情趣に満ちた銅版画
去年の9月、東京メトロすべての地下鉄駅構内にこのような目を惹くポスターが出現した。
草花の模様を背景に憂いをたたえた少女がうつむいている姿は、まるで自分の心から湧き出る想いに耳を傾けているようだ。…この美しいコンサートのポスターに、周囲を行きかう人々はみな足を止めてひとしきり鑑賞し、言葉にしがたい情趣に心が共鳴するのを感じていた。
このポスターに起用された作品の題名は「Goodbye To Romance」。若い銅版画家・岡本玄介の作品で、好評だったので、その直後にはプリペイド式乗車券(パスネット)の起用も決定し、30万枚発行された。
岡本玄介はロサンゼルスシティカレッジの平面デザイン科を卒業し、在学時より銅版画制作を始めて10年あまりになる。彼は酸液を使ったエッチングを用いて、絵の中の人物に呼び掛けたら画面の外に出てきてしまいそうな生き生きとした作品を創り出す。
岡本氏の版画は多くが女性(特に西洋の女性)を題材としており、これは版画界では非常に珍しい。「美しい風景を絵にすることができるのなら、女性を銅版画の主人公にしてもいいでしょう。私は、女性が世界で最も美しい創造物だと考え、特に西洋の女性は古代ギリシャ彫刻のようで、絵にすると非常に立体感があるので私の画風に合っています。」と岡本は言う。
岡本氏は優れた国際人でもあり、日々銅版画技術の研鑽を積むと同時に、東京、ニューヨーク、プラハ、上海、杭州、天津などで積極的な個展や団体展開催・参加で大成功を収め、その作品は国内外で益々注目されている。(劉詩音執筆)
【岡本玄介の代表作】
●「Day dream」岡本の版画作品の原点。和服を着た舞妓が縁側に座り、庭先を眺めながら夢想にふける夏の午後を描く(下の画像の左)。
●「Desire For New Days」全作品中で最も評価が高い一枚。アジア的なレース模様で女性の柔らかな美を表現し、女性は落ち着いた表情で揺ぎない視線を見せている。セピア色の画面は古い写真のようで、濃厚なノスタルジーを感じさせる(一番上の画像の左)。
●「Goodbye To Romance1」評判を呼び、パスネットにもなったコンサートのポスターの元作品(一番上の画像の右・二番目の画像の下)。
●「Gone With The Wind」雲が柔らかくなびく秋の日の北京を舞台に、少女が遥か遠くを眺めている情景である(三番目の画像の上)。 |