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33回目の続きです。ホムンクルス全員小学生(笑 ☆★☆★☆★☆★☆ 飛び出した鷲尾は迷わず工場の裏に回った。 そこにはいつものように巳田がいて、やはりどうでもいいような本を読んでいる。 「こら巳田!」 大声を上げると、その肩がびくりと跳ねた。 「何……?」 本を閉じ、地面に置いて振り返る。以前鷲尾にびりびりにされたことがあるからだ。 「おまえこれ食べろよ」 そう言って鷲尾が差し出したのはいい匂いのする消しゴム。先ほど花房からパチった例のあれだ。 「それは食べ物じゃない」 「わかってるさ」 両者間に漂う不穏な雰囲気。 「こいつ、はやく食べろよ!」 鷲尾が飛びかかると、巳田は素早く身をひるがえして森の方に逃げていった。 鷲尾は力が強い上に脚が速い。それでも森の中ならば少しはごまかしが効くはずだ。 なんとか駆け込んで青々とした茂みに飛び込んだ。 そのすぐ後に鷲尾が到着したが、どうやら気づかれてはいないらしい。 「おい、でで来いよ。隠れたって無駄なんだからな」 近くにあった茂みを蹴りあげて脅しをかけてくる。 巳田の髪の毛は明るい色なので、どうにも緑には馴染まない。このままでは見つかるのも時間の問題だろう。 消しゴムを食べるのはもちろんいやだったが、蹴られるのも同じくらい遠慮したい。 なので、鷲尾が見当違いな方へ進んでいくと、巳田は意を決して大きな木に手をかけた。 音を立てないよう慎重に慎重に上っていく。 あんまりこういうことはしたくないだのと贅沢を言ってる場合でもない。 必至に頑張ったかいあって、大ぶりの枝によじのぼることができた。 (あとは鷲尾が飽きるのを待つだけだな) ほっと息というところか、 「あれ? 巳田くんなんでこんな所にいるの?」 そう言うわけにもいかないらしい……。 幹の反対側に生まれる気配にぎこちなく振り返れば、きょとんとした表情の猿(ホムンクルス仲間)がいる。 彼は巳田もよく知る人物で、たまぁに勉強を教えてやったりする仲だ。 「いや、別にどうということも……」 「なんでもなくて巳田くんが木に登るはずもないでしょ。また鷲尾に追われてるわけだ」 即行で見抜かれてしまった。 その圧倒的なにこにこ笑顔に、巳田は背筋も凍る思いである。 「た、頼む。見逃してくれないか」 「うん、まぁ巳田くんにはいろいろお世話になってるしね……」 肯定的な返事になお緊張は解けない。彼の言葉にはどこか冷めた部分がある。 「でも鷲尾くんに恨まれるのもイヤだから死んでちょーだい♪」 げしっと腹を蹴りつけられる。 押し出すような一撃なので、痛みは殆ど感じなかった。 地面に叩きつけられるまでは、だが。 「ぐえっ」 「あははっ、巳田くん大丈夫?」 「覚えてろよ……、この!」 まだまだ言いたいことはあるのだが、今の騒動を聞きつけて鷲尾がこちらに向かってきている。 巳田はひとまずその場を後にした。 ☆★☆★☆★☆★☆ 恐ろしいことにその3に続きます。 狩猟される巳田萌え。 ちなみにちょろっと登場した猿は例のあの豆です。 次回は鷲尾が飛ぶよ!ホムンクルス変形対決だ! *:;;;:*゜。+☆+。゜+*:;;;:*:;;;:*゜。+☆+。゜ 森下里虎 E : kamiosandaisuki@yahoo.co.jp HP: http://tool-4.net/?morimori *:;;;:*゜。+☆+。゜+*:;;;:*:;;;:*゜。+☆+。゜ |