2009年4月24日第15号(通巻第167号)・FOR MEN
【photo by Kazuhiro Matsumoto】

→いつも「編集後記」を楽しみにしています。文章がとても美しいばかりでなく、このように読者を惹きつけるメルマガの「水先案内人」は、一体どのような経歴と豊かな感性と文化的素養を備えておられるのでしょうか。メルマガの最後に位置していますが、いつも一番重要な一言を加えてくださっていますね。ただ最近は、商品の宣伝のような内容になってしまって、非常にがっかりしています。【南寧 西出陽関

←まもなく9周年になります。この小さなメルマガと共に苦労してきて、編集者自身も常に成長してきました。大和民族の「モノづくりの魂」については、様々な創意に満ちた製品に対して改良の手を休めず、絶えず進歩を求める精神に、いつも深い敬意を抱いています。それが「編集長の一押し」の原点でした。現在隔週交替で日本の有名デザイナーたちのすばらしい作品や、無名でも人気のある製品をここで紹介しているのは、「他山の石」として参考にしていただきたいと思うからなのです。これも私がこれまでいろいろ考えてきたことの中の一つなのです。ご理解いただけると嬉しいです。

→日本の伝統文化や景勝地について、例えば世界遺産などに関する情報をもっと伝えていただけませんか。また、iPodや携帯など、最新のデジタル製品に関する情報ももっと知りたいです。最近自動車関連の記事が多いようですが、今の若い読者はあまり興味を引かれないようです。【大連 小海

←率直なご意見をありがとうございます!多くの読者のみなさんが、知りたいことを提案してくだされば、我々もそれに沿って取材を行うことができて助かります。自動車のコーナーについては、新車のニュースだけでなく、日本の若者のカーライフや珍しいカーグッズなどについてもお伝えしてきたつもりです。ただ、最近は内容に偏りがあったようです。いろいろな話題をバランスよくお伝えして、新鮮で面白い記事を心がけていこうと考えています。

4/27(Mon) - 5/3(Sun)
SAI-SON + 平林真実 「わたしたちのすきなもの」 写真

4/29(Wed) - 5/5(Tue)
UMA「I'm Feeling Lucky!」
絵画・イラスト

4/29(Wed) - 5/6(Wed)
影山 晴将 「kageno kiwoku」
絵画

4/30(Thu) - 5/6(Wed)
akatin と voncochinra 「Due cosumo」 立体・レリーフ

ALAYA

おしゃれな家電ショップ

欧米の多くのデザイナーが高く評価する日本の工業デザイナー、深澤直人氏は、2003年に斬新的なブランド「±0」を設立した。このブランド名には、製品の美しさと実用性をプラス(+)し、すべての余分なものをマイナス(−)するという意味が込められている。製品はDVD/MDステレオ機、テレビ、照明器具、オーブントースターなどの生活家電が中心で、最初はオンラインと、厳選されたパートナーショップで販売していた。

その後、「消費者に商品の価値をもっと知ってもらうには、自分で自由に表現できる店舗が必要だ」という考えから、2004年10月、青山に「±0 AOYAMA」を開店した。ショップの外観はユニークなビジュアル効果を持ち、全面オレンジの壁面に「±0」のロゴが際立ってよく見える。店内の日常用品のコーナーは淡いグレーを基調とし、赤や青などのPOPな色の商品が引き立つようになっており、白い商品も、この背景の前ではよく映える。壁やカウンターの側面パネルには、グレーがかったオレンジや濃いグレーが広く使われ、その上に白いグラフィックが描かれている。生活用品はファッションと違って、季節感があまりはっきり区切られていない。そこで壁面やカウンターの表面や文字に紙を使い、随時張り替えて店内の雰囲気をリフレッシュしている。

ここでは、過去のすべての商品、他のブランドとコラボレーションした限定商品、深澤直人氏の最新デザインや新製品の先行販売など、「±0」のすべてを見ることができる。また、不定期にテーマ展示も行われる。展示と販売を一体化した店舗の内装は、すべて深澤直人氏のデザインで、壁面のインパクトのあるグラフィックは佐藤卓氏の作品だ。また店舗の入っている「HOLON L/R」という白い3階建ての建物は団紀彦氏のデザインで、空間と形の使い方がすばらしく、建築当時はかなり注目を浴びた。

「±0はプラスでもマイナスでもなく、必要十分で、見たことがないのにしっくりときて、ノーマルなのに魅きつけられる形状で、こういうのがほしかったと思える」というのがブランドコンセプトになっている。店に来た人がみな去りがたい気持ちになるのは、そのような感覚を持つからに違いない。(劉詩音執筆)

±0 AOYAMA 東京都港区北青山3−12−12 HOLON−R 営業時間:11:00〜20:00(土日と祝祭日は19:00まで)

(C)PLUS MINUS ZERO CO., LTD 2009

±0 AOYAMA http://www.plusminuszero.jp/aoyama/index.html (日、英)

