メルマガ:クラシカルMIDIマガジン
タイトル:【vol.65】クラシカルMIDIマガジン06/06/1619:33Fri5〜なにがなんでもクラシック♪〜  2006/06/16


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■■■◆                           ◆■■■
■■◆ ク┃ラ┃シ┃カ┃ル┃M┃I┃D┃I┃マ┃ガ┃ジ┃ン┃  ◆■■
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◆   −−[vol.257] 2006.06.17 −♪なにがなんでもクラシック♪   ◆

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┃┌─────┐┃
┃│CLASSICAL │┃【1】クラシカルMIDI 新着紹介         【 15 曲 】
┃│ MIDI.NET │┃【2】クラシカルMIDI リング ニュース     【  2 件 】
┃└─────┘┃【3】渡辺純一のCDお気楽レビュ〜
┗━━━━━━━┛【4】おしらせ&編集後記
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  ♪♪♪♪♪♪     音楽&MIDIニュース     ♪♪♪♪♪

  NHK交響楽団正指揮者を務め、世界的に活躍した指揮者で 日本芸術院会員の
岩城宏之(いわき・ひろゆき)さんが13日午前零時20分、心不全のため東京都内
で死去した。73歳。東京都出身。葬儀・告別式の日取り、喪主は未定。 

 1956年、N響の特別公演でデビュー。60年のN響世界一周ツアーに同行して
国際的に注目された。60年代半ば以降、ベルリン・フィルやウィーン・フィルを
指揮して世界の一流に仲間入り。 
 オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督、札幌交響楽団桂冠指揮者などを
務めた。 
 サントリー音楽賞、紫綬褒章などを受けている。 
  去年の大晦日ではサントリーホールで前人未到のベートーベン交響曲全曲
連続演奏を10時間で達成、大いなる喝采を浴びる。 

4月にステージに立ったのが最後で、肺癌等多臓器癌で闘病を余儀無くされていた。 


どうぞ安らかに………


合掌。

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◆◆【1】◆◆ クラシカルMIDI 新着紹介  6/09〜6/15 15 曲 ◆◆

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┃ 交 響 曲   ┠──────────────────────┤03│
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 ◆ 交響曲 第8番 ハ短調                           A.ブルックナー  MP3

  [交響曲][コピー][複数曲 部分][B] (2006/06/13)
  [掲載] デジタル マエストロ 安藤都和 [作者] アンドウトワ
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4707&UserNum=4113
  GIGASTUDIO制作によるmp3ファイルです。第1楽章掲載。(この曲は無料ダウ
   ンロードできます)
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 ◆交響曲第1番 ニ長調 『巨人』(改訂版) 
                        グスタフ・マーラー SC-8850 MU-90 MP3 GS,XG,MP3

  [交響曲][コピー][複数曲 全曲][M] (2006/06/10)
  [掲載] VIRTUAL SYMPHONY ORCHESTRA [作者] 小坂”たれしゃん”智裕
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4670&UserNum=3133
  マーラーチクルス第3弾、今回は『巨人』を取り上げました。第4楽章完成、
   全曲揃いました。
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 ◆交響曲第7番イ長調作品92           L.van.ベートーべン SC8820 GS,MP3

  [交響曲][コピー][複数曲 部分][B] (2006/06/09)
  [掲載] ホルンオヤジのクラシックミディ [作者] ホルンオヤジ
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4682&UserNum=3108
  ベートーヴェンの交響曲7番第1、第2楽章に続き第3楽章をUPしました。
   SMFとSC8820で再生したMP3です。

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┃ 管 弦 楽 曲  ┠──────────────────────┤01│
┗━━━━━━━━┛                      └─┘

 ◆パバーヌ                                           G.フォーレ  MP3

  [管弦楽曲][コピー][単一曲 全曲][F] (2006/06/12)
  [掲載] DTMコンサート・スクエア [作者] プレスト
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4706&UserNum=4069
  合唱はありません。サンプラーに「歌わせる」こともできる時代ではありま
   すが。

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┃  協 奏 曲   ┠──────────────────────┤01│
┗━━━━━━━━┛                      └─┘

 ◆ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33 
                               P.I.チャイコフスキー SC-8850 MP3 GS,MP3

