テーブルの上にサクラサク
「爽快感、喜び、驚き、揺るぎのない確信、胸を突く感動、目の前に求めていたものが突然現れたときに、無条件に『鳥肌』を感じるのです」―このすばらしい言葉を語るのは、国際的に才能を発揮している日本の新鋭デザイナー、坪井浩尚氏だ。彼の創りだした作品は、生活に対する細やかな観察と日本に伝わる伝統的美学に満ちている。
「SAKURASAKU glass」は、「日本の伝統工芸とデザインの新鋭が結びついた新しい時代を示している」と絶賛された。そのデザインは、坪井氏が水を飲んだときに偶然コップの下の水の跡を発見したことから生まれた。水の跡を生活の中に真に存在するビジュアル情報として考え直すことによって、彼はグラスの底を改良し、コップが残す水の跡は桜の花のイメージに変わり、グラスの底の描く曲線は、光線を屈折してグラスの中の飲み物をより美しく透明なものにしている。グラスを毎回違う場所に置いていくと、テーブルにはたくさんの感動的な「水の花」が咲く。ちょっと見たところはあまり目立たない「SAKURASAKU glass」が、彼自身も意外に思うほどの完成度の高い作品になったのである。
「SAKURASAKU glass」誕生の物語は小説のようにドラマチックだが、グラスに透明感を与えるにはグラスの曲線と鉛の含有率を工夫する必要があり、技術的にはたいへん困難だった。そのため、このアイデアは何十もの企業に門前払いされることになった。製品化の後にも9割が返品にあったという苦境も経験した。しかし、東京都が認定する優秀な伝統工芸士3名の協力を得て、ついに成功を収めることができたのだ。グラスの曲線によって、凝結した水がグラスに沿ってゆっくり滑り落ちる。このように丁寧な仕事で細部を完璧にすることによって、坪井氏はレッドドット・デザイン賞とグッド・デザイン賞を受賞した。
しかしもっと驚かされるのは、この多摩美術大学出身の天才デザイナーが、卒業後の二年間、寺で雲水として修行していたということだ。その経験から、「静謐の美学」というコンセプトで立ち上げた「100%」というデザインブランドや、黒、白、グレーや透明な色調を中心とした彼の作品が、禅的な創意と思想を強く持つようになり、「100%」ブランドのディテールと美しさを感じさせるのだろう。坪井氏の作品に見られる禅的な美学は、デザインの細部にも満ちており、使った人に生活の中の幸せな瞬間を強く感じさせるのである。
さあ、「SAKURASAKU glass」を手にとって月の光に向かい、坪井浩尚氏の心の声に耳を傾けよう。「夏の日にグラスの水滴から花が生まれるのを見つめる自分を想像すると、まるで座禅を行なったような気分です…。」(姚遠執筆)
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