで、SASAOによる作品展「花のある日々」が、静岡市の伊勢丹ギャラリーで開催されている。今回は油絵だけでなく、彼のアートスタイルを生活に取り込んださまざまなデザインも展示される。ここで一緒に、「赤の画家」の作り出すアートシーンをのぞいてみよう。
まず目を奪うのは、SASAOの創作の原点でもある、彼自身の部屋だ。「Red Sofa」(赤いソファ)は、赤を主たる色調とした大型の油彩画で、美術書やコーヒーカップ、ポットなどが並べられ、それらが一人のアーティストの内面と質の高いライフスタイルを示している。また、「My Favorite Table」(私の一番好きなテーブル)は、フランス風のカフェ「Qu’il fait bon(キルフェボン)」のテーブルを表現。コーヒーの濃厚な香り、優雅なポット、おいしそうなブルーベリータルトなど、店内に流れるゆったりとした時間は温かさに満ちあふれている。
SASAOが「A Florist’s in Paris」(パリの花屋さん)を描き始めて、7年目になる。常に作品は異なっており、店の名前も、日よけも、花入れも、二階の窓も、それぞれが特徴的だ。大きな窓のガラスの中に見える巨大な熱帯植物と、花屋の前の小さな鉢が互いに引き立てあっていて、絵の前に立つと、まるで花の香りまで感じられそう。ギャラリーには本物の花もいっぱい飾られ、まるでパリの街に迷い込んだかのようだ。
SASAOのファンにとってうれしいのは、アートが生活に融け込んだデザインの数々だろう。白を基調とした、無数の赤いバラを散りばめたヨーロッパ風の椅子は、バラに囲まれた貴族のような生活への憧れをかきたてる。キャンバスや木材に描かれたハイビスカスには、心をときめかせるものがある。そのほか、オリジナルのポストカードやキャンバスバッグなどもそろう。
画家になる前、SASAOはクリエイティブディレクターとして活躍し、ネスレのためにヨーロッパを舞台とした広告デザインを製作した。以降画家に転身し、1998年、東京・渋谷にあるBunkamuraギャラリーで作品展を開き、大きな反響を得た。その後毎年、個展を開催し続けているが、今回の静岡は、初めての場所となる。(許莎執筆)
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