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タイトル:蝶サイコーな第9回目『■考えてしまう■』  2008/10/08


マメっ子の独壇場。
捏造もろだしですのでご注意を。

題:たまに考える

食卓を囲んでるときとか、なんとなくテレビを見てるときとか、今みたいに家事にいそしんでるときとか……
ふと、自分が『まーくん』じゃないんだって痛烈に実感することがある。
親父もお袋もすんごくいい人だし、俺は気にいられてる……筈だ。
でもその気に入ってるのだって、俺が息子であるということが大前提なわけで。
息子の自我を喰らい尽くした化け物が成り代ってるなんて知ったら、絶対こんな関係では居てくれない。

でもさぁ、よく考えてみたらさ、
この身体の前の持ち主はとんでもない親不孝者で、正直いっていなくなったほうが両親のためなんだよ。
あらためて殺してやりたいくらい頭にくる奴だしさ、損得で判断したら絶対俺の方が得だよ。

あいつはお袋を蹴るけど、俺は優しく腰をさすってあげる。
あいつは金を掠め取るけど、俺は両親を養うことに夢中だ。
あいつはとにかく最悪な奴。けど俺は最高になろうとしてる。

ほら、もう比べるべくもないって感じ。

でもね、損得で決められるようなことじゃないって、本当はわかってる。
家族っていうのは、それだけ深くて大事なものなんだ。
ホムンクルスになってちょっと鈍くなった俺には理解しきれないけど、感じ取ることはできる。

……俺は両親が好きだし、親子の絆ってやつを感じるとすげぇ幸せになる。
でも、たまぁにその絆がね、『まーくん』と繋がってるのかもしれないその絆が疎ましくもなる。

「まーくん、煮物の火加減だいじょうぶ?」
咳の合間に出るちいさな声。
野菜を刻む手を止めて、隣室で横になるお袋を見た、
「おう、どうしたの。無理しないで寝ててよ」
「そんなこと言ったって、やっぱり心配だわ」
少し自信の無いような、困ったような下がり眉。……苦労の滲む皺。
お袋をこんなに疲弊させたのは、ほかならぬ『まーくん』。あの、馬鹿息子。
「万一火事になったらお袋と親父を抱えて逃げるからへーき」
「ふふふ、そんなに力持ちじゃないでしょ」
掠れた声でくすくすと笑う。
「……まぁ、火には気をつけるからさ。もう少し待っててよ」

トントントン
しばらくは、また野菜を刻む音。
付け合せのサラダは、ちょっと多めに作る。
やっぱり風邪を引いてるときは、さっぱりしたものが食べたいだろうから。

「ねー、お袋。トマトは多いほうがいい?」

返事はない、もしかしたら眠ってしまったのかもしれない。
「じゃあ多めに入れちゃうね」
深皿を引き出し、野菜を盛り付けていく。
一番下はレタス、次にきゅうり、大根、にんじん、トマト。


「お袋……俺のこと――気に入ってくれてる? 俺が息子でも平気?」


ぼそりと呟く声に、もちろん答えは返らなかったけれど。

――返らないはずだったけれど、

「“気に入ってる”じゃなくて、“愛してる”でしょ」

驚いて目を向ければ、お袋はにこにこと笑っていた。
「な、んだよ……寝たふりかよ」
「なぁーんか思いつめてそうだったからね」

親にはそういう感が働くのよ、なんて言われると泣きたくなる。
ああ、どうして俺はホムンクルスなのかな……って、考えてしまう。

<終わる>

普段めちゃめちゃ明るい奴が深刻に考え始めると必要以上に沈んだりします。
今回はマメっ子ナイーブ。
マサキなのかマサヨシなのか知りませんが、とりあえず家では「まーくん」と呼ばれてます。
ホムの仲間内だと普通に「マメ」
私は「マメ」の呼び方のほうが好きですね。

こんなに沈んでも二時間後には完全復活するマメが大好きだ! 馬鹿な子はかわいい!

それでは読んで下さってありがとうございました!
うおーっ! がんばるぞ!

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森下里虎

E : kamiosandaisuki@yahoo.co.jp 

HP: http://tool-4.net/?morimori

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