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タイトル:Daily Drama Express 2005/08/16 がんばっていきまっしょい (6)  2005/08/26


===================================================== 発行部数  25 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2005/08/16 (Tue) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.火曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 火曜日の連続ドラマ
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タイトル がんばっていきまっしょい
局  名 フジテレビ
放映日時 火曜22時
キャスト 篠村悦子(鈴木杏)
 関野浩之(錦戸亮)
 中田三郎(田口淳之介)
 大野仁美(石田ゆり子)
原  作 敷村良子
脚  本 金子ありさ
主題歌  

あらすじ  第6艇

 2005年夏。みずき(瓜生早矢)は松山第一高校の校門脇から校舎内
をじーっと見ていた。

 松山第一高校艇庫前。「いなかった、悦ねぇたち……」とみずきは
不満顔。仁美は「(卒業したから)いるわけないでしょ」と苦笑する
が、みずきは悦ねぇとリーの恋の行方が気になってじれったそうにし
ている。仁美は「相変わらず100%やったよ、あの子らなりに。泣い
て笑ってボート漕いで。でもね試合には全然勝てんかった。私も何を
どう教えたらいいかわからなくなってしもうて……」と沖を見やる。

 高校2年初夏(2年前)。悦子(鈴木杏)が艇庫に向かって浜辺を走
っていると、ブタのぬいぐるみが打ち上げられているのを見つける。
それを拾い上げた悦子は何かいいことを思いついた風で、にっこりと
ブタのぬいぐるみを見つめる。

 お好み焼き屋メルボルン。連戦連敗の女子ボート部に仁美も頭が痛
い。「悪いチームやない。なんとかひとつ勝たせてやりたいけど」と
思いつつ打開策が見出せないでいた。

 艇庫では、利絵(相武紗季)を中心にミーティングが開かれていた。
3回連続で予選敗退の結果に多恵子(岩佐真悠子)も敦子(佐津川愛
美)も真由美(藤本静)も落ち込んでいる。利絵は「負けてるにして
も少しずつようなってきとる」と元気付けている、そんなところへ悦
子が「見て、ブタ神様!」とさっき拾ったブタのぬいぐるみを持って
入ってきた。

 悦子は「このブタが次の試合は勝てる言ってる気がしたんよ。だか
ら部室に置かん?」とはしゃぐが、次の試合に勝つことに頭がいっぱ
いの4人はシラッとした視線を悦子に向ける。利絵が「今ミーティン
グ中」と恐い顔で言うので、悦子は小さくなってしまう。利絵は「と
にかくもっと練習せんと。朝練やらん?」と提案すると、多恵子たち
も「そうやな、やれるとこまでやらんと」と賛成、次の日から朝6時
に集まって練習することになった。悦子も「よし決まり!遅刻せんよ
うにね」と張り切る。

 翌朝、悦子が寝ぼけ眼で朝ごはんを食べようとしてハッとする。慌
てて時計を見ると7時30分を指していた。「しまった、やってもう
た!」と悦子は頭を抱える。

 学校に着くとすぐ悦子は4人に謝るが、多恵子は「ええかげんにし
てよ、自覚が足りんとちがう?私は勝ちたいんや、負けるのは性に合
わん」と悦子を責め立てるので、悦子は弁解できない。しかし利絵が
「今日は初日やし明日からまたがんばってこうや」とその場をとりな
す。

 その日の練習前、悦子は利絵に「ありがとうな、いつも私のポカを
カバーしてくれて」と感謝する。しかし利絵は「ううん、私こそあり
がとうな、関野くんのこと」と逆にお礼を言う。利絵が浩之のことを
好きだと告白して以来、悦子は浩之とあまり関わろうとしないでいた。
利絵は悦子が気を使ってくれているのが嬉しいのだという。

