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タイトル:蝶サイコーな第40回目『■久々の夫婦もの■』  2009/03/16


本日もご購読ありがとうございます。
この移転したメルマガも不定期発行でついに40回目!
以前のものと合わせたら120回目くらいですかね?(あいまい
色々あってさぼりがちですが皆様これからも宜しくお願いいたします。
私は元気です!

今回は久々に蝶野夫婦ものです。
オリジナルキャラの百合子さんがでてきます。
出会って間もないふたりのお話です。うぶな刺爵さんをお楽しみください。
HPの「捏造」→「蝶野夫妻プラスα」→「あるひとつの出会い」が今回の参考書になります。それではどうぞ〜。

題:お話しましょう

 地下の学生食堂には多くの机と椅子が配置されている。
 昼時はもちろんのこと夕方になった今でも生徒たちが集まり、大変な賑わいを見せているのだが刺爵は何かが気に食わないらしい。
 むっすりと腕を組み、所在無く他のテーブルを眺めていた。
 そんな彼に申し訳なさを感じるのか、向かい合う百合子の手はせわしなくノートを走る。
 書き漏らした部分は存外に多く、また刺爵の完璧なノートを前にして、これも書き足すあれも書き足すを繰り返すうちに随分と時間が経過していた。
 ひょんな出会いと約束により、刺爵は百合子にノートを見せてやる約束をした。
 場所は図書館でもよかったのだが、万一解らないところがあっては都合が悪いので会話ができる食堂を選んだ。
 そうして一言も口を利かないまま二人はここにいる。
 隣のテーブルでは同じようにノートの見せ合いをしている学生がいて、下らないことを話しながらだらだらと腕を動かしていた。
 あのぶんではろくに写し終わらないまま今日が終ってしまうだろう。
 それに比べて百合子の集中力には恐ろしいものがあって、口を開かないどころか顔を上げることもない。
 食堂に漂わせていた視線を彼女に戻すと、刺爵はおもむろに身を乗り出した。
「どのくらい進んだ」
 そんなことは尋ねずとも解る。手元のノートを見れば一目瞭然なのだから。
「す、すみません。時間かかりすぎですよね……」
 久方ぶりにあがった百合子の顔からは色濃い疲れが見て取れた。
 あれだけ真剣に脳と目と腕を使っていれば当然そうなるだろう。
「時間はいいから、君は休め」
 刺爵は立ち上がると離れた所にある給水器からお茶を一杯汲んできた。
 百合子の前に差し出すと、今度は彼女が席を立つ。
 あわただしくテーブルを離れ、戻ってきたその手には同じように湯飲みが握られていて、
「あの、蝶野さんもどうぞ」
 手渡され、刺爵は迷ってから口をつけた。実はここのお茶はあまり好きではない。
 百合子は安心した様子で鉛筆を拾ったが、向かいからの視線に気付いてぱっと手放した。
「私のノートで視力を落とされても困るからな。最低十分は休め」
 有無を言わせない態度に、困ったように肩をすくめる。もしかしたら肩がこっていたのかもしれない。
 ふたりはそのまま微動だにしなかった。
 刺爵はもとから動かないほうだが、百合子は目に見えて緊張していた。
 どうやらこの気難しい青年とどう接したらよいのか考えあぐねているようで、目線を合わせるのもためらいがちである。
 こう静かだと、隣のテーブルの騒がしさだとか食堂全体の活気に押しつぶされそうで、刺爵は不愉快さに吐息した、
「私のノートはどうかな」
「えと、素晴らしいと思います。書いてある内容も纏め方も完璧ですし」
「当たり前だ。私のノートだからな」
「はい……」
 そしてまた沈黙。刺爵は痛み始めた額に軽く手を当てた、
「どこか解らないところはないかな」
「ありがとうございます。でもあの、とっても解りやすいノートですから、今のところ大丈夫です」
「――そうかい」
「う……そろそろノート写しはじめてもいいですか」
 困り果てたようにこちらを見るのに、刺爵はカッとなってつい険しい視線を返してしまった。
 とたんにがちがちに固まり、青くなる百合子。凍りつく空気。
「あー……」
 刺爵は不明瞭な声を上げると、まずいお茶を一口飲む。
 視線を外してぽそりと言うには、
「女はもっとお喋りなものだと思っていたのだが」
 その言葉が浸透するのにはすこうしだけ時間がかかった。
「す、すみません」
 声に視線をもどしたとき、百合子は右手に湯のみを持っていて、
「たくさんお話しましょう!」
 と、そう言ったのだった。

 FIN


うぶさに定評のある学生刺爵はいかがでしたでしょうか。
私はものすんごく楽しい思いをさせていただきました。
この組み合わせはやっぱり最高!!
なんだか火がついたところで眠らないといけないので悲しいです。
刺爵さんと百合子さんがんばれ!

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森下里虎

E : kamiosandaisuki@yahoo.co.jp 

HP: http://tool-4.net/?morimori

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