  [協奏曲][コピー][複数曲 部分][T] (2006/06/11)
  [掲載] VIRTUAL SYMPHONY ORCHESTRA [作者] 小坂”たれしゃん”智裕
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4701&UserNum=3133
  ドボルザークのチェロ協奏曲と共に大変親しみ易い曲です。チェロ独奏と
   管弦楽の為の作品ですので、ジャンルを『協奏曲』としました。主題提示部
   〜第1変奏までアップしました。徐々に追加します。

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┃ 室 内 楽 曲   ┠──────────────────────┤01│
┗━━━━━━━━┛                      └─┘

 ◆愛の歌                                            F.ドップラー  GM

  [室内楽曲][コピー][単一曲 全曲][D] (2006/06/15)
  [掲載] Hale's MIDI express [作者] ヘイル
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4709&UserNum=4047
  愛ゆえの苦しさ、やるせなさを切々と歌い上げます。

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┃ 鍵 盤 曲    ┠──────────────────────┤03│
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 ◆ニーベルングの指環                               R.ワーグナー  MP3

  [鍵盤曲][アレンジ][複数曲 部分][W] (2006/06/15)
  [掲載] あそびの音楽館 [作者] Jun-T
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4008&UserNum=4053
  古今のオペラの中で最大規模を誇るこの曲からいくつかの部分を抜粋して2
   台ピアノ用に編曲してみようという無謀な試みです。今回は『ワルキューレ』
   から『ブリュンヒルデの決意』をアップしました!
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 ◆謝肉祭 Op.9                                   R.シューマン XG系 GM

  [鍵盤曲][コピー][複数曲 部分][S] (2006/06/12)
  [掲載] Andante comodo -音の住む館- [作者] 塩まぶし
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4624&UserNum=4029
  オイゼビウス、フロレスタン、コケット、応答(レプリーク)をアップしま
   した。フロレスタンとコケットは、1ファイルの連続演奏です。
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 ◆ピアノソナタ K.279 ハ長調                    W.A.モーツァルト  GM

  [鍵盤曲][コピー][複数曲 全曲][M] (2006/06/12)
  [掲載] Ueno's MIDI Room [作者] ueno
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4702&UserNum=3035

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┃ 歌    劇 ┠──────────────────────┤01│
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 ◆歌劇「トゥーランドット」より 誰も寝てはならない 
                                          G.プッチーニ SC8820,GM GM,GS

  [歌劇][アレンジ][部分][P] (2006/06/10)
  [掲載] ベーシストの休日 [作者] じゅうさん
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4700&UserNum=3146
  曲名は「イナバウアー」ではありませんが、今年の冬突如日本では大ヒット
   した曲です。

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┃ 宗 教 曲   ┠──────────────────────┤01│
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 ◆エルサレム                       ヒューバート・パリー SC-88 GS,MP3

  [宗教曲][コピー][単一曲 全曲][P] (2006/06/10)
  [掲載] 中世以外の音楽のまうかめ堂 [作者] まうかめ堂
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4699&UserNum=4072
  英国夏の音楽祭りプロムスでお馴染みの、あるいはちょっと古いですが70年
   代はじめにプログレバンドエマーソン・レイク&パーマーが取り上げたこと
   でも有名なパリーの『エルサレム』です。

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┃ オルゴール   ┠──────────────────────┤03│
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 ◆ラグリマ                                        タルレガ GM音源 GM

  [オルゴール][コピー][単一曲 全曲][T] (2006/06/15)
  [掲載] フリーファンタジーMIDI館 [作者] コバちゃん
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4708&UserNum=4114
  La grima(涙)は アルハンブラで有名なF.タルレガの愛すべき小作品です。
   一音一音に心を込めて 親しみ易いオルゴール音色でお楽しみください♪
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 ◆歌劇「ジャンニ・スキッキ」より私のお父さん    プッチーニ MU2000 GM

  [オルゴール][アレンジ][部分][P] (2006/06/12)
  [掲載] のほほんむじーく [作者] たれぱんだ
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4704&UserNum=3068
  父の日が近いので、ちょっとこういうのもありかと思い、編曲してみました。
   ハ長調にしたので、ミミコピしてピアノで演奏して欲しいですね。
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 ◆歌劇「トゥーランドット」より誰も寝てはならぬ  プッチーニ MU2000 GM

  [オルゴール][アレンジ][部分][P] (2006/06/12)
  [掲載] のほほんむじーく [作者] たれぱんだ
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4703&UserNum=3068
  今頃トリノオリンピックフィギュアの余波を受けて、ちょっと作ってみまし
   た。いい感じで編曲できたと思います。

