街にはいつの間にかクリスマスツリーが登場し、デパートやスーパーでは「年末大バーゲン」の表示を見かけるようになって、また一年が終わろうとしているのに気がついた。心の中で月日の過ぎるのは早いものだと慨嘆すると共に、年末年始には一年がんばった自分に「ご褒美」をあげようかという考えが浮かんだ。
今年の休暇には、できれば、長い間心の中にあった希望を実現したい。それは「青春18切符」で日本を旅することである。
十八年前初めてその名前を聞いたとき、青春時代の若者だけが使える特権だと思い込んでいた。だが、よく調べてみると、年齢、性別、資格などにかかわらず、誰でも自由に使って日本を周遊できるすばらしい切符であることがわかった。一日たった2300円で、日本全国を旅することができる。東京から大阪、広島、博多、金沢、仙台……どこに行っても一律同額だ。
航空券には「国内線一万円均一」などという信じがたいサービスも登場しているが、冷静に考えてみると、燃料高騰の影響さえなかったら最近の飛行機は格安と言えるのかもしれない。だが、それも「青春18切符」にはかなわないだろう。新幹線や高速バスも決して安くはないし、自分で車やバイクを運転して五百キロも走れば、ガソリン代だけでこの値段を超えてしまう。
漂泊の旅人にとって、「青春18切符」の魅力は、降りたい駅で降りることができ、また別の列車に乗り換えることができるという点にもある。名物を味わって、お土産を買って、名所を巡って、温泉を楽しんで……あれこれ楽しむことができて実に嬉しい。ツアーに参加したならば、飛行機や新幹線やバスに乗って目的地に直行し、予約したホテルに泊まり、決められた土産物店に連れていかれ、また家にまっすぐ家に帰るという「固定移動式」の旅になり、「自由自在」の爽快感や楽しさを味わうことは不可能だ。
今年の休暇には、できれば、長い間心の中にあった希望を実現したい。それは「青春18切符」で日本を旅することである。 |