日本列島が梅雨に支配されて、憂鬱な空気に息が詰まりそうな日は、やっぱり外に出かけるのがいちばんだ。
色鮮やかな傘をさして、降り続く雨のカーテンをくぐり抜け、流行ファッションの発信地渋谷へ、今いちばんの新鮮な情報を探しに行こう。
ハチ公の交差点は、一回の青信号で300人以上が横断する「超過密地帯」である。しかし、ここでのわずか1分30秒の信号待ち時間に、若者たちはロマンチックなドラマを繰り広げてくれる。
「あの女の子は男の子の手をしっかり握っているね。あ、見て、キスしてるよ!」
信号を待っている間にキス?! みんなが見ているのに、恥ずかしくないの?
記者の質問に、女性が答える。「私が何をしたかって?もう忘れたわ。」男性が言う。「他の人なんか気にしてない。それに、誰も見てないよ。」
こちらで質問している間にも、あちらではまた他のカップルが……男性が女性の肩を抱いて頭を低くして……傘の下で熱いキスを交わしている。
「電車でキスをするのは恥ずかしいけど、ここなら気にならない。」(女性)
「若者のすることだから、みんな許してくれる。」(男性)
「みんなの見ている前で仲良くするのは、喧嘩するよりいいわよ。」(通りすがりの女性)
だが、このような「開放的」な行動を誰も気にかけないわけではない。数人の中年サラリーマンたちは、かなり反感を持っているようだった。「本当に、ますますだらしなくなったな!」
冷たい目で見られても、悪口を言われても、若者たちは我関せずといった風情だ。正午の渋谷駅前の交差点を行きかう人の流れの中で、一組のカップルが横断歩道の上でしっかり抱き合ってキスをしていたが、なかなか離れがたいようで...。青信号が点滅して時間ですよと催促しているのに。
ああ、この悩ましい初夏、ほほえましい気持ちにさせられる初夏である。
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