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タイトル:Daily Drama Express 2008/01/15 ハチミツとクローバー (2)  2008/01/22


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                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2008/01/15 (Tue) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.火曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 火曜日の連続ドラマ
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タイトル ハチミツとクローバー
局  名 フジテレビ系
放映日時 火曜21時
キャスト 花本はぐみ(成海璃子)
 竹本祐太(生田斗真)
 野宮 匠(柏原崇)
 山田あゆみ(原田夏希)
 山田大五郎(泉谷しげる)
 真山 巧(向井 理)
 森田 忍(成宮寛貴)
 花本修司(村上 淳)
 原田理花(瀬戸朝香)
 勅使河原美和子(滝沢沙織)
 ローマイヤ先輩(木村祐一)
 庄田教授(松重 豊)
 寺登泰彦(前川泰之)
原作   『ハチミツとクローバー』羽海野チカ(集英社 QUEEN'S COMICS 刊)
脚本   金子茂樹
主題歌  平井 堅 「キャンバス」(DefSTAR RECORDS)

あらすじ 第2話「福引であてた海と涙とキス」

 はぐみちゃん(成海璃子)が大学に来てから1ヶ月がたった。彼女
はほんの少しずつだけど大学生活に溶け込んでいるようだ−−って何
で僕(生田斗真)が全身甲冑姿でそんなこと思っていなきゃいけない
んだよ……。僕は鉄斧の重さで痺れる腕を我慢していた。今僕はデッ
サンの授業に出ている。いや正確に言えば西洋中世風の甲冑姿でもぐ
りこんでいる。そして授業に出ているのがはぐみちゃんだ。

 この日はヌードデッサン。それを知って森田さん(成宮寛貴)と真
山さん(向井理)が面白がり、僕を授業にもぐりこませたのだ。何で
僕が……と思いつつ、実は僕も乗り気だったりする。庄田教授(松重
豊)が5分間の休憩を入れた。よし、モデルの人がこっちを向くぞ、
と期待した瞬間だった。
「火事だぁ!」
 外で森田さんの声がして火災報知機が鳴り出した。はぐみちゃんた
ち学生は大慌てで教室外へ逃げていく。ぼ、僕も逃げなきゃ。ガチャ
ガチャと音を鳴らしながら僕はドアに向かった。するとはぐみちゃん
たちは僕に気づいて震え上がった。しまった、僕は甲冑姿だった……。
それで僕はのぞきの現行犯で庄田教授に捕まった。 

「問題起こすようなやつに見えないのにやることえげつないな!」
 僕は廊下に正座させられた上、教授にこってりとしぼられた。森田
さんと真山さんははぐみちゃんと一緒に面白がって見物していた。最
初からいたずらのつもりで仕組んだのだ。僕は恨めしげに森田さんを
見やった。
 けれど森田さんははぐみちゃんを相手にコマネチ!のギャグを教え
ている。
「それ、何ですか?」
「知らないの?東京じゃ人に元気になってもらいたいときみんなこれ
をやるんだよ。ちょっとやってみな」
「コマネチ……?」
「手の角度を45度にして、大根を引き抜くつもりで。そうそう」
 人をはめておいて何してんの、と僕は叫びたくなった。
「コラッ!余所見すんな!」
 庄田教授が竹刀を床に叩きつけた。

 ようやく解放されて、僕らは花本教授(村上淳)の研究室へ行った。
真山さんや森田さんに話しかけられても僕は無視した。親が知ったら
どう思うことか。
「まっ、泣きたきゃこのティッシュ使いなよ」
 森田さんが大量のポケットティッシュを渡してきた。
「なんだこれ?」
 はましょーティッシュ、浜田山商店街の福引券の残念賞だ。
「そ、それって」
「お前の代わりに引いてきたよ」
「そんな……」
 僕は愕然とした。2等のテレビを当てるために貯めていたのに……。
僕の夢のテレビ生活が……。
 がっかりしているヒマはなかった。はぐみちゃんが「変態ヨロイ男
竹本祐太」という新聞部の号外をもらってきて配った。
「一躍時の人じゃん!」
 森田さんは悪乗りして研究室の壁に貼り出したのでさすがに僕は耐
えられなくなった。
「僕、帰ります」
「おい、竹本」
「話しかけないでください!」
 僕は花本教授の声を無視しようとした。
「帰るならはぐみをホームセンターへ案内してくれないか?」
「えっ、はぐちゃんを?」
 僕は彼女を見た。
「よろしくお願いします」
 彼女はにっこり微笑んだ。最低の一日が最高の一日に一瞬にして変
わるのを僕は感じた。

