21世紀の最新「楽器」
ヤマハが5月12日、21世紀の新型楽器「TENORI−ON」のネット販売を開始した。すでに昨年9月からイギリスでテスト販売されており、多くのプロのミュージシャンや音楽愛好家の人気を集めている。今回の発売情報を聞いて、日本の音楽愛好家の間で話題が沸騰し、販売価格は決して安くないというのに(一台12万1000円)買い手が殺到し、サーバーが麻痺状態になったという。
「TENORI−ON」の基本コンセプトを構想したのは、メディアアーティストの岩井俊雄氏だ。彼は、LEDボタンを指で押して直感的に演奏を行える電子楽器を作ろうと考えた。20センチ四方のマグネシウム合金製で、全面に16×16=256個のLEDボタンが配置されている。ボタンを押して、様々な音色を自由に演奏したり録音したりできる。まさに、「音楽の知識がなくても、誰でも視覚的、直感的に演奏できる21世紀の音楽インターフェース」と言えるだろう。
「TENORI−ON」の外観は、今までのどんな楽器とも違っている。ボタンを押すと、音が出るだけでなく、様々な光も発する。ボタンは、垂直方向で音階を、水平方向で音階の演奏順を指定できる。演奏を生き生きとしたものにするため、楽器の背後にも同様のLEDが配置され、演奏中に光を発する。観客は、演奏者と同じ視覚と感覚を味わうことができるというわけだ。
「TENORI−ON」の音源は、253種の音色を持つAWM2音源であり、SDカードで保存したオリジナルの音を追加することもできる。ボタンの押し方で様々な演奏を行えるモードなど、6種の演奏モードを搭載しており、シンセサイザーやシーケンサーのように音楽制作を行うモードもある。最も特筆すべきなのは、画像処理ソフトのようなレイヤー機能を駆使して、それぞれのパートごとに段階的に楽曲を作成できることだ。シーケンサー機能も内蔵しており、演奏したコンテンツをSDカードに保存したり、MIDI接続したほかの楽器との合奏を行うこともできる。
「TENORI−ON」は、単三乾電池六個で動く。サイズは205(幅)×205(奥行き)×32(高さ)ミリで、重さは電池抜きで約700グラムである。(樋田桂一提供)
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欧米での「高野山ブーム」
今から約1200年前、弘法大師によって開かれた真言密教の聖地、和歌山県・高野山。標高約900メートルの山上には、多くの寺院があり、四季を通して、神秘的な雰囲気が漂う。その高野山で今、数多の外国人が散策し、神妙な面持ちで手を合わせ、精進料理に舌鼓を打つという“高野山ブーム”が起きている。
このブームは、1999年にフランスの新聞で高野山が紹介されたことがきっかけといわれる。さらに2004年7月、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産登録されたのも人気に拍車をかけた。京都や東京などとともに、高野山に滞在するツアーも年々増えている。
県によると、外国人宿泊者数がここ5年間で61,283人から163,870人と267%も増加。台湾や香港、韓国、中国などから観光客には、温泉のある白浜などの人気が根強いが、高野山ではフランス、アメリカ、ドイツといった欧米からの観光客が圧倒的に多い。
高野山では、寺院の宿坊に滞在し、修行僧が配膳する高野豆腐、ごま豆腐などの精進料理をはじめ、朝の勧行、阿字観(あじかん)などを体験する。また、20万基ともいわれる墓が並ぶ奥の院、お堂や塔が立ち並ぶ壇上伽藍(だんじょうがらん)などをじっくり巡る。つまり、歩いて行ける範囲に観光拠点が集まり、様々な修行体験ができるうえ、「スピリチュアル」な町の雰囲気が人気の高い理由のようだ。
また、高野山無量光院の役僧で5か国語が堪能なスイス出身のクルト・キュブリ氏が、外国人観光客の案内を率先して行っているのも大きい。
関西国際空港から鉄道で約2時間。高野山への玄関口、南海高野線・極楽橋駅では、大きなバックパックを背負った外国人観光客が、ガイドブックを手に山へ登り、ケーブルカーに乗り込んでいくのは、もはやおなじみの光景。人口4600人の小さな町が、国際宗教都市としてその名を広めつつある。(飾磨亜紀執筆)
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