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タイトル:[ep-books] 市場の明日は?僕らの未来は?  2006/01/25


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        edition: 25-Jan-2006

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おはようございます。
発行人しております、shi でございます。

emichanproduction.com
http://www.emichanproduction.com

で、毎週連載中のいろいろなビジネス関連の本を紹介して行きます、本メルマガは
発行人の知識と経験をもとにした、ビジネス本に対する
感想や批評などを、だいぶ言いたい放題に盛りだくさんで進めて
いこうと思っております。

さて、前回の終わりに
「次回は、どうしても紹介しておきたい本、ちゃんと読み直して
紹介します。今の日本の金融の姿の一端は既に見えていたのですよ。。。」
なんて書いてましたが、その本が全然進まないのですよ(泣)

というのも、いつものように浮気性が出てきて、二冊の本をぱっと買って
ぱっと読んでしまって、今回は憤りというかなんていうんだろう、すごくたくさんの
勘定が入り交じった感じのレビューになってます。はい。

いずれにせよ、すべてはマスメディアの挑発から始まったようなものです。。。

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     [ライブドアの世界一になるキャッシュフロー経営]
http://www.emichanproduction.com/nucleus?itemid=451

先週来の、いわゆる「ライブドアショック」の張本人であり、
一昨日芸能証券
http://www.gse.co.jp/
から上場廃止され、会社も監理ポストに移され、昨日逮捕された彼と、
その右腕の二人で書いたとされるこの本です。

もし、会計操作がなく、本当にクリーンな状態で彼らのいう

「シンプルに、株価を上げるにはキャッシュフローのある会社を買うことで
時間を買い、キャッシュフローをPER で再評価することで更に株価を上げて
更なる会社を株式交換で取得して…」

という、ある意味無限機関的な終わりの無い増殖が待っていたのか、それはよく分かりません。

# とはいえ、世界中の株式会社の数が有限であるものの、時間が限りなく続き
# 株式会社が次から次へと生まれつづけるのであれば確かにそういった会社を
# 永遠に吸収しつづけることで無限の増殖はありえたのかもしれません…
# それが世界に単一の企業グループの存在しかない、というきわめてゆがんだ
# 世界を生み出し、そのときに、時価総額原理主義の意味があるのかどうかは
# 分かりませんが…

いや、どこかでこの手口にもPER の低下などの結果で収斂する時期が来るのかもしれません。

しかし、一連の流れを見る前に、一つ一つの考え方を確認するならば、
これらは正しいでしょう。
会社はB/S や P/L も大事だけど、キャッシュの過不足は経営を左右すること。
株価を上げること、それは株主に対する会社経営者の忠誠。
株価を上げることで、株式交換による買収をしやすくする。
買った会社をPER で再評価することで会社の資産としての価値を底上げする。
また、買収した会社はノウハウと時間を手に入れる。
その結果、買収した会社の評価が上がる。

また、会社は、最後は働く人が肝心、だからそこに腐心している。
会計処理も、ちゃんとする。隠しようが無いから。

どれもこれも、ひとつひとつは確かに嘘は無い。ある意味教科書どおり。
本当に彼らのいう通り、シンプル極まりない。嘘の無い中でこれが繰り返されている
限りは、確かに誰もが信じてやまなかったでしょう。

でも、残念ながら彼らは会計処理を意図的に誤った。
公開情報を操作した。
それは、十分株主と潜在的株主の判断をゆがめた。
その一言で、本当は十分のはず。周りが余計なことを言いすぎているだけ。



さて、この本に関してだけいうならば、はっきりいってしまえば、
この本は今日LD の社長になった平松氏の会社の会計ソフト、弥生の
宣伝以外なにものでもないです(笑)
しかも、ご丁寧に体験版までくっつけている。