 そのころ教室では浩之(錦戸亮)が三郎(田口淳之介)相手に「な
んじゃ、篠村のやつ。話してもろくに口きかん。感じ悪い、遅れてき
た反抗期か」とカリカリしていた。すると三郎は「いや、思春期かも
しれんぞ」と笑う。浩之が何のことかピンと来ないでいると、三郎は
「お前女とつきあったことないんか?まあええ純情少年、一生女っ気
なしで寂しくボート漕いでろや」とからかって行ってしまう。浩之は
カッとなり「俺だってその気になれば女くらい集められるわ、簡単じ
ゃ!」といきり立つ。

 浜辺に出ながら、悦子は利絵にいっそ告白してみればとすすめる。
利絵は「そんなん言えんよ」と嫌がるが、悦子は「あいつは今まで大
してもてておらん、大喜びするかもよ」と周りも気にせずしゃべり続
けてしまい、多恵子、敦子、真由美に話を聞かれてしまう。悦子は慌
てて否定しようとするが、多恵子たちは「リー、関野くんのこと好き
だったんだ」「告白するん?いつ?どこ?」と勝手に盛り上がってし
まう。利絵は恐い顔で悦子を責め、悦子は「どうしよう……」と針の
むしろ状態になる。

 練習後、悦子は利絵と2人きりになると「ごめんね、ブーのこと好
きだってこと聞かれて。私のせいや」と謝る。利絵は「大丈夫、気に
しなくてええよ」と意に介さない風だが、悦子は気まずさから「でも
知られてよかったってことも。ほら部会とか2人でしきってもらった
りとかいろいろ作戦立てられ……」と利絵のためを思って提案するが、
「やめて、そういうの嫌いや。私、公私混同はせん!」と生真面目な
利絵を逆に怒らせてしまう。

 新海高校ボート部から松山第一高校の男子ボート部に対抗戦が申し
込まれた。
 全国大会前の調整にというのが理由だった。大野コーチ(池内博之)
の話を聞いて、浩之は「調整って、何か練習台扱いみたいじゃないで
すか」と不快がる。大野コーチは「そんなこと言うな。逆に勝って新
海の天狗鼻くじいたれ!」と激をとばし、男子部員たちは闘志を燃や
す。

 お好み焼き屋メルボルン。女子ボート部にもちえみ(関めぐみ)か
ら直々に対抗戦を申し込まれたことが仁美から伝えられた。悦子たち
に大差をつけて勝ち、気分よく全国大会に出ようという意図だろうと
いう仁美の説明に悦子たちは弱気になる。しかし仁美は「でも頑張れ
ば勝てる可能性もある。悔しい思いを全力でオールにぶつけるんよ」
と励まし、悦子たちは気合いを入れる。そこへ根本(小日向文世)が
差し入れに煮物を出し、悦子たちは大喜びするが、仁美は「イモッチ、
ちょっと待って」と声をかける。

 翌日の昼休み、悦子たち5人は教室でお弁当を食べていたが、真由
美は仁美に節制するように指示されたことにカリカリしていた。ボー
トのスピードを上げるためには総重量を落とした方がよく、太目の真
由美は少し体重を落とす必要があった。しかし多恵子は「カチンとき
たなら痩せればええ。みんなのためにダイエットせいや」と厳しい。
悦子は「徐々にでええよ」とフォローするが、利絵は「徐々にじゃ間
に合わん。無理して落とす必要はないけど気合入れな新海に勝てん。
そんなん悔しいやん」と反論し、ピリピリしたムードになる。悦子は
「昨日の煮物おいしかったなぁ」とその場をまるく収めようとするが、
多恵子は「私がこれだけ勝ちたいと言ってるんや。いつまでヘラヘラ
しとるんや」と朝練の遅刻、ブタ神様の一件、利絵と浩之をくっつけ
ようと練習がおざなりになっている最近の態度を責める。すると今度
は敦子が「悦ねぇはリーに気を使ってんのよ。関野くんと口きかなく
なってるからおかしいと思ったけど、これでわかった」と悦子を庇っ
て利絵を見やると、利絵は「私のため?」と心外な顔になる。悦子は
「と、とにかく私もしっかりするようにするけん」と事態の収拾

