メルマガ:toxandoriaの日記
タイトル:希望のトポス]福島知事選・自民敗退に見る本格的な「ロングテール時代」の予感  2006/11/13


[希望のトポス]福島知事選・自民敗退に見る本格的な「ロングテール時代」
の予感
2006.11.13

f:id:toxandoria:20061113072842j:image
“疑問犬”のひとりごと  『ネーッ 選挙リテラシーってないの?』

<注>お手数ですが、画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20061113

《自・公推薦候補の敗退=“野党共闘+草の根”型・選挙運動の勝利》

土木関連の発注工事をめぐる談合事件による知事の辞職(逮捕)に伴って行わ
れた福島県の出直し知事選(11月12日、投開票)で、民主党・社民党推薦の
佐藤雄平氏(前参院議員)が、自民党・公明党推薦の森雅子氏(弁護士)らを
破り大差で初当選しました(参照、asahi.com、http://www.asahi.com/politic
s/update/1112/002.html )。

佐藤氏は民主党の渡部恒三最高顧問(旧自民党)の秘書を長く務めた人物で、
今回は渡部氏からの強い要請を受けて参院議員を辞めて立候補したという経緯
があり、出身地の会津地方を中心に商工会、建設業界、農協などとの繋がりが
かなり深いようです。従って、見方によっては、旧自民党時代の渡部氏の地盤
から票を集めて勝利したと見做すことができそうです。より厳しく見れば、今
回の福島県知事選挙は“旧い腐れ縁”の奪い合いの勝利だったと見做すことも
できそうです。

しかし、一方で注目すべきは、社民党の推薦も受けて野党共闘の形が実現した
上で佐藤氏が無党派層へ強くアピールしたという動きがあったことです。恐ら
く、その結果として投票率は前回(2004年)の50.76%→58.77%へ
大幅(+8.01%)に上がりました。これは、その選挙の「有意性」(この投票結
果が全有権者が投票した場合の結果に殆んど重なるという意味)を統計理論的
にほぼ実証したと見做すことが可能です。やはり、選挙(又はアンケート調
査)では、およそ60%以上の「投票率」(アンケートでは回収率)が確保できれ
ば、それは民意を映した正当な選挙結果だと考えてよさそうです。

また、このニュースに続き、同じ12日に投票が行われた熊本市長選挙でも無所
属で現職の幸山政史氏が、自民党・公明党推薦の佐藤達三氏らを破って当選し
たことが報じられています(参照、kumanichi.com、http://kumanichi.com/new
s/local/index.cfm?id=20061113200002&cid=main)。ここでも、無所属の幸山
氏は無所属層へ強くアピールする“草の根型”の選挙運動を行い、それが成功
したようです。

《ロングテール効果=草の根型民主主義時代への予感》

「ロングテール効果」(ロングテールの原義は長い尻尾)とは、今回のアメリ
カの中間選挙でも“草の根民主主義型”選挙の部分的な下支えとなり、民主党
に大勝利をもたらすことに大いに貢献したと考えられる、インターネットがも
たらすユニークな効果のことです。具体的に言えば、それはブログなどの繋が
りを介して「企業と個人、個人と個人、あるいは個人と情報(個々の人々や少
数派のニーズ、意見、批判など)との繋がり」を爆発的に拡大できる、インタ
ーネット特有の刮目すべき能力のことです。

実は、我が国のビジネスの場面では、このインターネットの能力を既に活用し
た実績があります。これについては、過去の記事(http://d.hatena.ne.jp/tox
andoria/20061111)の中から関連部分を下に転載しておきますので、参照して
ください。

『・・・このようなアメリカにおける“草の根民主主義”の復活傾向(少数意
見や多様な意見を反映して、選挙民の投票行動の流動化を図りつつ健全な批判
力を活性化すること)には「新しいインターネット機能の利用の仕方」が影響
した可能性もあると思われます。つまり、アマゾン・ドットコム、Kinokuniy
a・BookWebなど(ネット書店・各社)の成功をもたらしたと同じ“ロングテー
ル現象”の大きな効果です。『Google、既存のビジネスを破壊する』(文春新
書)の著者・佐々木俊尚氏によれば、これらのネット書店では“約230万点にも
及ぶ膨大な量の書籍(=普通は殆んど無視されているような類の本、いわゆる
マイナーな類の本)が描く「高さ1ミリ以下で10km近くも続くグラフ上のロ
ングテール(超長い尻尾)を積分すると、店頭での売れ筋の本の販売量を凌駕
するという(奇跡的な?)現象が起こっている”(同書、p131〜132より引
用)ようです。このような意味で、我が国のブログについても、その利用方法
の工夫・改善次第では、日本の選挙民の投票行動の流動化を図りつつ、彼らの
健全な批判力を活性化することに貢献する可能性があります。従って、日本で
も、このように「ヤラセ、カラクリ」とは無関係なネット活用の健全な方向性
の研究を急ぐべきだと思います。