しかし、これを上手に導入している、という意味で、会社の会計ってなぁに、
とかキャッシュフローって、という基本的なところを教えてくれている、とはおもいます。


しかししかし、そもそもLD はほとんどものを売らない会社なので
売掛がとか買掛が、とか、在庫管理が、とか、という議論をしないでいいので
都合がいいなぁ、なんておもったり。その関連で誤解を覚悟で言ってしまえば、
よく、村上氏のアクティビスト・ファンドと対比がありますが、考えてみれば
村上氏は人のお金を、株に代えてそれぞれの株価をそれぞれの会社の体質を代えるなど
して上昇させて売却してキャピタルゲインを得て大きくなる、のですが、
LD の場合、堀江氏のお金と第三者割り当てで入ってきた株主との資本金を元手に、
IT 企業である LD のPER をてこにして、買った会社を片っ端からそれで再評価して
その価値を引き上げて株価を高めていく、という意味では、実業がほとんど無い
LD というのは実は堀江ファンドと言ってもあまり間違いは無いのかもしれません。
IT企業という看板分だけ、株価のコントロールが楽だったのかもしれませんが…

ちなみに、同じように買収によって時価総額を高めているのは楽天だって同じ。
あとは、どれだけゲームのルールにのっとってやるか、だけなのでしょう。

さて、これで彼の最後の著書、かとおもっているものの、私の雇い主様と上司様は
「やっぱり、敗軍の将、兵を語るでしょう」
ということで、あと一冊は出るのかな?
でも、これも、堀江氏の言葉は、全部で6ページ程度、あとは宮内氏と
インタビュアーとのインタビュー形式をそのまま載せただけなのと、
ちょっとした用語解説で20ページを使う、という、そっか、それでも本を
書いたことになるのか、とちょっと裏読みしたりして:-p

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ほんと、なんてタイムリーに読んだんだろう(笑)
でも、キャッシュフロー経営は多くの経営者が語っているものであることも事実。
それ自身特に問題がある訳ではないし、時間とシェアとノウハウを買う、買収戦略
だって、Microsoft を始め多くの会社がしている、それも問題はない。

話の、問題の根本だけを見つめればこんなに大騒ぎする事はないはずなのに。。。

そう、あまりに過剰反応しすぎな世の中を作ったのは一体誰だろう。。。

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     [這い上がれない未来]
http://www.emichanproduction.com/nucleus?itemid=452

日本が破綻する、というシナリオの元、階級社会が日本を支配して。。。
ということなのですが。。。

これと時同じくして、土曜の夜、7:30 から、NHK 総合で
「日本の、これから」
http://www.nhk.or.jp/korekara/

という番組で、増税に関する議論が行われていて、その中で、ちょうど
国家が破綻するときのシナリオを元にした、「国民総下流時代」を描いていたり
昨日の夜のニュース23で読売新聞の渡辺会長も同じ事を言っていたりしているので
取り上げてみたいとおもいます。

はじめる前に、ひとつだけ。
内容はともかく、この本を読み出して、とある一冊の本を思い出しました。

「なぜベス」です。

ええ、あの「なぜベス」です。
でも、あれが、よく出来たパロディ本だというのがこの本で再確認できてしまいました。

ええ、著者は高学歴で海外経験も豊富で海外のネットワークもお持ちで、さぞ頭の
良い方でしょうよ、でもさ、そんなのは文章の中身で勝負すればいいものを
いちいち英単語で言い替えて

知識をひけらかさすんじゃねーよ!!!
だったら、最初から全部英語で書きやがれってんでぃ!

と、読むごとに腹を立てなければならない、というところに、ふと同じような本があったなぁ…
あ、「なぜベス」だ(笑)

ということで、この本を読むときには相当の覚悟をしたほうがいいでしょう。
というよりも、もったいないんですよ。こんなことしなくても、事の重要性はちゃんと
読めば伝わるものを、無駄なことに。。。よくいますよね、外国かぶれで
「僕がいたぁ、○○ってところではさ、みんな…(略)」
ってひけらかす奴。だったら、そこにずっといたら?
いられないのは君に問題があってそのコミュニティにすらいられないからでしょ?

