軽やかに飛翔するデザイン
何と美しい流線型だろう!これを「アート」と言っても、決して言いすぎではないだろう。
これは、生地をダイカットして二つに折り、15センチほどの先端を縫製しただけの「ワンピーススリッパ」と名づけられた傑作である。表面は100%フェルト素材で、裏にはやや硬めのアクリル素材が使用されている。携帯用スリッパに必要な簡便さと、簡易スリッパに欠けているふっくらとした厚みも備え、ある意味で二つの相反する要素が、履き心地の快適さを失うことなく完璧に調和して統一されている。
この手放せなくなりそうなかわいい作品は、国際バッグデザイン豊岡コンペティション、およびデザインフォーラムコンペティションで金賞を獲得したプロダクトデザイナーの廣田尚子さんのインスピレーションから生まれた。「デザインとは人と物との間に特殊な関係を作ること。人との関係性を軸に、コンセプトをビジョンとし、機能をコンテンツとし、フォルムをメッセージとして、デザインを構成します。」と、廣田さんは語る。
コンパクトで、折りたためて、取り出せばすぐ使える。「清潔感」が、注目を集めるポイントだ。使用後は捨ててしまっても惜しくない。フォルムには人の心を惹きつける個性があり、色はおしゃれな流行色がそろっている。履いてみると、かかとが包まれて固定され、スリッパのかかとをひきずるような感覚とはまったく異なる。このような意味で、この小さな機内用、ホテル用の携帯「ワンピーススリッパ」は、生活の細かな要求を満たす高度なデザインを実現しているといえるだろう。
廣田さんのすばらしい創意は、バッグや照明や食器や携帯電話など、日常のすみずみにまで触覚が広げられている。「デザインは、常に人を見つめて、深く考えることです。人の心と体、人と環境のつながり、人と人とのつながり、そこにどのような感動が求められるのかを見るのです。日常生活で不便や不満を感じることは、デザインの発想の元なのです。」――これが彼女のデザインの原点だ。
一枚の平らな革が、簡単な裁断と縫製によって、このように存在感のある傑作に生まれ変わる。「ワンピーススリッパ」を手にとってよく観察すると、手品を見るような、軽い錯覚を伴った爽快感が感じられる。完全に生活に融け込んだスリッパであるからこそ、このようにスマートで美しいデザインを備えているのだろう。(姚遠執筆)
|