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┃ そ の 他   ┠──────────────────────┤01│
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 ◆25練習曲全曲                              ブルグミュラー GM音源 GM

  [その他][コピー][複数曲 全曲][B] (2006/06/12)
  [掲載] フリーファンタジーMIDI館 [作者] コバちゃん
  http://classicalmidi.net/db/d.cgi?cmd=j&DataNum=4705&UserNum=4114
  ブルグミュラーの25のエチュード全曲。原曲はピアノですが、ここでは親し
   み易いオルゴール音色を中心に♪ オリジナル・ファンタジーを読みながら
   どうぞ!

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◆◆【2】◆◆ Classical MIDI Ring Member News      2 サイト ◆◆

▼2006.5.26▼
パガニーニによる超絶技巧の世界                  ★新たに参加されました
http://chopinthethird.nobody.jp/
パガニーニのMIDIサイトです。カプリースが24曲全部あります。リストのラ・
カンパネラの原曲のヴァイオリン協奏曲もあります。

▼2006.5.26▼
ベルサウンドMIDI ベルの部屋                 ★新たに参加されました
http://www.geocities.jp/finebell4668/bell_sound_midi_001.htm
シンセサイザー音を主として作ったユニークなサウンドのMIDIで、既存レコード
のコピーではありません。作者が作りたいように勝手に料理して作った音楽です。

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◆◆【3】◆◆ 渡辺純一のCDお気楽レビュ〜 ◆◆

マーラー:《嘆きの歌》 聞き比べ

サイモン・ラトル/バーミンガム市響 [EMI]
リッカルド・シャイー/ベルリン・ドイツ交響楽団 [Decca]
ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管 [DG]
マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ響 [BMG]
ケント・ナガノ/ハレ管 [Erato]

 今回はリクエストにより、マーラーの《嘆きの歌》を取り上げます。

 この作品は、マーラーがまだウィーン音楽院の学生であった 17 歳の頃(1878)
に着手され、1880 年に完成しました。マーラー最初期の作品で知られる《さす
らう若人の歌》は 1883-4 年の作品なので、それよりももっと古い作品であり、
ウィーン音楽院の卒業作品として知られる《ピアノ五重奏曲》と同時期か、
それより古い作品と言えます。

 しかし音楽的な豊かさは既に間違いなくマーラーらしさを帯びており、冒頭
のホルンによる起床ラッパはマーラーらしい三連符を聴かせますし (ウェーバ
ーの影響も感じさせる)、《さすらう若人の歌》の『彼女の青い目が』や第 1 
交響曲の第 3 楽章に聴かれる主題が、ほぼそのまま出現したりします。まあこ
れは、"死への眠り" のモティーフとして後の作品に自己引用したということで
しょう。それだけでなく、マーラーの全作品に特徴的な四度への嗜好性 (ベース
のド・ファ・ド・ファという葬送行進曲はこれでもかというほど出てくる) や、
第2交響曲の第1楽章を思い起こす天上的な弦楽アンサンブル、ワーグナーからの
息吹を伝える舞台裏の活用と第3交響曲や第7交響曲の1楽章コーダにあるような
祝祭的でド派手な音楽など、枚挙に暇がありません。既にタッカのリズムも 16 
分休符が入るマーラーらしいものになっています。スコアを見ていると、見た目
だけでも前期交響曲を彷彿とさせるものです。またワーグナーから影響されたと
思われる部分が、後の作品より色濃く出ているのが面白いですが、さらに未来に
向かって、この作品がシェーンベルクの《グレの歌》やベルクの作品をも想起さ
せるのは興味深いことです。

 この作品はなかなか演奏される機会に恵まれず(1881 年の『ベートーヴェン賞』
応募が最大のチャンスでしたが落選、マーラーは作曲家としてのスタートを切れ
なかった)、指揮者としての名声が確立した 1901 年にようやく自身の指揮で演奏
されました。しかしそれまでの間に何度か改訂の手が入っており、全 3 部のうち
第1部はカット、第2,3 部も手直しされての初演となっています。出版も、初演時
と同じ改訂版の第 2,3 部のみがされております。破棄された第 1 部のスコアは
マーラーの妹ユスティーネが所有していましたが、彼女はウィーン・フィルのコン
サートマスターであるアルノルト・ロゼーと結婚、やがでロゼーの息子アルフレ
ートの手に渡り、彼の手により 1934 年に初演されます。出版は 1973 年にされ、
現在ではこの第 1 部とマーラーが演奏した第 2,3 部を合わせた形で演奏される
のが一般的となっています。

