夜の静けさがなじむ頃 寝顔に見えるあなたの息使いに 汚れのない光の曲が聞こえるのは あなたが織り込んでいる生地の色で 私はこの曲にどんなに救われたことでしょう 風がガラス戸をたたき 穏やかな空気に包まれて 密度の高い命を感ずる時 滅びる美しさより 共に背負ってきたいくつかの風景に 積み重ねた喜びと悲しみが 彼岸花となって咲いている 天に向かって橋を掛けようとするのか あなたの心は少年のまま いつも凧をあげている 糸を手繰り寄せる瞳は 青空を抱いたまま踊っている 房総の暖かさが育んだのか 踊る瞳は異次元を飛び交う自由さで 虹を作り 虹は渓谷を渡り 対岸の緑に染まっていく あなたは人類の鳴き声に谺する 緑の渓谷を捜しているのでしょうか それは時間を剥ぎ落とし あなたは年齢を逆戻りして 今を境に 別の虹をかけてしまうしまうのだろうか 募る思いも あなたが傍らにいるこの輪郭も 今だけに見える 最後の幻影でしょうか それとも 私が小さくなっていく前ぶれでしょうか |