アートにパラダイスを求めて
共に東大阪市の出身で、京都市立芸術大学を卒業した林泰彦さんと中野裕介さんは、2001年にアートユニットを結成した。そして2003年にはユニット名を「パラモデル」(パラダイス+プラモデル)とし、プラレール、ミニカー、プラモデルなどを用いたインスタレーションや、絵画、写真、立体、映像など、様々な創作活動を行っている。最近は、個展「ぼくらプラント建設」を開催し、「『森』としての絵画」、「itineraire遊びの経路」などの展覧会にも出品し、9月末には、北京と広州で行われた「美麗新世界:当代日本視覚文化」に参加して注目を浴びた。また、横浜と神戸で行われた「都市との対話」でも、大いに注目された。
彼らにとって「パラダイス」は夢のような桃源郷だけを意味するものではなく、温泉につかるなどの日常の幸せな時間も含んでいる。浴衣で砂丘に立つ女性、広場で鹿とたわむれる子供、温泉に大勢の男女を配するなどの作品は、日本の観光名所を思い出させる。また、お酒のポスターのように「極楽酒」を持って浴衣姿の女性が岩場に坐っている写真は、おじさんが居酒屋で若い女性のポスターと向かい合ってお酒を飲むときの、極楽気分を連想させる。
「パラモデリック・グラフィティ」では、子供時代に夢中になったような「ごっこ遊び」を再現している。青いプラスチックの玩具のレールが流水、樹木、滝、雲などのように床から壁、棚へと家中に広がり、遊びが持つ特有の楽しさに溢れている。この作品には約1万個のレール部品が使用され、あちこちにミニカーや模型飛行機や砂丘が配置され、ジオラマか巨大な箱庭のような情景を作り出し、流れが湧き出すようなラインが見る者の視覚を刺激する。
「パラモデル」の作品は、一見無機質に見えるが、実は都市の存在に関わる非常に複雑で、奥深いものを持っている。その興味深いところは、参加者の感覚を取り込んでしまうことだ。創造と発明が個人の限界を超え、遊びの場所を通じて相互的な作用を生み出す。それは延びていくレールをはるかに超えて、幻想のパラダイスに向かって行き、見るものを詩情あふれる世界へと導いてくれるのである。
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