。。。あ、だんだんつまらないことでエキサイトしてきた。無駄なことに怒るのはやめよう(笑)
本題に戻るとします。

さて、で、この本ですが、著者が既出の2冊で主張している(らしい、私は読んでないし
これを読んで読む気がなくなりました…)日本の破綻というシナリオを元に、日本の社会構造が
どのように変わっていくかという予想をして、どうすれば、下流階級に落ちないかということが
提言される、はずなのですが。。。

確かに、日本破綻のシナリオは、日本国債(及び地方公共債)の残高のつみあがり
によって、会社で言うところの債務超過に陥ることにより、債権者への支払いが
滞る、というところであり、対外債務が嵩んでしまっていた過去のアルゼンチンや
韓国、ロシアなどなどのケースを思えば IMF の介入などで処理されていった
というハードランディングなシナリオが提示されてもおかしくは無いのです。

が、日本の場合、幸か不幸か、低金利政策のおかげで日本国債の保有者は
(直接証券会社や銀行を通じてか、預金している銀行や生保、投資している投資信託、
果ては保有する株を発行している会社の余資の運用など、間接的であれ)日本国民が
大半になっているらしく(要は1400兆円といわれる家計が既に充てこまれている)、
外国から利払いが滞ったとして怒鳴り込まれて、いわゆるエマージング国のようなことには
いきなりはならないだろうとも言われています。

とはいえ、利払いがなされない、元本が帰ってこない、という債券は買い手がいなくなることで
価格は下がり、そうなることで金利は上昇する、というのは当然のことで、かくて
インフレに突入、というのもありえるシナリオではあるのです。高インフレになれば、
物価上昇は当然起きるものの賃金も適宜上昇することも踏まえれば適度のレベルであれば
昔デフレを緩和するために意図したインフレのようなことにはなるでしょう。
でも、債務不履行となる可能性のある債券が、リスクフリー証券であるような国ですから
確かに破綻はしますね。

で、その流れで持つものと持たざるもので階級社会が出来上がる、ということ
らしいのですが、今だって既にその世界が出来つつある、と思うので
改めて何を言ってるんだろう、という気も実はしています。
よく、80:20 の法則が言われます。たとえば、国民の総預金量の80% が全人口の20% の人によって
行われていて、言い換えれば預金量の残りの20% を80% の人が分け合っている、とか。
そもそもが、現在の金融資産の大半を握っているのが50歳以上の高齢世代であり、
20-30歳代の若年層にはむしろ(カードローンや住宅ローン、サラ金まで)借金のほうが
多い、とされているのです。その時点で大きなギャップが発生しているわけです。
しかも、その若年層ですら、フリーターからIT長者までの幅があるわけで当然その資産量
所得などで綺麗な線引きが出来ているわけです。

都市と地方の所得格差も同じでしょう。

この国が、都市も地方も、老いも若きも誰もが公平で平等だ、という前提をどれだけ信じているでしょう。
その上で、持つものは更に富め、持たざるものは更に貧するのはいつの世にあっても起きている
ことであり、そのものさしが、生まれでた家柄なのか、職業なのか、それとも能力なのか
チャンスなのか、の違いなのは、そういうものでしょう。そのみな公平だというお題目で
共産主義は起こり、内部破綻をきたしたのですし、戦後の日本においても資本主義といいながらも
中央集権型でありながら、票田の理由から都市部で集めた税金を地方にばら撒くことで
地方格差を無くす、という口実をつくっていたのですから、それ自体が国の負債を
作りつづけてきた原因でもあるわけです。

さて、本の中でもちょっと触れられていて、またテレビ番組「日本の、これから」でも
言われていたのですが、国の失政に対する責任は誰が負うのか、という責任問題が
今まで全く問われていませんでした。考えてみれば、当然ではあるのです。
国の方向を決めるのは形式上、国民の代表である議員であり、省庁の役人は
公務員であり、議会の決めたことを執行するだけなのでこれらを決めた議員を
選出した国民が負うべき、というのは確かに道理に合うのかもしれません。

しかし、実際はどうでしょう。
その、「公僕」に過ぎないはずの役人が国の方向性を決める提言をして
議員がそれを丸呑みにして議会を通している、のが大半ですから、提言している
役人の責任のが実際には問われなければならないはずなのです。もしくは
鵜呑みにして選挙民の民意を反映させなかった議員が責任を負うべきなのです。
でも、形式論に戻されるのは、それが民主主義だから、という事なのかもしれません。

いずれにせよ、亡国の徒がそこにいるならば、そして越えられないものがそこにあるならば
どうすればいいか、という結論にとっととたどり着けばいいものの、他国はどうのこうの
というのを延々と論じている著者は、やっぱりそんなに言うならおまえだけ海外逃亡したら?
といわれても当然な気がします。

しかも、結論は、
海外逃亡かクーデターか階級社会を意識しないで甘んじて戦争が起きるまで待つ、か。
。。。なんの解決にもならないじゃないか!