 放課後、自転車で艇庫に向かう途中も利絵と多恵子は悦子たちの輪
から離れて走る始末、ボートを漕いでもまったく息が合わず、うまく
進まない。イライラした多恵子が「いい加減にしてよ、さっきからオ
ールがバラバラやない!」と怒り出すと、真由美は「私の体重が重い
から乱れてしまうんかもなぁ〜」と嫌味っぽく言う。多恵子は「なら
さっさと痩せえ」と怒鳴れば、利絵も「ヒメ、こういうときこそしっ
かり声だしして態勢立て直さんと」と文句をつけ、敦子も「出しとる
よ、リーもフォワードが早すぎよ」とお互いを責め合って練習になら
ない。

 練習後、悦子は「もうちょっと気持ち合わせていこうよ」と悦子は
なんとかみんなをまとめようとし、利絵も「そうよ、これじゃ対抗戦
勝てんよ」と同調する。しかし真由美は「もとはと言えば(浩之をめ
ぐる)2人に原因があるんじゃない」と聞く耳を持たない。多恵子も
敦子も同じ考えで無言のまま立ち去ってしまう。

 次の日の体育の授業、悦子と利絵がボート部の雰囲気悪くなってし
まったことに頭を悩ませながらグラウンドに出てくると、先に来てい
た浩之と三郎がいた。
 浩之と目が会うと悦子は視線をそらしてしまい、浩之も不機嫌そう
になる。そんな2人を見て利絵も気まずそうになる。見かねた三郎が
悦子に次のような勝負を提案する。授業で行われるマラソンで悦子と
利絵がともに10位以内に入ったら三郎と浩之が昼食にのどか食堂のカ
ツ丼をおごり、逆に11位以下だったら悦子と利絵がおごると。

 利絵は「そんなの無理よ、私はいいけど悦ねぇはマラソン苦手やし」
と悦子を見やると、悦子はむっとして「そんなん大丈夫よ、やろう」
と受けて立つ。

 レースがスタートすると、利絵は快調に飛ばしていくが、悦子は遅
れだす。三郎は「篠村ぁ、がんばらんでいいぞ!」と声をかけると、
悦子は「うるさい、だまっとれ!」と意地になってペースを上げて利
絵に追いつく。それを横目で見た利絵もペースをあげ、悦子も遅れま
いと抜きつ抜かれつのデッドヒートになる。
 しかし悦子はしだいにペースを落とし、フラフラし、ばったりと倒
れてしまう。

 驚いた浩之がすぐさま駆けつけて悦子をおんぶして保健室に駆けて
いく。それを見た利絵は胸を締め付けられるような思いにかられる。

 悦子の症状は貧血で学校を早退する。パチンコに行ってた幸雄(大
杉漣)はキヌ(花村照子)から話を聞き、びっくりして帰ってくるが、
悦子は回復していて「バレリーナみたいにフラーッときれいに倒れた
らしいよ」とケロッとしていた。幸雄はホッとするあまり「おい悦子、
このボケッ、カス!」と怒鳴りつけてしまう。

 悦子は復帰するまで約1週間かかるという診断で、仁美は利絵をキ
ャプテン代行に指名する。利絵はびっくりするが、練習後も1人部室
に残って漕艇日誌を読み返すなど、練習メニューの見直しに入る。

 多恵子、敦子、真由美の3人は悦子を見舞いに行き、利絵がキャプ
テン代行になったことを話す。悦子は笑顔で「リーはしっかりもんだ
から安心や」と言うものの内心は寂しい。しかし多恵子が「この前は
きついこと言ってゴメン。はよ戻ってきてや。やっぱりうちらのキャ
プテンは悦ねぇやけん」が謝ったので、悦子は嬉しくなる。ふと真由
美がお菓子にいっさい手をつけてないのに気づいた悦子が理由を尋ね
ると、真由美は感心して「よう気づいたな、私ダイエットしてんのや。
5kg痩せて身も心もすっきりして田中ちえみに勝つ!」と宣言する。
それを聞いて悦子たちは大いに盛り上がる。