 上記したようにオーケストレーションなどはマーラーらしく聴き応えのあるも
のですが、問題は曲の構成でして、特に第 1 部は単調に聴こえます。それは内容
的にはワーグナー風のオペラのような劇的なものであるにも関わらず、歌曲のよ
うに 6 行詩に合わせるように作曲されており、同じ内容が何度もリフレインされ
るからだと思います。確かにちょっとずつは変化していますが、マーラーらしい
徹底した展開技巧はまだここには無く、オペラのようでいて歌曲のような玉虫色
の据わりの悪さが聴くものの耳を戸惑わすのです。また性格の違う短いブロック
が数珠繋ぎになっており、雰囲気がころころ変わるのも難しくしています。第 2
 部、第 3 部はオペラのような劇的な表現も必要とされます。演奏者には、単調
さを感じさせない劇性とストーリーテラーの巧さが求められるでしょう。
 
 まずは、ラトル/バーミンガム市交響楽団・合唱団、ヘレナ・デーゼ(S)、
アルフレーダ・ホジソン(Ms)、ロバート・ティアー(T)、ション・レー(Br) [EMI].
 1983 年 10 月 12,13 日と 1984 年 6 月 24 日、バーミンガムのタウン・ホール
での収録。良くも悪くもこれは規範的な演奏だと思います。そもそもこの録音が
出るまで 3 部版はおろか《嘆きの歌》自体がほどんど脚光をあびることがなかっ
た訳ですから。ラトルのマーラー特有のスタイリッシュな演奏で、幾分ディティ
ールにデフォルメを加えながらも着実にスコアを描いていきます。特に第 1 部で
は冒頭のホルンの "こだま" に楽譜には無いゲシュトップで吹かせてみたり、
木管だけで弱い部分にトランペットを付け足してみたりと "補強" がされており、
未熟な部分をよりマーラー的な響きへ解決するためのささやかなお色直しも施し
ています。しかし録音の問題もあり音に瑞々しさがなく、全体に貧粗で辛気臭い
雰囲気が漂っているのが難点。まあグリム童話的な怖さや《ヴォツェック》の
ような血生臭さを感じる音と思えなくもないですが。それに優等生的で生真面目
な解釈のため、前記した音楽構成の弱点もはっきり出てしまい、今の耳で聴くと、
どちらかというとつまらない演奏に聴こえてしまいます。しかし才気走った演奏
であることは確かですし、「歌う骨」の劇性も十分。いまもってスタンダードな
演奏として聴けるでしょう。実際にマーラーが書いたものをそのまま表現すると
このラトルの演奏になるのではという思いもあります。

 余談ですが、このラトル盤の日本語解説の曲解説はちょっと酷い。なんでも
かんでもマーラーの家庭の不幸に結びつけたり、《亡き子をしのぶ歌》を「不幸
の予感(あるいは期待)のあらわれ」と運命論に固執する解釈はよく見るからまだ
良いものの(良くはないのですが)、《嘆きの歌》の婚礼の破壊ということが、
初演の時期が近いというだけでなぜかアルマとの結婚に結びつけられて解釈され
ており、婚礼の破壊と「やがて生まれ来る子供の不幸を予感することになる、
この二重の呪縛性が、単なる偶然だけと考えられるものでしょうか」などと結論
付けるのは、あまりにも作品から乖離した "こじつけ" でしかないでしょう。
書いた本人も「アルマに会うおよそ 9 ヶ月前に初演された」と認識しているのに、
それをねじ曲げてまで自分の思いつきに酔っている言質はかなりイタイです。
こんな事さえ書いてなかったら、まとまった良い解説なのに。

