メルマガ:仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
タイトル:仇花の記憶 08/11/25 180号  2008/11/25


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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜

第五巻弐拾弐回  小説「そして時には旗標」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

   そして時には旗標
              XQO

 時節柄だから仕方ないとは言え、ここ数年は
リボンの色合いについて微妙に気を回さなくて
はいけない。色合いだけで短絡する人はまだ居
ない様だから良いけれども、そうしたらそうし
たで今度はこちらが余計な気を回して語りたく
なってしまうから始末におえない。
 ただ、ね。
 クリスマスカラーのリボンを揃えるだけでも
主張が出来てしまうという状況は困惑するが有
り難くもある。親しき仲にも礼儀あり、と言う
奴だ。暗黙の内に象徴で語る方が判って貰い易
い事だってある。殊に方向性を異とする友人に
対しては。
 とりあえず周囲の女性陣への物に掛けるリボ
ンの色については悩まずにすむ。ここ十年来は
珊瑚色のリボンを誂えて折々に用いる様にして
いるから。既製品では中々気に入る色が無いの
だから誂えた方が早い。
 さて相方に対してのリボンだけど…これもい
い加減誂えると言う事にした方が良いのかもね。
基本の色合いは決まっているにしても、下卑た
色で気分を萎えさせたくはないし。
 いっそ何れかの地色を決めて置いた上で他の
色を筋で流し入れると言う体裁でも良いかも知
れない。多彩な色で主張するならその方が余程
洒落ていて良いだろう。主張と押し付けがまし
さとは別の位置にあるものだし。主張ならばむ
しろシンプルな方が良い。
 猩々緋を地色にしない事は端から決めている。
色彩に対しての美意識の問題故だ。となると胡
粉色か千歳緑を地色にと言う事になる。
 調和と際立ちを考えると千歳緑を地色にした
方が無難だろうか。
 で、こう言う風に散々飾りを考えた挙句贈る
物といえば土鍋或いは煮込み用の壷なのだから
世話は無い。幾ら相方と食いに行ったスペイン
料理の旨さに感動したからと言って誘い受の様
に調理器具を送るのはどうなんだと。これで贈
答用の飾り付けを外部依頼していようものなら
とても素敵な羞恥プレイになるだろう。全くも
って自分のこの思考回路には毎年の事なんだが
呆れてしまう。嫌いではないから余計呆れる。
 品が品なんだからリボンは止めて風呂敷にし
ようか。木綿で使い回しが出来る様にして…っ
てしまったな、横道にそれてそっちの方が愉し
くなってる。これなら他の野郎連中用のリボン
を先に考えておく方が早かったか。リボンなん
て余り縁の無い連中だからつい失念してしまっ
てたが…不思議とクリスマスには執着するんだ
よな。行事に執着するだけならまだ話が判るん
だがなんで俺からのプレゼントに執着しやがる
のか。つーかお前等そう言う恋愛属性じゃない
だろーがよ?血迷いでもてても嬉しかねーよ。
 ま、意趣返しは趣味じゃないのでそれなりの
色…ああ、胡粉色に猩々緋と千歳緑を流すかな。
それなら区別もし易いし嫌味じゃないだろう。
地を銀色にするのもまた一興かも知れない。せ
めて頭で考える部分だけでも日付が変わる前に
決めて置かないとな。後がしんどいわ。連中用
の中身はほぼ一律お決まりだし。

 演出として自分の体にリボンを掛ける、と言
うのはありと言えばありなんだけど一歩間違う
と後が続かなくなる。リボンを絞める強さもあ
るんだけど材質によってね…経験則から言うと
お奨め出来ない演出だ。薬指に軽く巻きつける
程度なら無難かもね。それでもなるべく短い時
間で。
 で、ふと醒めた頭で考える。こういう愉しい
しんどさを何時まで味わえるんだろうという漠
然とした不安は一応ある。お互いが陽極同士に
属している以上は。仮初にしたってこちらは陰
極を装う心算は無いし、相方に陰極役を押し付
けたくも無い。陽極同士だからこその絆がある
と祈る様に思い込んで日々を過ごしている感じ
だ。
 陽極同士だからこその反発もあるのは当然。
でも、そこから先には共感もある。無条件に持
つ事が出来る共感じゃないけど。
 その共感から生まれる安らぎの一里塚として
こう言う贈答があるのだろうから。
 …そうすると、調理器具だけ贈るってのは一
寸アンフェアかな。スペイン料理は相方の奢り
だった訳だし。一方的に貪る関係ってのは趣味
じゃない。
 風呂敷を誂えるついでにエプロンも同じ配色
で作るかな。相方乱入も見越して二枚。ほんと
は俺一人で全部仕上げたい訳だけど、あの人根
っからそう言うの好きだしな…下手するとこう
やってる間に自分の方でそう言う計画を立てて
る可能性もあるんだよな。
 かくて俺は相方の携帯電話宛にメールを打つ
のである。クリスマスは一緒に料理しようよ、
と。 
                 (了)

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第五巻弐拾弐回 2008.11.25発行

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