他方、特に小泉政権時代に話題となったメールマガジンの利用については疑問
符がつきます。今、安倍政権下ではタウンミーティング関連の「ヤラセ問題」
にかかわる不始末の露顕が際限なく拡大しており、まことに驚くべきことに、
その裾野は小泉政権時代へ遡りつつ先がが見えない状態となっています。例え
ば、11月11日付・読売新聞(ネット記事)によると、今年の5月(小泉政権
時代)に札幌市で「再チャレンジ」をテーマに行われたタウンミーティングで
も、内閣府が北海道庁を通じて参加者に質問を依頼していたことが明らかにな
りました。この記事は“教育改革以外の分野で質問依頼が判明したのは初めて
で問題は拡大の様相を見せてきた”と報じています(詳細は下記URL★を参
照)。このあり様では、小泉政権時代に行われた郵政改革、道路公団改革等の
基礎資料とデータの悉くが疑われても仕方がないと思われます。例えば、一
時、「小泉メールマガジン」の配信登録数が400万件以上にも達したとされ大変
な話題となり、それとともに小泉政権支持の熱狂が湧き立ちましたが、今にな
って思えば、このような数字も眉につばをつける必要があるようです。このよ
うなネット絡みの巨大な数字は、いわば一種の“囲い込み効果”を狙ったもの
と思われますが、この種のネット絡みのゲタ履き操作も、ヤラセ的ネットアン
ケート調査やリンクファーム立ち上げ(擬装HPの開設、サクラ読者の総動員)
などの手法を使えば不可能ではないと思われます(参照/関連記事、http://d.h
atena.ne.jp/toxandoria/20061108)。・・・』

ところで、「日本の推計人口、有権者総数、インターネット人口」などを概数
で推計すると下記(1)〜(4)のとおりです。

(1)日本の推計人口=1.277億人
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/tsuki/index.htm

(2)日本の有権者数=約1億人(全国民の約78%)
http://www.soumu.go.jp/senkyo/010729/010729e.html

(3)日本のインターネット人口=約0.8億人(全国民の約63%)
http://journal.mycom.co.jp/news/2004/04/14/008.html

(4)同上の有権者換算人口(概算、推計)=約6,200万人
・・・0.78×0.8億人=0.624

以上から、日本の有権者総数の約6割の人々がインターネット人口に重なって
いることが窺えます。言い換えれば、これは日本の有権者の約6割を占める人々
が、ネットによる「ロングテール効果」の影響を受ける可能性がある時代に入
ったということです。しかも、この傾向はGoogleなどの検索機能の一層の向
上、ブログ等の簡便なネットツールの普及、およびその機能の一層の向上とと
もに、「ロングテール効果」の影響は高まるばかりとなっているようです。

つまり、これからの時代は選挙の立候補者、政府・政党・政治家などが、ます
ますネット上での少数意見や批判勢力を無視できなくなることを意味します。
従って、このような傾向は、日本でも“草の根民主主義の時代”が到来するこ
とを予感させると言えるかも知れません。それは、少数意見や多様な意見を反
映して、選挙民の投票行動の流動化を図りつつ健全な批判力を活性化すること
に繋がるかも知れません。

メルマガ、掲示板、ブログ等のネットツールの活用については、政府の悪い事
例に見られるような“ヤラセや世論誘導のツールとしての利用”、“悪徳アフ
ェリエイト・ビジネス”、あるいは“迷惑メール上に溢れている詐欺・美人局
(つつもたせ)等の擬装犯罪”などへ直結するリスクも大いにありますが、こ
れからの時代は「ロングテール効果」の影響のようなプラス面も積極的に評価
することがますます重要になります。より適切な「情報リテラシー」が求めら
れる所以です。

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