 お次はシャイー/ベルリン・ドイツ交響楽団 (ベルリン放送交響楽団)、
デュッセルドルフ国立楽友協会合唱団、スーザン・ダン(S)、ブリギッテ・ファス
ベンダー(Ms)、マルクス・バウアー(Boy alto)、ヴェルナー・ホルヴェク(T)、
アンドレアス・シュミット(B) [Decca]. 1989 年 3 月、ベルリンのイエス=キリ
スト教会にて。ラトルと真逆で骨太な演奏です。お伽話的な怖さや不安感は無く、
徹底的にメルヘン。ゆったりとした曲の運びで物語を紡いでいく語り口です。
奇をてらったような部分が無く、安心して聴ける心地よさがあります。それだけ
に面白みを欠く演奏ですが、こういう硬派な解釈もこの曲の核心を聴き取るため
には必要でしょう。この演奏で特徴的なのは、吟遊詩人の吹く「笛の歌」を
ボーイ・アルトが歌っていることでしょう。この部分は初稿の指示ではボーイ・
アルト(第 3 部ではボーイ・ソプラノも指示されている) になっており、その
効果を取り入れたのではないかと思います。なかなか難しい歌ですが、上手く
歌い上げております。

 シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団、晋友会合唱団、チェリル・ステュー
ダ(S)、ワルトラウド・マイヤー(Ms)、ライナー・ゴールドベルク(T)、トマス・
アレン(Br) [DG]. 1990 年 11 月、東京芸術劇場にてライヴ収録。シノーポリは
録音ではヴァイオリン両翼配置をよく使いますが、これはライヴなので残念なが
らモダン配置となっています。まずシノーポリらしい繊細な響きが心地よい。
第 1 部はポリフォニーの際だたせ方が上手く、オペラやカンタータ的というより
交響曲的な演奏になっており、「マーラー交響曲第 0 番」とでもいうような内容
です。

 特に弟殺害の場面以降の音楽が優れており、オペラ指揮者らしい劇的な表現
です。そういう意味で白眉なのは第 2 部で、普通は浮ついてユーモラスに聴こ
える吟遊詩人の音楽が、冒頭から一貫してもの悲しさが付きまとっていて、まさ
に嘆きの歌となっているのです。さらに後半部分の「歌う骨」から何かに取り憑
かれたのではないかという集中力で、その劇性は第 3 部にまで及びます。
第 3 部も後半に向かうにつれどんどんハイテンションになっていき、マーラーの
作った唯一のオペラとして聴き応え充分、R.シュトラウスをも凌駕してしまうほ
どの異常事態。「ギャーそこまで神経を逆撫でするような音を作らないでくれ〜」
シノーポリも凄いですが、マーラーがこのままオペラ作家になっていたらと思う
と、それこそ鳥肌がたつような、そんな壮絶な演奏です。これをライヴで聴けた
人は、一生の宝ではないでしょうか。

 ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団・合唱団、マリーナ・シャ
グチ(S)、ミッシェル・デ・ヤング(Ms)、トーマス・モーザー(T)、セルゲイ・
レイフェルクス(Br) [BMG]. 1996 年 5 月 29-31 日、6 月 2 日、サンフランシ
スコのデーヴィス・シンフォニー・ホールにてのライヴ録音。もの凄く巧い演奏
です。緩急の付け方が深く、しかも音楽的に適切なため、第 1 部など遅いと思っ
ていたシャイーの演奏よりさらに 2 分以上長いのですが、今までの中で一番きび
きびとした演奏に聴こえます。それに面白い。じっくりと含んで聞かすような語り
口は、まさに童話を聞いているような印象を受けます。

 所々、楽譜にないゲシュトップやスルポンティ・チェロなどの奏法を加えており
効果を出していますが、その中で最大の改変は第 1 部で弟が花を見つけた後に奏
されるホルンのファンファーレがティンパニと共に舞台裏(!)から鳴り響くという
部分でしょう。本来第 1 部には舞台裏の管楽隊の出番はありません。
一応説明すると、花を先に見つけた者が女王と結婚できるというストーリーで、
第3部の婚礼の場では、舞台裏から管楽隊が奏す宴の音楽が鳴り響くというシーン
があるのですが、要するにこのファンファーレも舞台裏から鳴らすことで、第 3 
部の婚礼の場との関連付けがされ、結婚の権利を得たという音楽的な意味を印象
的に深めているのです。ちょっとした工夫ですがこの効果は大きいです。

 シノーポリのような生理に直接訴えてくるような壮絶さは無いですが、音楽的
な表現力は申し分無いですし、バランス感覚の良さやマーラー的な音響の快感
 (第3部開始から約4分ほど続く、マーラーが書いた中でも最も派手で華々しい効果
を持つ "婚礼の音楽" も、滅茶苦茶格好良く決まっています)、なんと言っても
難物な第 1 部が見事なので、万人にお薦めできるディスクです。

