チョコレート戦争と愛情の商品化 (シンガポール)符祝慧
バレンタインデーを前にして、日本の大小のショップではチョコレート戦争が始まった。三越デパート前には販売促進のための売場が特設され、写真を撮ってその顔をチョコレートにつけるサービスを行なっていた。一人の少女にインタビューすると、恥ずかしそうに答えた。「自分の顔がついている特別なチョコレートをボーイフレンドに贈って、彼にかじってもらいたいんです。」
よく磨かれたショーウインドウの中には高級な輸入チョコレートが並んでいる。まるで高価なダイヤの指輪のようである。こうした高級チョコレートにはこんな宣伝の文句がついている。「バレンタインデーにどんなチョコレートを彼氏に贈るかで、あなたのセンスが試されます。」チョコレートを買うために店の外に並んでいる少女は、一言こう言った。「彼に世界で一番高価な幸せをあげたくて……」
豊かな生活を手に入れた日本では、バレンタインデーは恋人たちだけのものではない。その範囲は、男女関係から家族に、そしてさらに企業の人間関係にまで広がっている。バレンタインデーの日、日本の会社ではチョコレートの濃厚な香りに、社内の女性たちの優しい心が表現される。心細やかな日本の女子社員たちは、バレンタインデーのために大小のチョコレートの包みを準備する。そして男性の同僚や上司たちにサプライズをもたらすために、それをそっと男性の引き出しの中に入れるのだ。
売っているチョコレートを買ってくるばかりでなく、自作のチョコレートを贈ることも流行している。料理教室でも、バレンタインデーを利用してチョコレートケーキやチョコレート菓子のコースを開く。ある調査によれば日本の男性の約半分が、恋人の手作りのチョコレートをもらうことを期待しているそうだ。それを聞いて、恋を知り始めたばかりの少女たちは、いそいそと作り方の本を買ってきて家でチョコレートを作るのだ。
バレンタインデーにはチョコレートが日本中を席巻することになり、日本の伝統的な菓子類は影が薄くなる。一部の和菓子の会社では今年、バレンタインデーの時期の売れ行きを挽回するために、チョコレートとの戦いを決意した。彼らは売場に次々と様々な和風のバレンタインデー用の菓子を並べる。例えば、ハート型のあんこ入り餅菓子、緑茶チョコレート、女性の初々しさを表現したピンク色の餅などである。
「聯合早報」 より(本編集部で一部削除した)
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