 森田さんは性懲りもなく福引券の偽造を始めた。狙うは特賞の車た
だひとつ。
「親父にチクルなよ」
 山田さん(原田夏希)に森田さんは釘を刺した。
「言うに決まってんじゃん」
「あっそう、それじゃ毎年元旦の恋愛祈願、あればらすぞ。絵に描い
たあんな真山、こんな真山もぜ〜んぶばらすぞぉ」
「そ、そんなこと何もありません!」
 どうやら山田さんも黙認するしかないみたいだ。

 できあがった福引券は本物と瓜二つで、森田さんも満足げだった。
「甘いな。今年は偽造防止のために裏にあたしのデザインしたスタン
プがあんの」
 山田さんは自分が持っている券の裏を見せた。しかし森田さんは諦
めない。すぐさまスタンプ作成にかかった。
「もうやめなって」
「うるさい、邪魔すんな」
 山田さんはあきれて止めようとして森田さんと軽い取っ組み合いに
なった。その最中、1枚の写真が床に落ちた。花本教授と原田理花
(瀬戸朝香)ともう一人男の人が写っていた。

 はぐみちゃんは庭園の石コーナーの石材をじっと眺めていた。
「へえ、油絵以外に彫刻もやるんだね」
「いえ、漬物用の石を探しているんです」
「へっ?」
 僕は驚いたが、店員を探して聞いてみた。しかし漬物石は置いてい
ないという。仕方なく戻ると、彼女は迷子の男の子に話しかけていた。
優しいなあと僕はちょっと嬉しくなった。が、彼女は男の子の前でい
きなり「コマネチ!」と腿の付け根に手を当てて引き上げた。
「は、はぐちゃん、今のなに?」
 僕は驚いた。
「これ、元気の出るおまじない。森田さんが教えてくれました。東京
の人はみんなしてるって」
「それ騙されている。森田さんの言うことは嘘ばっかりなんだよ」
 僕は本当のことを教えた。
「でも、いいと思います。効き目があるみたいだし」
 見ると男の子は「コマネチ!」と喜んでいる。
「そう、手を45度にして引き上げるのよ」
 ああもう!彼女の純真なイメージが壊れる、僕は頭を抱えてへたり
込んだ。

「30過ぎたオバサンのどこがいいわけ!仕事していてお金持ってるか
もしれないけどそれがなんなのよ。絶対あたしの方が肌も髪もツヤツ
ヤしてんのに。あいつはたぶらかされているだけなのに気づいてな
い!」
 原田理花の写真は山田さんの積もりに積もった思いを爆発させた。
「そうだ、もっと言ってやれ」
 やけ食いする山田さんを宥めるのに森田さんは必死だ。
「真山のアホォ!アホォ!!」
 山田さんは絶叫した。

 買い物が済んだので僕ははぐみちゃんと商店街を散歩した。そうだ、
あの今川焼きを。僕は珍しいクリームの今川焼きを彼女に食べてもら
おうと思った。すごくおいしいよと僕は得意げに彼女に教えた。なの
にこの日に限って売り切れ、仕方なくあん入りの普通の今川焼きを買
って食べた。彼女ががっかりしているんじゃないかと僕は気になった
が、普通のでも十分おいしいと彼女は言ってくれた。それがまた彼女
なりに気を使っているんじゃないかと思うと僕の心は晴れなかった。
 そのあと僕らはゲームセンターで体感マシーン系のゲームをした。
画面に映し出される海の映像を見ながら彼女がふと口を開いた。
「本物の海ってきれいですか?あたし、まだ海って見たことないんで
す」
「そうかぁ。でも東京の海じゃはぐちゃんにはきれいに見えないかも
なぁ」
 はぐみちゃんが見たい海を考えながら僕はそう答えた。

 UFOキャッチャーの前ではぐみちゃんはハート型の指輪をじっと
見ていた。
「欲しいの?とってあげるよ」
 僕はチャンスとばかりに意気込んだ。

 アルバイトを辞めることになっても真山さんは手抜きすることなく
原田理花のところで仕事をした。
「ねえ、真山くん」
 ためらいがちに原田理花が切り出した。
「あの、バイト代は要りません。だからここで働かせてもらえません
か?」
 真山さんは原田理花の心を察して言った。彼女はうつむいた。
「僕じゃ、僕じゃあの人の代わりにはなれないんですか?」
 たまらなくなって真山さんは聞いた。
「……ごめんなさい」
 彼女はうつむいたままだった。
「これ、ここの」
 真山さんは鍵を差し出した。諦めるしかない、真山さんはこれ以上
原田理花のことを苦しめるわけにはいかなかった。