車にまつわる占い

インターネットでも気軽に楽しめる「占い」。プロの占い師による本格的な占いから、ボタン一つのお手軽なものまで、その数を把握しきれないほどの種類がある。今回、その中から“車”に関する占いを3つ紹介しよう。

タクシーカラー占い
全国のタクシー情報などを検索できるサイトが提供しているサービスの一つ。生年月日を入力し、7色のタクシーから好きな色を選ぶと、3日間の運勢が占える。位置関係によって色の印象が変わることもあるので、車の並び方はランダムで表示される。マウスのカーソルが車の上にくると、ドアが開くという細かい演出も。簡単な性格判断とアドバイスのみなので、手軽に試せるタイプだ。

カーパーツ占い
  新車・中古車販売会社のウェブサイトにあり、これも生年月日を入力すると、その人をタイヤ、ブレーキ、ヘッドライトなどの車の部品に例えて占ってくれる。おまけで、占ったその日のひと言アドバイスも表示される。2人分の生年月日を入力して相性占いもでき、「ギアとタイヤの相性」というパーツを使った表現がなかなかおもしろい。

除雪車占い
除雪機を製作する会社が提供しており、生年月日を入力するとその人の性格をなんと除雪機に例えてくれる。出てくるのは「ロータリー除雪機」や「凍結防止剤散布車」など、一般にはまったくなじみのない名前ばかり。どんな車が表示されるのか、占いの結果よりもそっちの方が気になってしまうだろう。友人同士のちょっとした会話のネタにちょうどいいかもしれない。

ただ、こういった変わった占いや診断が増えた背景には、ウェブ上での簡単な制作ツールの存在がある。あまり振り回されず、あくまでお遊びと割り切って楽しむのがよいだろう。(洛人執筆)

goo 占い http://fortune.goo.ne.jp/

京都発 普段使いできるおしゃれな「和服」

このメールマガジンで何度かご紹介してきた、京都でカラフルなデザインの国産地下足袋などの製造、販売を行う「SOU・SOU」が先日、新たに2店舗をオープンし、話題を呼んでいる。「SOU・SOU 着衣 kikoromo」と「SOU・SOU 傾衣 kei-i」だ。

特に、「SOU・SOU 着衣 kikoromo」は、これまで販売してきた作務衣などの衣類の中で、特に女性をターゲットにした専門店。着衣とは、その名の通り「着る衣(ころも)」。日本において洋服が一般的に普及する以前は、着物はただ「着る物」としての意味でしかなく、着付けなどのしきたりもないもっと自由なものだったという。しかし現代、着物というとなにか特別な日に着る、着るのが難しいといったようなイメージがあるといえる。そこで、普段から着ることのできる和服を、この店舗でSOU・SOUが提案している。

しかも日本をはじめ、東アジア各国の民族衣装をデザインのベースにしているからなかなかおもしろい。例えば、コートのように羽織れてリバーシブルな柄で若者に人気という「もじり袖」、布地が手ぬぐいで夏に涼しい「手ぬぐい小袖ワンピース」などがある。いずれも和服とはいえ、洋服感覚で着て普段使いすることのできるものばかりだ。反物からの製品オーダーも可能で、約2週間で仕上がる。

また、2階を「しつらいの間」として、SOU・SOUのオリジナルテキスタイルを中心に、椅子や雑貨などのオーダー家具を販売している。さらに、お茶(抹茶かコーヒー)と和菓子をいただくコーナーもある。特に和菓子は、京都の老舗和菓子店とコラボレーションし、1年の移ろいをSOU・SOUのポップなテキスタイルデザインで表現して落とし込んだという。4月のテーマは「桜」で、メニューは毎月ごとに変わる。

同様に、男性用衣類の店舗「SOU・SOU 傾衣 kei-i」も、道路を挟んだ向かい側、地下足袋の店舗の地下にある。また、このビルの2階にある「SOU・SOU le coq sportif」でも、春夏向けの新製品が続々登場している。(飾磨亜紀執筆)

SOU・SOU http://www.sousou.co.jp/

カフェで未来を語る

ファッションビルAOYAMA M’s TOWERの2階にオープンした、休息と食事とインテリア用品の展示を合わせた新しいタイプのテーマレストラン、アーキテクトカフェ青山店については、このメルマガでも何回かご紹介してきた。このカフェはそのおしゃれな内装によって、アートやファッションを愛する多くの人々を惹きつけている。ここでは同じ興味を持つ仲間と出会えるだけでなく、たくさんのデザイン関係の書籍や雑誌を無料で読むことができる。また、不定期でファッションやアート関連のさまざまなイベントが行われており、これも人気を集めている。

