くいだおれ太郎とビリケンさん
ある時は阪神タイガースファンの姿、またある時はワールドカップサッカーのサポーターにと、様々な衣装で時代を反映してきた大阪のシンボル、「くいだおれ太郎」が7月8日、大型食道「大阪名物くいだおれ」の閉店に伴って、第三者に売却されることになった。
この店は約60年前の1949年6月、山田六郎氏が大阪の道頓堀で創業、開店した。俗に「京都の着だおれ、大阪のくいだおれ」と言う。これは、京都人は和服に私財をつぎ込み、大阪人は美食を追求して家を傾けるという意味である。くいだおれ太郎は、上方の文楽(人形浄瑠璃)の人形を原型として作り出され、赤白ストライプの服に、黒ぶち眼鏡をかけて太鼓をたたく愛らしい姿をしている。
だが、時代の移り変わりと建築自身の老朽化や周囲の環境の変化によって、「大阪名物くいだおれ」も60年の歴史に幕を閉じることになった。「くいだおれ太郎」がなくなることで、戎(えびす)橋筋商店街には、約12億2000万円もの経済損失を与えるとされている。現在、兵庫県香美町などのいくつかの団体が「くいだおれ太郎」を譲り受けたいと希望しているが、それに対して大阪の観光名所、通天閣では、「くいだおれ太郎」獲得のために署名運動を始めた。「通天」を「ツー(2)」+「テン(10)」と考えて、署名獲得の目標を21万人に設定した。
また、通天閣の守り神で、今年生誕百年を迎える「ビリケンさん」も、「くいだおれ太郎」争奪のためにがんばっている。この頭の尖ったつり目の子どものような人形は、1908年にアメリカの美術家、フローレンス・ブリッツが生み出した傑作で、「幸福の神」として全世界に流行した。通天閣2階のサイン会場に登場したビリケンは、手に「くいだおれ太郎」の小さな人形を持っている。通天閣では、「くいだおれ人形の服と同じ紅白の太郎の家を建てる計画がある」としている。
通天閣のサイン会場に行かなくても、パソコンや携帯からも署名できるのだそうだ。(大村鉄夫提供) |