 いいところを見せるはずが、僕の表情はまったく冴えない。
「竹本くん、もういいよ」
 はぐみちゃんは申し訳なさそうな顔をした。
「何を言ってんの。まだ最後の1枚あるから」
 僕は強気に答えた。でも声も手も震えてしまった。頼むぞ。祈りを
こめて挑んだラストチャンス。結果は無情だった。隣にあった青い指
輪が運ばれる。
「ごめん」
「ううん、これもらっていいですか?」
 彼女は嬉しそうに指輪を見つめた。

「あのゲームちょっと意地悪ですね」
「どうして?」
 欲しいものがすぐ目の前にあるのに手を伸ばしても取れないから、
彼女はそう言った。
「そうだね」
 僕も本当にそうだと思った。
「でもこれは神様からのご褒美ですね。だめでもがんばった人には幸
せな小さなおまけがついてくるんです。きっと」
「世の中みんながみんな欲しいものを手に入れられるわけじゃないか
らね」
「はい、数には限りがありますから。クリームの今川焼きみたいに」
 僕はちょっと痛いところを突かれて思わず苦笑した。でもクリーム
の今川焼きも、欲しかった指輪も取れなかったけど、彼女とこうして
自然にしゃべっている一時が彼女の言う幸せな小さなおまけなのかも
しれない。

 僕とはぐみちゃんは花本教授の研究室に戻った。森田さんが「真山
のアホ」スタンプを作って山田さんをからかっていた。いつもなら蹴
りを入れるところなのに、山田さんはぐったりした様子でやり返さな
い。叫び疲れて気力が萎えていたらしい。

 はぐみちゃんはアトリエにこもって創作に取りかかった。
「はぐちゃんは絵描くのやめたいと思ったことない?」
 山田さんは彼女の様子を見に行って、一心に描く姿を見て聞いた。
いくら好きでも時々しんどいことだってあるものだからという一般的
な質問を山田さんはしてみた。
「思ったことないです、やめたいと思ったこと、一度もない」
 彼女は優しい眼差しでそう答えたが、そう言う口調にまったく迷い
がなかったので、山田さんは気圧されたような目つきになった。
「そうなんだ、本当に好きってそういうことなんだね」
 山田さんはため息をついた。

 その夜実家から届いたダンボール箱を見て僕は目を輝かせた。漬物
石が入っていたのだ。これをはぐみちゃんにあげることができれば!
 翌日、僕は授業後花本教授の研究室に行った。はぐみちゃんが1人
なのでチャンスとばかりに石を取り出そうとしたら、花本教授と山田
さんが入ってきた。
「おい、漬物石あったぞ」
「ありがとう」
 呆然となる僕のことなどお構いなしに教授ははぐみちゃんと談笑し
ている。
「そういえば真山は?バイト?」
 山田さんが聞いてきた。
「いえ、バイト探しに掲示板を見に行きましたけど」
 僕は漬物石を隠しながら答えた。
「何で?」
「あいつ、クビになったんだって」
 花本教授が代わりに答えた。
「先生は、理花さんて人のことご存知なんですか?」
 つとめて冷静な様子で山田さんが尋ねた。
「理花と俺たちは――」
 3人で写った写真を見ながら教授は話をしてくれた。
 原田理花と教授ともう一人の男性は学生時代からの付き合いで、そ
のもう一人の男の人は彼女の夫だった。ただしすでに亡くなっている。
今日が命日で、昨日は亡くなっただんなさんの大好きだったワインを
届けに行ったので、墓参りに行っているだろう。今でも彼女はだんな
さんのことが心に残っているからと。

 山田さんはたまらなくなって、真山さんのところへ駆けていった。
「もうやめなよ。亡くなった人と張り合っても勝てないよ」
 キャンパスのベンチで寝転び、だるそうにタバコをふかす真山さん
に向かって山田さんは思い直させようとした。
「そんなのわかっているんだよ!」
 真山さんは声を荒げたが、苦しげな表情でうつむいた。
「そんなのすべてわかっているんだ。でもどうしようもないんだ。も
う俺にかまうな。俺のこと見るのやめろよ」
 真山さんはタバコをもみ消すと立ち去ってしまった。

