太陽が照りつけ、蝉の声がとても賑やかだ。日本では観測史上初の、連日40度を超える気温を記録し、熱中症のために20人近くの人が亡くなっている。「酷暑による死亡が相次いで発生!」――異常な夏の気温と新聞の過激な見出しが、人々の神経を刺激する。人と会ったときの挨拶も「暑いですね」ばかりになってしまった。
高温は人の情緒を調整する機能に影響を与え、神経系統も調子が悪くなるようだ。軽い場合は頭がぼんやりしたり元気がなくなったりするだけだが、重くなると心拍に問題が生じ、死に至る場合もある。深刻な状況に対して、環境省では熱中症予防情報サイトを開設して、47都道府県の熱中症危険度を5つのレベルで予測し、対応方法と関連情報を提供している。ビジネスチャンスに敏感なメーカーでは「熱中飴」や「瞬間冷却パック」などという変わった商品を売り出し、テレビやラジオでは、麦茶や梅干やスポーツドリンクをたくさんとってこの厳しい夏を乗り切るようにと呼びかけている。
よく考えてみると、これらの「対策」は「体の熱中症」に偏っていて、「心の熱中症」を見過ごしている。現代医学では、人は興奮するとアドレナリンの分泌が増加して体温が上昇するということがわかっている。したがって炎暑の日には、心を平静に保つことが特に重要で、決していらいらしたり腹を立てたりしてはならず、自分が穏やかでいられるように努めるべきなのである。また飲食では、さっぱりしたものを食べて、脂っこいものや辛いものは避けたほうがいい。仕事や勉強で忙しく、緊張を強いられる現代人にとって、心身の調子を整えることは非常に大切なのだ。
なかなか眠れないときは、気楽な音楽を聴きながら風呂に入って、優雅でのんびりした気持ちでくつろぐのもいい。あるいはゆっくりと読書を楽しみ、静かな時間の中で心の洗濯をするのもよい。もちろん、静かに坐って目を閉じ、心を青い海や銀色の砂、緑の草原へと飛翔させ、心に涼しい風をもたらすのもいいだろう。朝日と共に早く起きて、木々の茂った公園や森を散歩したり、夜になったら、川や湖の岸をそよ風に吹かれながらそぞろ歩いたりすることもできる。
雪山が険しくそびえ、渓流がさらさらと流れる世界遺産、麗江の街に行ったときに買った素朴な茶碗には、どの文字から読んでも意味深長な「心静自然涼」(心が静かなら自然に涼しく感じる)という中国の諺が書いてあった。この言葉には、昔の中国の天人合一の思想(人と自然は一つだとする思想)が含まれている。酷暑を避けることも、酷暑から隠れることもできないし、高温は心をいらいらさせ、眠るのが難しくなる。「心静自然涼」は、慌しい時代に暮らす我々が煩わしいことにいらいらしたり、頭がぼうっとして決断できなかったりしたときに、自分の心を調節する最良の心理的暗示であり、この炎暑の夏を乗り切るための清涼剤なのである。
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