でも、当然でしょうね。階級社会はピラミッドであり、上にいる人間は既得権を
主張するわけですから新たに這い上がろうとする人間は、自分の分け前を
横取りするわけですから蹴落とすのは当然。だからあがるのが大変なのです。

さて、どうしますか?確かに1000円程度の本に答えがあるはずがないんですから(笑)
考えますか…こんな本でも、考えるきっかけをくれたので良しとしますか。


ところで、この本もそうですが、「日本の、これから」にも、ひとつだけ怒らねばならないことがあります。

問題提起をしっぱなしで、結論を与えず、その出たアウトプットも世論にも何にも反映されず、
要は民衆の「ガス抜き」という、ある意味取るに足らない、でも実は民衆にとっては危険でな役目を
しているのです。大声で言うとすっきりする、言ったからもういいや、という気分を作って、
その先のこの国を本当にどうすべきかアクションへの活力をそいでいるのです。
本当にいいのでしょうか。それこそ、過去の失政のつけを払わされることになりかねないのですから…

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また、暴論ぶちまけてますねぇ。。。
最後のガス抜きの話、もう建築基準法偽装問題くらい風化してしまった
中国での日本企業などへの投石デモ、あれも実は中国政府への国民の
怒りのパワーの「ガス抜き」という話があったのです。

いくら「愛国者」という純中国製のブランドが人気を博しても
日本製商品や日本文化へのあこがれ的なものは多少なりある現在の中国の青年たちが
日本企業に対するデモ行動を起こして、その後部屋に戻ると日本製品に囲まれる
というバランス感覚をもつ、というのはそのあたりのコントロールがうまく効いてしまっている
のでは、という話もあったり。。。

なんにせよ、事に付け、テレビというのが無邪気に、そして無意識のうちに
扇動的に人々を動かし、世論を構成して行っているようにしか思えないんですよねぇ。。。
それこそ、LD の株価上昇に各テレビ局が堀江氏をもてはやし、出す事で貢献していた訳ですから
その意味では彼らも風評を流したと認定されるべきではないかとすらおもうのですよ。

なんにせよ、私たちはどっちを向いたらいいのでしょう。。。

さて、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、

80年代や90年代のポップスの紹介をする
ep-music 
http://melten.com/osusume/?m=18932&u=18931 
で、このところアンビエントハウスにドハマっていて

金融小話の連載、ep-finance 
http://melten.com/osusume/?m=18930&u=18931 
で、証券化って、という話と、お金に関するちょっとしたティップのコラム
をそれぞれ発行しております。

また、既発のきわめて個人的で、何でもありの
 ep-update 
http://melten.com/osusume/?m=18652&u=18931 
は、この3つをダイジェストを中心にいろいろアップデートしたことや
はみ出したネタなどをご紹介して行こうと思っております。

そして、発行人のもうひとつの顔、浅草のお土産屋のお兄さんとしての
浅草ガイド、  info-asakusa 
http://melten.com/osusume/?m=18835&u=18931 
も、ぜひご覧くださいね。


ところで。
shiの糧は皆さんのフィードバックです。
ぜひとも、読後の感想もお送りいただけますと幸いです。

また、Blogスタイルで復活した emichanproduction.com 
http://www.emichanproduction.com/nucleus/
にぜひ遊びにきてくださいね。

次回は、今度こそどうしても紹介しておきたい本、ちゃんと読み直して
紹介します。今の日本の金融の姿の一端は既に見えていたのですよ。。。

次回をお楽しみに。

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