平面デザイン、立体構成、絵画や写真、装飾品、ファッション、ゲームキャラクター、音響や映像、パフォーマンスアート……屋外には太陽が輝き、初夏の青空は澄みきって美しい。屋内は多くの人で賑わい、誰もがどこまでも広がるアートの大海を泳ぎまわって、創造の自由と快感を体感している。
先日、東京国際展示場(BIG SIGHT)で、第23回デザイン・フェスタが行われた。この人類の創造の可能性が無限に広がる、半年に一回の世界最大級のアートイベントは、「表現の自由」によって、国籍も肌の色も違う3歳から93歳までの5900人の芸術家を引き寄せ、そこに60000人近くの観客が集まって熱狂した。
どこまでも続く2600個のブースをゆっくり歩きながら見ていくと、視線と思考がさまざまな色や形のアート空間を突き抜けていく思いがする。何物にも縛られない、自由自在な創意と思考に触れていると、心の中に賛嘆と感動の気持ちが溢れてくる。この「創造の喜び」の空間に身を置いていると、魂の深いところから思いがけないインスピレーションの火花がひらめいてくるのだ。
数年前、ある西洋の哲学者の著作を読んだが、その中で、人類というものは生、死、戦、愛の四つの言葉で概括できると述べられていた。前二つは人の生物としての自然な属性であり、後の二つは人類だけに備わった、生に伴う本性である。言い換えれば、人類が存在する限り、戦争と愛情が永遠についてまわるということだ。それでは、どうしたら武器を花束に替えて戦争や紛争を回避することができるのだろうか。スポーツ大会は、戦のエネルギーを転化させる有効な道であろう。ならば、愛情はどうか。人生の喜怒哀楽を左右し、人生の甘さと苦さを調合する根源である愛情についてはどうしたらいいのだろうか。
ビッグ・サイトの巨大な逆三角形の展示場を出たところで、大地に刺さった巨大な鋸(のこぎり)型の彫刻を振り返る。そのときふと悟るものがあった。識者たちが思い悩む「ますます冷酷になる世の風潮」をかかえた現代社会にあって、このようにたくさんの人々を集め、熱狂させ、われを忘れさせるものは、芸術。芸術しかない。
芸術こそ人類の最も高邁な心――愛情の発現であり昇華なのである。 |