 最後はケント・ナガノ/ハレ管弦楽団・合唱団、エヴァ・ウルバノヴァー(S)、
ヤトヴィガ・ラッペ(A)、ハンス・ペーター・ブロホヴィツ(T)、ホーカン・ハー
ゲゴール(B)、テレンス・ウェイ(Boy S)、オットー・ヤウス(Boy A)(ウィーン少
年合唱団のソリスト) [Erato]。1997 年 10 月 8-12 日、マンチェスターのブリ
ッジウォーター・ホールにて収録。このアルバムは初の初稿版による演奏です。
この曲は都合 3 度改訂されており、第 1 部は本格的な改訂前に破棄されたので
現行のものと初稿はほぼ同一ですが、第 2, 3 部がオーケストレーション・レベ
ルでかなり違っており、また歌詞も部分的に変わっていたり、独唱者の担当も変
わっていたりします。

 最大の違いは、第 2 部で吟遊詩人が骨から笛を作ろうと思いつくシーンです。
改訂版でのここは、第 1 交響曲第 3 楽章の練習番号 10 を彷彿とさせるシンコ
ペーションが主体の音楽になっていますが、初稿ではここで舞台裏からトランペッ
トが鳴り響き、しかもハ長調と変ハ長調の複調で 4 拍子と 3 拍子の混在という
斬新でメランコリックな音調、アイヴスを先取りしたような音楽を奏でます。
物語的にも "へそ" になる部分で、この笛が語るであろう物語を暗示し、魔法の
笛を作り出す吟遊詩人の霊感めいた奇怪さも表現されているように思います。
第 1 部のカットと共にこの部分も削られてしまった訳ですが、実に短い部分では
ありますがこの部分の復活は初稿最大のメリットです。

 後は第 3 部の「笛の歌」がボーイ・アルトとボーイ・ソプラノで歌われること。
この歌の性格を際だたせるにはかなり有効ですが、同時にリスクも大きい訳で、
かなり力のある歌手を連れてこなければ成り立たないでしょう。オーケストレー
ションとしては、改訂は第 3 交響曲を手がけていた時期に成されたものなので、
やはり改訂版の方が出来が良いです。改訂版の全 3 部に、第 2 部の舞台裏の
音楽を付け加えるのが理想的ではないかと思います。第 1 部も同時に改訂され
ていれば、まったく言うこと無しなしなんですが。しかしよっぽと聴き込んで
ないとオーケストレーションが弱いとは思わないかもしれません。

 ナガノの演奏は、こちらも素晴らしい。まず低域の厚い録音が音楽的な厚みも
増やしているように思えます。ティルソン・トーマスほど演出的ではないですが、
それでも変化の振幅は大きく、細かなディテールと大きな流れの調和が曲の美し
さを引き立てています。また第 2 部では、オルゲルプンクトのように付きまと
う低弦の細かいターンの動きが、これほどまで脅迫的に響いてくる演奏は初めて
聴きました。第 3 部の「笛の歌」のボーイ・アルトとボーイ・ソプラノは、
なかなか健闘していますが劇的表現としてはあと一歩欲しかったと思います。
ナガノの演奏を聴いて、従来の《嘆きの歌》とは何かが違うとは思うでしょうが、
それが版の違いによるものなのか解釈によるものなのかは、混然としており判断
に難しいものです。それだけユニークな演奏になっていると言えるでしょう。

 初めて聴く人向けにこの中から一枚選ぶなら、ティルソン・トーマスでしょう。
音楽に引き込まれ、こんなに面白いマーラーがまだあったのかという充実感を得
られると思います。ナガノの演奏も初稿版という特殊性抜きにしても十分楽しめる、
聴き応えある演奏です。それでも物足りないという方は、シノーポリのライヴなら
ではの激情的世界へ。

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◆◆【4】◆◆ おしらせ&編集後記 ◆◆

今月に入って、沖縄では雨が降らない日は殆ど無く、地盤沈下や土砂崩れで
マンションが倒壊寸前になってしまったり、お気の毒としか言い様がありませ
ん。お見舞い申し上げる事しか出来ないのがもどかしいです。
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次回発行予定は、6月24日です。

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