 お好み焼き屋メルボルン。男子ボート部員は三郎を囲んで話をして
いた。三郎は悦子が貧血で倒れたときのことを話し、「そんときセッ
キーが光の速さで篠村のところに行ったんじゃ。熱い男はええのう、
いざというときにすぐ身体が動く。おれはクールじゃけん」とやや自
嘲気味でいる。すると恭一(北条隆博)が「ちょうどいい、君も熱く
ならんか?いいクルーは1人でも多い方がええ」と三郎の肩を叩く。
三郎をメルボルンに連れてきたのは、三郎が縦社会に嫌気がさしてラ
グビー部をやめたので、ボート部に引っ張り込むためだった。それを
知った浩之は絶句してしまう。

 次の日、利絵は大野コーチが属する日本代表選抜チームの練習の見
学の話を多恵子、敦子、真由美に伝える。その日、悦子は学校に行く
のを家族に止められていて、ベッドにもぐりこみながら机の上のユニ
フォームをじっと見てもどかしそうにしていた。

 悦子はいても立ってもいられずこっそり家を抜け出してボート部の
練習を見に行こうとするが、幸雄に見つかってしまう。友子(市毛良
枝)、法子(浅見れいな)、キヌも出てきて「今日1日は休みなさい」
「身体のほうが大事よ」と口々に言うが、「身体よりボートの方が大
事やけん。見るだけだから」と言って出て行ってしまう。

 利絵たちや男子ボート部員は大野コーチら日本代表選抜チームの強
化練習を間近で見て感嘆の声をあげていた。本場の選手の漕ぎ方は力
強く迫力があり、沈滞ムードだった女子ボート部員の間に活気が戻っ
てくる。

 悦子が浜辺に着くと、仁美が今回の選抜チームの練習見学が実現し
た経緯について話しているところだった。仁美の話によると、これは
利絵が大野コーチに熱心に頼みこんで実現したものだった。利絵は
「日誌見て、ずっと同じメニューの繰り返しで単調だったし、ここの
ところ負け続きで何とか気持ちが上に向く方法はないかって考えたん
よ」と見学の意図を説明すると、多恵子たちだけでなく、男子部員か
らも拍手が沸き起こる。男子部員は口々に「よう考えとる」「チーム
の色はキャプテンの頭で決まる。負け続けてたのもキャプテンに原因
があったのかもなあ」「矢野の方がキャプテンに向いとるんと違うか
?」と誉めそやすので利絵は得意になる。一方それを聞いた悦子は
「何もあそこまで言わんでもいいのに」とすっかり落ち込んでそのま
ま家に帰ってしまう。

 強化練習を見ながら浩之は利絵に「すごい、本場の選手はすごい。
矢野のおかげや、ありがとう」とお礼を言って練習に行く。浩之に感
謝された利絵は嬉しくてしかたがなく、軽くガッツポーズするが、見
ると代表選手に笑顔で挨拶しているちえみの姿が目に入り、気を引き
締める。

 悦子がしょんぼりしながら帰ってくると、仕事場で幸雄が不機嫌そ
うな顔をしていた。理由がわからず悦子は戸惑うが、法子が出てきて
「お友達来とるよ」と声をかける。悦子が居間にあがると三郎が来て
いたのでびっくりしてしまう。

 悦子が三郎を自分の部屋に案内すると、法子がショートケーキとお
茶を持ってくる。「どうぞごゆっくり」と興味津々に悦子を見やる法
子に対して、悦子は余計なお世話という顔をする。法子が出て行くと、
悦子は「ゴメンな、いつもはきれいなんだけど今日に限ってちらかっ
てて」とベッドを整えたりする。三郎は「ほい、差し入れ。俺の愛読
書じゃ」とサリンジャーやらシェークスピアやらの本を渡す。三郎は
「元気そうやな。寝てると思って本にしたけど、食い物の方がよかっ
たか」と少々拍子抜けした感じだが、悦子は「ありがとう、読んでみ
る」と三郎の心遣いを喜ぶ。

