数多くのテレビ番組の企画・構成・演出・プロデュースを手掛け、さらに様々な分野でのデザイン、音楽プロデュース、作詞、ラジオパーソナリティー、CM監督、企業プロデュース、本の執筆、講演などで活動をしている、中国語なら「九頭鳥(九つの頭を持つ鳥)」と呼ばれそうなおちまさと氏が書いた「時間の教科書」は、去年発売されて以来たいへんな売れ行きである。
「この世の中で、時間だけがすべての人に対して公平だ」という言葉を聞いたことがある。この本を読み終わって、一見真実のように見えるこの名言には誤解があることに気づいた。もちろん、誰もが毎日24時間を所有しているのだが、視点を変えて観察してみると、時間を上手に使えれば、おちまさと氏のように「一日48時間」にすることもできるし、他人に「分身が存在する」と思われることも可能なのがわかる。
このような「時間を節約する」技術は、簡単にいうと3つの要点に集約できる。第一に、「時間を巻く」、つまり使用する時間の絶対量を減少させる。例えば、仕事を自分より効率の高い人に任せるなどである。第二に、「時間をゆがめる」、つまり時間の流れを変える。例えば、自分が参加する必要のない会議に参加することを避けるなどである。第三に、「時間を倍に使う」、つまり一番目と二番目の要点をうまく組み合わせることである。これらの要点をマスターし、さらに「タイム・プライオリティ」、「ポジティブ・プランニングとネガティブ・シミュレーション」、「スマート」の三種の神器の力を発揮すれば、時間を有効に利用する名手になれるのだ。
ここで、以前聞いた話を思い出した。時間が足りないことを愚痴ってばかりいる人がいた。ある哲人が彼に、箱の中に石を詰めさせた。箱が一杯になったら、細かい石を入れさせると、細かい石は大きな石の隙間に入り込んだ。箱が一杯になったら、今度は砂を入れさせた。砂を入れると隙間がびっしりと詰まった。最後に、哲人は大量の水を流し込んだ。このことから、簡単な理論が導き出せる。時間はあっても、それをうまく利用できるかどうかが問題なのだ。
人は生まれた瞬間から、死に向かって全力で走り続ける。死ぬまでに残された「時間」を有効に使わなければならない。時間は「稼ぐ」ことはできるが「もうける」ことはできない。――この思いがけない鋭い言葉には、おちまさと氏の重要な価値観と生活哲学が含まれており、深い印象が残った。「時間の教科書」は、人々に時間の使い方を振り返らせると共に、様々なアイディアを提供してくれる読みごたえのある本である。
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