ここで4月8日の夜7時半から「アーキテクトカフェ・フレンドシップ」と銘うったイベントが開かれた。製品開発とデザインを手がける坂井直樹氏の「未来のデザイン」をテーマとした講演が行われ、10年後のデザインが向かう方向について大いに語り、人々の関心を集めた。 坂井直樹氏と言えば、今の若者たちで彼のデザインしたauの携帯電話を知らない者はいないだろう。青年時代にアメリカに渡ってTattoo Companyを設立し、Tatoo T−shirt(刺青プリントのシャツ)を売り出して成功を収め、帰国してからは日産自動車の「Be−1」や「パオ」などのヒット商品を手がけ、新しいコンセプトを打ち出すことで時代をリードしてきた。 2004年には、ウォーターデザインスコープ社を設立し、携帯電話のデザインを中心に活躍。現在はauの外観デザインとコンセプトを担当している。 さらに2007年9月からは、ニューメディアの分野を開拓するべくemo−TVサイトを立ち上げ、日常生活の中から生まれるデザインコンセプトやビジネスコンセプトをつづった「デザインの深読み」「デザインのたくらみ」などの書籍がベストセラーになっている。

デザイン分野における独特な視点や先端性によって、坂井先生は日本にも海外にもたくさんのファンがおり、彼が未来のデザインについて語るのを直接聞くことができる機会は非常に魅力的だ。 演台に設置された大型液晶スクリーンには坂井氏の過去の傑作や、現在取り組んでいる研究課題が映し出され、これも興味深かった。坂井先生は、今回の経済危機が過ぎた後、自動車の半数がエコカーになり、ガソリンスタンドが激減するだろうと大胆な予測を述べた。 また、携帯電話はキャッシュカードと同じぐらいの薄さになるかもしれないとも語った。生き生きとした語り口と機知に富んだ言葉によって、講演者と聴衆の距離は限りなく近いものになった。 講演が終わった後には参加者が互いに自己紹介を行なって交流を深め、この忘れがたい夕べを楽しく締めくくった。

アーキテクトカフェがこのようなイベントを行うのは9回目で、今後も続ける予定とのこと。次回以降のイベントの内容にも大いに期待したい。所在地:東京都港区青山2−27−18 AOYAMA M’s TOWER2階 電話:03−5771−2570 営業時間:7:00〜23:00

(C)2009 ARCHITECT CAFE

アーキテクトカフェ http://www.architectcafe.com/

テーブルの上にサクラサク

「爽快感、喜び、驚き、揺るぎのない確信、胸を突く感動、目の前に求めていたものが突然現れたときに、無条件に『鳥肌』を感じるのです」―このすばらしい言葉を語るのは、国際的に才能を発揮している日本の新鋭デザイナー、坪井浩尚氏だ。彼の創りだした作品は、生活に対する細やかな観察と日本に伝わる伝統的美学に満ちている。

「SAKURASAKU glass」は、「日本の伝統工芸とデザインの新鋭が結びついた新しい時代を示している」と絶賛された。そのデザインは、坪井氏が水を飲んだときに偶然コップの下の水の跡を発見したことから生まれた。水の跡を生活の中に真に存在するビジュアル情報として考え直すことによって、彼はグラスの底を改良し、コップが残す水の跡は桜の花のイメージに変わり、グラスの底の描く曲線は、光線を屈折してグラスの中の飲み物をより美しく透明なものにしている。グラスを毎回違う場所に置いていくと、テーブルにはたくさんの感動的な「水の花」が咲く。ちょっと見たところはあまり目立たない「SAKURASAKU glass」が、彼自身も意外に思うほどの完成度の高い作品になったのである。

「SAKURASAKU glass」誕生の物語は小説のようにドラマチックだが、グラスに透明感を与えるにはグラスの曲線と鉛の含有率を工夫する必要があり、技術的にはたいへん困難だった。そのため、このアイデアは何十もの企業に門前払いされることになった。製品化の後にも9割が返品にあったという苦境も経験した。しかし、東京都が認定する優秀な伝統工芸士3名の協力を得て、ついに成功を収めることができたのだ。グラスの曲線によって、凝結した水がグラスに沿ってゆっくり滑り落ちる。このように丁寧な仕事で細部を完璧にすることによって、坪井氏はレッドドット・デザイン賞とグッド・デザイン賞を受賞した。

しかしもっと驚かされるのは、この多摩美術大学出身の天才デザイナーが、卒業後の二年間、寺で雲水として修行していたということだ。その経験から、「静謐の美学」というコンセプトで立ち上げた「100%」というデザインブランドや、黒、白、グレーや透明な色調を中心とした彼の作品が、禅的な創意と思想を強く持つようになり、「100%」ブランドのディテールと美しさを感じさせるのだろう。坪井氏の作品に見られる禅的な美学は、デザインの細部にも満ちており、使った人に生活の中の幸せな瞬間を強く感じさせるのである。

さあ、「SAKURASAKU glass」を手にとって月の光に向かい、坪井浩尚氏の心の声に耳を傾けよう。「夏の日にグラスの水滴から花が生まれるのを見つめる自分を想像すると、まるで座禅を行なったような気分です…。」(姚遠執筆)

(C)2009 100% INC.

100% http://www.100per.com/ (日、英)


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