アイドルに新しいジャンルが登場した。子供たちにねんどでミニチュアフードを教えるアイドル。ねんど+アイドル=ねんドル!
主に子供向け教育番組でパフォーマンスを行うのでエデュテインメントアーティストというそうだ。ピンクのコスチュームで登場して優しく楽しく粘土細工を教えると、子供たちも大喜び。学校の図工の時間とは全く違う楽しさがあるらしい。なにしろ作るものは本物そっくりだがとても小さなサイズの食べ物の数々なのだ。
作品がずらっと並ぶと、色もリアルに造ってあるので見ていて楽しい。食物そのものだけでなく、皿やどんぶり、寿司の盛台、中華のセイロ等の容器はもちろんのこと、バーベキューの台、焼網、焼きそばのビニール袋まで忠実に作りこんでいる。ついにはミニチュアインスタレーションも創ってしまう。和室のしつらえの建具に濡れ縁、子供用ビニールプールのおかれた芝生の庭の作品は、ちゃぶ台の上の本や、たたみに無造作に散らかった団扇や本や帽子、線香花火まで、なぜか遠い昔を思い出させる懐かしいアイテムが、見る人を子供の頃の夏休みの一こまにタイムスリップさせる。
気の遠くなるような時間と労力と集中力の産物なのだろうが、アーティストの岡田ひとみさんは至って天真爛漫に当たり前のようにニコニコしていた。
グラビアアイドル、バラエティ番組出演などの普通のタレント活動の後、 1 年間のブランクを通して、自分の進むべき道を見つけたという。みんなを本当に楽しませる道、それは、ダイエット中に食べたくても食べられないおいしそうな食べ物を粘土で作っていて、ふと気づいたミニチュアフード作りの楽しさだった。子供たちに小さくて可愛いミニチュアフードを教える事は、誰でも知っている身近な物で想像力が沸いてくる格好の教材となり、ひとつひとつの素材を説明する事は食育にもつながっている。ひとみさんの粘土教室には、子供やそのお母さんたちばかりでなく、可愛いミニチュアが大好きな主婦や OL にも注目されているそうだ。また、ねんど教室で教えるほかに、テレビ番組やイベントでデモンストレーションをしたり、メディアのキャラクター制作で粘土の作品を提供したりしている。
材料の粘土は作るものによって
変わる。普通は樹脂粘土だが、パンやケーキなどは小麦粘土で作り、粘土教室では
子供たちに扱いやすい軽量紙粘土を使う。水彩絵の具を練りこんで色をつけ、小さな
食材を作っては乾かし、作っては乾かしを繰り返し、ボンドで接着してからレジン
(樹脂)でつやを出したり、水を表現したりする。かき氷のような透明なものは、
ビーズを使ったりもする。一つのミニチュアフードが出来上がるのに二日から三日
かかるという。「にんじんは真ん中の芯のところとその周り、さらに皮の部分で微妙に
色が違いますから、色の違う粘土を丸めて 1 本作って、それを輪切りにします」とか、
「握り寿司はとても手が掛かって、例えば、まぐろの筋の色の変化は、色を変えた層を
重ねてブロックにして、それをスライスします」とか、忍耐力がなければ無理な
作業工程を淡々と語る表情には、「アイドル」という軽いイメージのかけらもないが、
それでいて、自分の好きなことを職業にしている明るさがあった。
迷いのない明るい笑顔が印象的な彼女の、今後の活動の抱負は、粘土教室でより多くの人とふれあい、世界中に粘土の楽しさを広めたい、ということだそうだ。今年の夏休み、このねんドルのパイオニアさんと一緒に遊べる子供はどれだけいるか、期待しよう。
風変わりな一面を持つ彼女との一問一答
●趣味は?
―篠笛、能管、三味線、調理、絵画、献血、レポート作成、数える (日本の伝統に興味を持ったから。あと献血ルームでくつろぐ。階段の数や話す相手のまばたきの回数を数えるとか・・・)
●
好きな遊戯施設は?
―ドドンパ(始めからトップスピードのジェットコースター)
●
好きな笑顔は?
―ゆず(アーティストユニット)さんのほっとするような笑顔
●
好きな粉は?
―片栗粉(粘着性があって、なんでもとりあえずまとめてくれるところ
●嫌いな食べ物は?
―ビールゼリー(ほとんど好き嫌いはないのですが、これだけはちょっと・・・)
●今一番やりたいことは?
―チョコボに乗る(ゲームの中に出てくる乗り物)
●今一番欲しいものは?
―孫(子供は好きだけど、自分の子供には厳しくなってしまいそうなので)
●血液型は?
―親戚中全員O型(選んでいるわけではないけれど、友人など周囲の人間はどういうわけかO型が多いです) (西岡珠実インタビュー・執筆) |