男の子、女の子、背の高い子、低い子、太った子、痩せた子……32名の「心連心」マークの T シャツを身につけた青春まっただなかの中国人高校生たちが、拍手に迎えられて会場に入ってきた。――国際交流基金の「日中交流センター」が主催し、全日空、ソニー、資生堂が協賛する「中国高校生長期招聘事業」が、輝かしく幕を開けた。
吉林、遼寧、山東、江蘇などの様々な高校からやってきた子どもたちは、それぞれのお国なまりを携えて、よく知ってはいるけれど初めて訪れる日本という島国に集まってきた。この日から、彼らの視線は今までとは全く違う風景に向けられる。彼らはこれから新たな感動を体験し、人生における一つの洗礼を受けることになる。北海道、沖縄、和歌山、千葉、茨城、岡山、埼玉、香川……たくさんの同年齢の仲間の笑顔と、たくさんの異国の両親たちが彼らを待っている。
時間が逆流するように、私の心が過去へとさかのぼり、20年前の忘れがたい情景がよみがえってくる。
中国で大学を出て希望する雑誌社に入ったと思ったら、辺境の山間地区の「貧困の村」に行って一年間の「貧困救済体験」をするように命じられた。寒風が壊れた窓から吹き込んでくる冬の夜、週に一回しか肉を食べられない食生活……だが意外だったのは、純朴な山の民たちと心と心の交流をしていくうちに、あの痩せた土地が何とも不思議な懐かしい場所に思えてきたことだ。今でもその頃のことを夢に見ると、いつまでもそこにいたい思いにさせられる。
自分の年齢の半分にも満たない子どもたちの、未知の世界に対するいっぱいの希望とかすかな戸惑いを浮かべた表情を目の前にして、心の中でつぶやく。
この一年という貴重な時間を大切にしてほしい。自分の目で観察し、思索し、自分の心で感じ、学び取ってほしい。光陰は矢のごとく、一瞬のうちに過ぎていく。君たちも将来ふと振り返って、気づくときがあるだろう。この体験が君たちの人生でどんなに美しい間奏曲であったかを。君たちの人生が、この一年によってどんなに豊かですばらしいものになったかを。 |