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タイトル:[希望のトポス]映画『博士の愛した数式』に見る「清明な日本の風景」(修正版)  2006/03/04


[希望のトポス]映画『博士の愛した数式』に見る「清明な日本の風景」(修正版)
2006.3.4


若干の加除修正がありましたので、再送信します。

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[希望のトポス]映画『博士の愛した数式』に見る「清明な日本の風景」(修正
版)

  信州、上田地方の春の風景が心地よく美しい。スクリーンからまるで本物の
微風が吹いてくるようだ。80分しか記憶が続かない天才数学者(博士)と清楚
な美貌のシングルマザー・杏子(深津絵里)、そしてその息子(齋藤隆成)と
の心温まるコミュニケーションの物語。“わずか80分の温かい心の交流”の
記憶。しかし、翌日にはその記憶が博士(寺尾 聰)の脳裏からすっかりデフ
ォルトされてしてしまう・・・交通事故の後遺症である短期記憶障害に苦しむ
博士・・・吉岡秀隆の語りと回想シーンが物語を静かに紡ぎだしてゆく。

 初めは、シングルマザーの家政婦・杏子にとって困難の連続。博士と同じ言
葉の会話が繰り返される日々。それでも少しずつ博士とのコミュニケーション
が可能となるにつれて、彼女は、博士が語る「素数、友愛数、虚数、オイラー
の公式」などの数や数式に秘められた神秘的な美しさに魅了されていく。やが
て、10歳の息子が一人で留守番していると知った博士は、息子も連れてくるよ
う杏子に約束させる。そして博士は息子がやって来ると彼を√(ルート)と名
づけた。

 杏子が終章で“心の時間は数学の真理と同じで流れ去りません、それは、こ
の胸の中にあるのです、だから今を生きることが大切なのです”と語る。この
言葉が印象的だ。

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●『阿弥陀堂だより』、『雨あがる』などの監督・小泉堯史による「第1回本屋
さん大賞1位」を受賞した小川 洋子の作品を映画化した『博士の愛した数式』
を鑑賞しました。数学をテーマにしながら堅苦しさや難解なところは、まった
くありません。しかも、決して多弁な映画ではなく、どちらかというと寡黙で
あり“優しい眼差し”と“日本の美しい自然の原風景”がコミュニケーション
の主役を演じています。

●小川 洋子の原作にちりばめられている“清明、魂、いつくしむ、敬う、孤
高・・・”などの言葉が見事な“日本の風景の映像美”にデフォルメされ、加
古 隆の流麗な音楽が情感を盛り上げています。

●ここ数ヶ月の間に鑑賞した映画、『蝉しぐれ』
(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051129/p1)と『単騎、千里を走る』
(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060217)にも通じる“日本の原風景”
の映画化です。是非、鑑賞をお勧めしたい作品です。

<『博士の愛した数式』の公式ホームページ>
http://hakase-movie.com/
・・・加古 隆(http://www.takashikako.com

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