 すぐ目の前にあっても手に入れることができないことがある。どん
なに手を伸ばしても決して手に触れられないことがある。例え手に入
れることができなかったとしても、求め続ける先に光はあるのだろう
か。はぐみちゃんが言ったように、たとえ願いが届かなかったとして
も、別の小さな幸せがどこかで待っていてくれるのだろうか。

 泣くのを懸命にこらえて見送るしかない山田さんを見ていて僕はそ
う思った。そして真山さんのことも。

 そんなところへ森田さんが大量の福引券を手に入れた。美術商の寺
登さん(前川泰之)が浜田山商店街で高級フルーツの盛り合わせを買
って森田さんを訪ねてきたのだ。森田さんはフルーツに目もくれず福
引券をひったくると僕ら5人に召集をかけた。森田さんは数日前に自
作の券を持って引きに行ったが、山田さんの見せた裏のスタンプの券
自体が偽物だったので追い払われてしまったのだ。あの親父をぶっ潰
す、森田さんの気合いは相当なものだ。
「真山に合わす顔がないよ」
 山田さんは嫌がった。
「なら俺の背中でも見てろよ。とにかく生きている限り全員参加が義
務なんだよ」
 森田さんに引っ張られ、山田さんも加わり僕ら5人は商店街に向か
った。

 商店街では山田さんの父親大五郎(泉谷しげる)が出迎えた。そこ
へ特賞の車を当てたローマイヤ先輩(木村祐一)が悠然と運転しなが
ら通っていった。2年連続で特賞ゲットに僕らは呆気にとられた。
 チャンスは5回。森田さんが挑んだが4回失敗した。
「おいこらぁ、ちゃんと当たり入ってんのかよ!」
 森田さんが山田さんの父親に掴みかかった。
「当たり前だろ。てめぇのくじ運のなさを人のせいにすんな」
 山田さんの父親は涼しい顔をしている。
「森田さんじゃだめですよ」
「いや今度こそ」 
「誰が引いても同じだろ」
 僕らが言い合いをしていていたら、はぐみちゃんがくじ引きをまわ
し始めた。
「東京じゃボーっとしているとくじ引き回されちゃいますよ」
 彼女はニコッとした。先日僕と今川焼きを買ったとき、彼女は修ち
ゃん(彼女は花本教授をそう呼んでいる)にもと多めに買ってきたの
に、ちょっとした隙に森田さんに食べられてしまったのだ。そのとき
森田さんにそんな風に言われたらしい。
 目が点になる僕らにお構いなくくじ引きは回り、そして金色の玉が
落ちた。
「大当たり〜」
「やったぁ!」
 僕らは1等が当たったものだとばかり思ったが、出されたのは5等
の金色の浮き輪セットだった。森田さんが騙していると山田さんの父
親に掴みかかって、取っ組み合いが始まりそうになったので僕は叫ん
だ。
「あの、みんなで海に行きませんか!せっかく浮き輪当たったんだし」
 はぐみちゃんは海を見たがっていたから、僕は彼女を見てにこりと
した。

 僕らはローマイヤ先輩から特賞の車を借りた。森田さんははぐみち
ゃんと山田さんに挟まれて後部座席に座ろうとしたので、山田さんは
即座に断った。
「だったらお前は助手席に座ってろ」
「えっ、やだ」
 山田さんは抵抗したが、森田さんは無理やり押し込んだ。運転席に
はもちろん真山さんがいる。
「竹本くん、真ん中に座りなさい!」
 山田さんが命令した。はぐみちゃんと森田さんを隣同士にさせない
ようにと。このときばかりは僕も強気で森田さんを奥へ押しやった。

「あーっ、はぐちゃんその指輪かわいいね」
 山田さんが目ざとく指輪に気づいた。それはUFOキャッチャーで
僕がゲットした青い指輪だった。
「山田さん、スカートかわいいですね」
 僕は慌てて話を変えようとした。
「そんなことどうでもいいでしょ。ねっ、どうしたのそれ?」
 山田さんは興味津々で聞いてくる。本当のこと話されたら何言われ
るかわからない。僕は冷や冷やしたが、ちょうどうまいタイミングで
海が見えてきた。
「あっ、海だぁ!」
 何とか話題をそらすことができた。

 まだ肌寒いのに森田さんは浮き輪をして海に入ろうとし、予想通り
冷たいと叫んで逃げ戻ってきた。でも山田さんもはぐみちゃんも波打
ち際ではしゃいでいて楽しそうだった。
「何見とれてんだよ」
 真山さんが不意に言ってきたので、僕は狼狽した。さっきから僕は
はぐみちゃんばかり見ていた。彼女の左手の人差し指にはめられた青
い石に太陽の光が差し込んでいるのが僕にはとてもまぶしく見えた。
僕らは思う存分楽しんだ。山田さんは少し気分が楽になったのか、ジ
ョッキで何杯もビールを飲んで寝込んでしまった。

