六月に入って梅雨が始まってから、何となくだらだらと日を過ごしてしまっている。だが、人々の心の中では、すでに夏の足音がかすかに聞こえている。あと半月もすれば、晴れわたった明るい空がどこまでも広がるようになり、憂鬱な雨の季節も終わりを告げるだろう。
七月の声を聞くと、富士山は山開きの祭りを迎える。日本各地の山小屋も営業を始め、登山客が休息のために訪れるのを待つことになる。全国の海も山も川も、月初めには一斉に開放される。このような風習は、他ではあまり見られない。日本人が自然を大切にすると共に、物事の秩序についてきちんとしていることの表れだろう。
七夕祭りの夜は、ロマンチックな雰囲気が風鈴の音と共に窓辺に漂う。遥かに天の川を見上げながら、老いも若きも願い事を色鮮やかな小さな紙に書き付けて笹にかけ、庭や門口に飾って、夢の成就や日々の平安と健康を祈る。
誰もいない校庭は、夏休みの学校の象徴的風景である。冒険好きの少年たちは森林に分け入り、カブトムシとの出会いを楽しみにしたり、昆虫採集に夢中になったりする。夏の間だけ浜辺に開店する海の家は、色鮮やかな水着と浮き輪を携えた海水浴客を迎える。山盛りに盛られた削り氷に赤(いちご味)や緑(メロン味)のシロップをかけたかき氷も、人気を集める。
夏の日の明るく輝く太陽と共に、日本の優雅な風習もその美しい姿を見せる。お世話になった人々に送る書中見舞いのために、郵便局は夏の風物を描いた絵葉書を一斉に売り出す。ネットの普及した今日では、若い人を中心に電子メールを交わすのが主流となっているが、形式は変わっても便りを出す人々の気持ちは、時代の変遷によって変わることはない。 |