〜言葉を風にのせて〜
   
VOL50  
       
 お待たせ致しました。
   今月のWind Letterです。
       

      Wind Letterは言葉を紡ぐ楽しさを詩や随筆で送ります。
      私の言葉の風を受けとめてくださいますか。
      あなたの心の窓を開けてくださいますか。風の手紙があなたと
      私の夢をつないでくれますように。
       それでは、どうぞ今月のWind Lettrをお楽しみください。

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       ○●作者紹介●○
    名前:高安ミツ子(たかやす みつこ)
    日本ペンクラブ会員
    日本詩人クラブ会員
    千葉県詩人クラブ会員
    詩誌「玄」[White Letter」同人


過去へにも

未来にもつながらない時間を

私は手の中で転がしていた

時間は人の魂の色をして

冷たく透き通り

石榴の割れ目から覗いている


遠い母の記憶が薄れ始め

あるいは妙に鮮明になり

母の裾は

郷愁の潮騒になって私の嗚咽をけしている

気付いてみれば

私の裾に隠れていた二人の子供は

もうあんな遠くを歩いている


庭の隅で実をつけた幾つかの石榴に

母の記憶はないにだが

コトコトとこぼれる透き通った種が

つなぎ忘れた時間のようで

今の私の小さな孤独を感じている


狭い庭を歩くことで

私の記憶が薄れてゆく

薄れることに何の恐れもなくなる頃

三つの時間は

裾の先から重なってくるのだろうか

石榴の実の中に

遠い山の音が聞こえている



    
    石榴
 挿絵  土井畑 多摩代