 季節はずれの海はとても穏やかで、僕らがどれだけ騒いでも黙って
受け入れてくれるような優しい表情をしていた。
 僕には必死に手を伸ばして手に触れたい何かも、泣きたいほど手に
入れたい何かもないけど、不意に手にしたこの時間はおまけというに
は十分すぎるほどきらきらと輝いて見えた。

 夕方になって帰り支度を始めたら、はぐみちゃんが指輪をなくした
と言い出した。僕は森田さんと一緒に探した。けどいくら探しても見
つからず、日が暮れてしまった。僕はそれでも必死になって探し回っ
た。

 真山さんは防波堤のところで横になっていた山田さんを起こしにい
った。
「起きろよ、帰るぞ」
 真山さんにそう言われても今日はここで寝ると山田さんはわがまま
を言った。真山さんはしゃがんだ。
「おぶってやるからさ」
 山田さんは瞬時に正気に戻った。
「重いよ」
「いいから」
 真山さんは待っている。山田さんは恐る恐る寄りかかった。
「重いと思ってんでしょ」
 ゆっくりとした歩調を気にして山田さんは言った。
「ああ、予想以上にな」
 ちょっと憎まれ口っぽく真山さんは答えた。
「なんだと、真山のアホ!」
 山田さんは真山さんの肩の辺りをポカポカぶった。
「わかったから」
 幼子をあやすように言われて山田さんはぶつのをやめた。
「真山のアホォ……」
「うん」
 真山さんはうなずいた。山田さんはぎゅっと真山さんに掴みかかり、
首筋に顔を寄せた。
「真山ぁ、好き」
 山田さんは泣きそうな口調で耳元にささやいた。
「好き、好き!」
「うん」
「好、き」
「うん、ありがとう」
 泣きじゃくる山田さんに言われるたびに真山さんは静かに答えてい
た。

「こっちに来いよ」
 森田さんがはぐみちゃんを呼んだ。彼女がそばに行くと、森田さん
は空き瓶のかけらを見せて、それを指にはめた。そして別のかけらを
拾って灯台の明かりに合わせて光を彼女の指元に当てた。見るとそれ
は宝石のようなきらめきを放った。はぐみちゃんは驚き、うっとりと
その光を見つめた。

 一方僕は何とか指輪を見つけ出した。これで彼女も喜ぶと思い、聖
火ランナーのように指輪を掲げて彼女の元に急いだ。
「ねえ、指輪見つかっ」
 僕は声をかけようとして立ちすくんだ。僕の目に入ってきたのは、
彼女にキスをする森田さんの姿だった。
「東京じゃボーっとしているとチューされちゃうんだぞ」
 驚いて言葉が出ないはぐみちゃんを見つめながら森田さんがいつも
のいたずらっぽい笑みを浮かべていた。

 それはショックとかその程度の言葉では表現できない光景だった。
指輪を高々と掲げた僕の手が支えを失ったように急降下した。


寸  評  前回同様コメディタッチのシーンとシリアスタッチのシーンがか
み合ってない感じを受けたため、ちぐはぐな感じがしました。福引の
話と海の話の関連性が弱いのではないかということです。ですので持
ち味の切なさがコメディで茶化されたような印象を受けてしまうので
す。
 またところどころに切なかったり、心優しくなったりするシーンが
見られるのですが、伏線が効果的でないせいかいま一つ物足りない気
がします。たぶん原作を知っている人にしてみればそういうことはな
いのでしょうけれど。あゆみが真山を好きになったきっかけは?はぐ
みのキャラクター設定、田舎育ちで周りが心配しているけど、本人に
そんなところがなく見える矛盾はなぜ?美大が舞台である必然性は?
とか原作を知らないで見ていると話に移入するための前段階がうまく
消化できてない状態です。面白みを感じるにはもう少し時間がかかり
そうです。

執 筆 者 けん()

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2. 編集後記
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 ここのところ急速に寒さが冷え込んできました。私の部屋は狭いのですが、
寒がりということもあって暖房の温度を最大にしても部屋が暖まりません。そ
こでカーテンを買って二重にしたり、シーツをフラノ生地にしたりするなど冷
え込み対策をしてしのいでます。それでも設定温度を最大にしないと耐えられ
ません。(けん)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv/
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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