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[民主主義の危機]『低投票率』と『民主主義の品位の放棄』を看過するメディ アの異常(修正版) 2006.10.25 ●若干の修正箇所がありましたので、再送信しておきます。大筋に変わりはあ りません。 (主な修正個所) 表題 「肯定する」 → 「看過する」 記事内容 「評価」→ 「支持」 (複数箇所) その他 (文章がネジレた部分) ・・・・・ 【異常な低得票率で「衆院2補選=自民完勝!」、これが、そんなに“ご同慶 の至り”なのか?】 2006.10.23付の各紙朝刊は「衆院2補選=自民完勝!」の大きな活字が躍って います。しかし、その余りにも低過ぎる投票率を考えると、<このようなメデ ィアの報道>そのものが実に怪しげなものに見えてきます。 読売新聞によれば、[投票率は神奈川16区が47.16%、大阪9区が52.15%]で、 各陣営の得票数は下のとおり(ただし、有権者総数は逆算で算出した概数)で す 。 ◇神奈川16区(投票率47.16%、有権者数423,614/昨年9月の前回衆院 選の投票率は64.77%) 当109,464 亀井善太郎自新〈公〉80,450 後藤祐一 民新〈国〉 9,862 笠木 隆 共新 得票数合計199,776 ◇大阪9区(投票率52.15%、有権者数393,910/昨年9月の前回衆院選の 投票率は67.56%) 当111,226 原田憲治 自新〈公〉92,424 大谷 信盛 民元 〈国〉17,774 藤木 邦顕 共新 得票数合計205,424 この数字から自民党(各当選者)の得票率を見ると、[神奈川16区=25. 8%、大阪9区=28.2%]です。 つまり、ここから見えるのは各メディアがほめ讃え、与党(自民党+公明党) と政府が自画自賛するように『この補選の勝因は、安倍・新政権の意欲的な政 策が国民一般から高く評価された結果である!』などとするのは到底ムリな屁 理屈に過ぎないと思われることです。 母集団全体からの無作為抽出の完全実施を前提とする統計学上の理屈(60%未満 の有効回答率の場合の調査自体の信頼性の崩壊)を引き合いに出すまでもな く、たまたま、この特異な(異常に低い投票率の)二つの補選で「約四人に対し 一人」程度の支持を得たに過ぎないのに、何故これが全国の投票者を対象にし た場合の圧倒的勝利の反映だと言えるのでしょうか? <注>有効回答率(or有効投票率)が60%未満の場合のアンケート調査(or選 挙)の場合は、その調査(or選挙)の信頼性が著しく低くなることの理論的根 拠については、下記(★)を参照。 ★田村 秀著『データの罠、世論はこうしてつくられる』(集英社新書) それどころか、本日の福島県・(前)佐藤知事の官製談合事件を巡る逮捕劇(選挙 資金絡みの収賄疑惑)や和歌山トンネル談合事件(現在、発火・延焼中?)など の事例で見られるとおり、特に与党がかかわる金権選挙の体質には非常に根深 い病巣(=宿痾)が取り憑いています(これについては、“事実上、カネで選 挙行動を決めることに罪の意識がない一部の日本国民(有権者サイド)”にも 大きな責任がある)。 従って、今回の補選の結果である「約四人に対し一人程度の支持」から金権体 質によるゲタ履きの要因(約1割〜1割5分程度)を差し引けば(この数字は 筆者が傍証を駆使した独断推計)、精々のところ「約五人に対し一人程度の支 持」がいいところではないか、と思われます。 いずれにせよ、このような「日本の選挙の情けない実情=品位(dignity)を失 った日本の民主主義の実態」(異常な低投票率と金権選挙を是認する有権者の 低劣な意識)について疑問を提起し、日本の民主主義に品位を取り戻す必要性 を説き、日本国民一般へ民主主義に関する意識改革を強く訴えることが、ジャ ーナリズムとしての各メディアの本来の仕事の筈ではなかったでしょうか? それどころか、日本のメディア(主に新聞、テレビ)は、このように「品位(d ignity)を失った異常な日本の民主主義の現状」を意識的に政治権力におもね て看過・放置する一方で、日本政府が『美しい国づくり』の名の下に『アセン ブラージュ型監視国家』の道(=強引な共謀罪の導入、教育現場への市場原理 主義の導入など)へ邁進することをむしろ奨励している節があります。 <注>アセンブラージュ型監視国家 :クイーンズ大学(カナダ)のディヴィッド・ライアン教授が示唆する超監視 型社会のモデル。そこでは、国家による直接的な監視とマーケティング(市場 原理主義)的な監視手法とが結びつき、その監視が高度にネットワーク化され るため我われ国民は自分たちが監視されていることさえ気づかないようにな る。詳しくは、下記(◆)を参照。 ◆佐々木俊尚著『グーグル Google、既存のビジネスを破壊する』(文春文庫/p2 32〜p234) |