頭の中に吹くそよ風
憂鬱な気分の夜に、すべての灯りを消して、静かにろうそくを一本ともし、リチャード・クレイダーマンの「星空のピアニスト」を聞いた。ゆらゆらと揺れるろうそくの光と、壁に映る火影の動きを見つめているうちに、次第に呼吸が穏やかになり、心も静けさを取り戻すことができた。
最初にろうそくを発明した人は、本当に尊敬に値する。暖かさも明るさも、大きすぎず、小さすぎず、我々の生活に取り込むのにちょうどよい。4年前、イタリアのミラノサローネ国際家具見本市で、日本のデザイナー、村田智明(むらたちあき)さんの「METAPHYS LIGHTING hono」が大きな話題になった。このキャンドルでは、最先端のテクノロジーと巧みなデザインが、直径わずか1.6センチの電子キャンドルに、完璧に調和した統一を与えている。
専用の「マッチ棒」で軽くこすると、honoが「点火」される。淡いオレンジの焔が、キャンドルの中でかすかに震える。軽く息を吹きかけると、焔がゆらゆらと揺れる。フーッと強く吹けば、本物の焔のように一瞬揺らいだあと、たちまち消え、消してしまったことに後悔して、もう一度マッチ棒を手に取ろうとした瞬間、honoは再び「点火」する。
これまで、デザインというものは、単純な形や色の問題と考えられてきた。だが村田さんは「テクノロジーは常に人間の心から生まれる」という考えを持っている。そして「デザインは物と人との間に心理的なやりとりを引き起こすもの」と考える。もちろん、このすばらしいhonoを作り出したのはテクノロジーだ。だが、人間的な要素がなかったら、一本の小さな電子キャンドルはこのように強く人の共感を呼び起こすことはなかっただろう。
honoの光源にはLEDが用いられ、電源はニッケル水素二次電池である。15時間充電すると、8時間点灯することができる。内部には非常に敏感な電磁センサーと光を調節するCPUが組み込まれている。付属の台座を使ってテーブルに立ててもいいし、壁にかけて室内の間接照明に使うこともできる。この日本の美学に満ちたデザインが、バースデイパーティやお祝いの日に、思いがけないムードや効果をもたらしてくれる。
伝統的なろうそくにそっくりで、しかも火災の心配がなく、いやなにおいもなく、環境にも優しい。この作品はその年度のグッドデザイン賞を獲得している。村田さんは、honoによって「日常生活のいつもとは違う何かに、頭の中にそよ風が吹くような一瞬」を体験してほしいと言う。確かに、静まり返った深夜にhonoのかすかに震えるような光を見つめていると、そんな心地よい瞬間が私たちにも訪れるような気持ちになる。(姚遠執筆)
|