黒川先生は非常にわかりやすい言葉で語り、視覚に働きかける美しいスライドを用い、聴衆を沸かせる、生き生きとした事例も加えて、逆光の美、向こうへの期待、偶然性など17のポイントについて、彼の「デザインの修辞法」という壮大で絢爛な絵巻物を繰り広げてみせてくれた。そしてデザインという独特な文化の創造が、人文思想と精神の融合にまで昇華し、学生たちの心にしみこんだのである。
古代人が手で水をすくって飲み、地面に物を置いたことから、デザインの最初の形態が引き出せる。――創造は本能から生まれたのだ。黒川先生は例を挙げる。昔、川辺に住む人が水を飲む場合、手ですくう必要があった。彼のおばあさんが水を飲みたがったら、水を運んでいって指の間からこぼして飲ませた。これが最も原始的な茶碗誕生の「原点」である。時代の発展に伴って、コンピュータが様々な企画やデザインを行えるようになり、人々の生活は大きく進歩したが、人が本来できることを決して忘れてはならない。なぜなら、デザインは我々の身体に影響を与えるものだからである。
一人の女性が開かれた大きな窓の前に立
ち、陽光が差し込んできている。我々に見えるのは女性の輪郭の曲線で、非常に人をひきつける美しさがある。黒川先生は、逆光には多くの要素が含まれ、我々にとって一目瞭然ではないために、その特殊な美感が生まれるのだと考えている。デザインにおいては、こうした優れた点を融合してぼんやりとした美しさを作り出すことができる。デザイナーは日常生活における様々な美を探し出せなければならず、デザインされた物は、それを見た人がさらに創作をしたり想像したりする余地を与え、感動させることができなけれ
ばならないのである。
黒川先生の父親が昔、仲人と一緒に相手の女性の家に行ったとき、女性に対する印象は悪くなかったが、帰りに靴を履いたときに靴ひもが切れてしまった。こんな重要な日になぜ靴ひもが切れたのか?この結婚はよくないのだろうか?その後、父親はこの見合いを断り、別の女性と結婚したが、それが黒川先生の母親だった。彼は、もしそのときに靴ひもが切れなかったら、ここで講演しているのは私ではなかっただろうと笑いながら言う。人生には偶然性が溢れており、デザイナーはこうした偶然性を大切にしなければならない。適切な偶然性意識があれば、創作にとって非常に有益である。 |