 悦子が「遠いのになぁ、あんたの家。大変やったろ」と済まなそう
に言うと、三郎は「責任あるけん、お前が倒れたのは俺が無理な賭け
をさせたからや」と詫びる。悦子は「そんなことない、関係ないよ」
と答えるが、三郎は「お前はボート部の大黒柱。倒れたらいかん」と
まじまじと言う。悦子は内心救われるような思いだが「そんなことな
い、私がおらんでもボート部は大丈夫や」と俯く。しかし三郎は「ま
ぶしいなと思ってた。いつもお前楽しそうにボート漕いで、いつもに
こにこ。あの顔がないんじゃボート部困るやろ、早く治してにこにこ
してくれや」と励ます。三郎の言葉に悦子は元気を取り戻し、にっこ
りと笑う。

 利絵たちはメルボルンで根本に新海高校と自分たちの違いを尋ねる。
根本はひとつの試合に集中し完全燃焼できる強い精神力の差だろうと
指摘し、漕いで漕いで限界まで漕ぎまくりロウアウト精神を高めるこ
とが重要だと言う。

 その夜、悦子は三郎が持ってきた本を手にとってその日のことを思
い返していた。下では法子が友子とキヌに「まさか悦子があんなキレ
イな顔の男の子に恋しとるとはねぇ」と話していると、幸雄は仕事が
手につかなくなり、奥に引っ込んでしまう。友子は「余計なこと言わ
んと」と顔をしかめるが、法子は「大事なことよ、誰か本当に好きな
1人の人見つけるまでの準備期間、いつか私も悦子も旅立つんだから」
と構わず続ける。それを聞いて幸雄は避けようのない現実にショック
を隠せない。

 悦子の貧血も治まり、登校の許可がおりる。悦子は大喜びで学校に
やってくると廊下で浩之とすれ違う。悦子はおずおずと「運んでくれ
たんやろ、私倒れたとき運んでくれたのブーなんやろ」と切り出すと、
浩之は照れ隠しから「おまえなぁ、いつまでもブー言うな。それじゃ
女っ気が集まらんのじゃ」と憎まれ口を叩く。カチンときた悦子は
「ブーはブーじゃろ、エロブー!」といつものけんかになる。それを
見た利絵はまた不安な気持ちに襲われる。

 その日の練習で利絵は20kmを漕ぎきるハードメニューを提案する。
新海高校との対抗戦から逆算して今の段階できつい練習をこなし、徐
々にクールダウンして本番を迎えるという計算されたものだったが、
悦子は「でもいきなり20kmというのは……」と心配する。利絵は「悦
ねぇはまだ漕げんのやろ、見学しとったらええねん」と悦子の意見を
退ける。利絵は「私らもロウアウト精神鍛えんと。前回半艇差で負け
たんはどこか諦めてたところがあると思う。やる前に諦めないでとに
かくやってみよう」と決意の程を語ると、多恵子も敦子も「そやな」
と同意する。真由美も同意するがどことなく顔色が冴えない。そんな
真由美の様子が悦子は気になる。利絵は悦子の代わりに文江(土屋詩
穂)を整調に入れる。

 利絵たちはいい感じで進んでいく。しかし悦子の目には真由美の様
子がおかしいように見える。オールの返しも乱れ、バテている感があ
る。最初の1kmを終えるとすぐ2本目に入るが真由美の漕ぐ姿は辛そう
になっている。悦子は駆け出して海に入っていき大声で「イージーオ
ール!戻ってーっ、オールメーン!イージーオール!イージーオール
……」と必死に叫ぶ。それを聞いて、利絵は練習を止めいったん陸に
戻ってくる。

 利絵は「なんで練習邪魔するん?せっかく調子ようなってきたのに」
となじる。悦子は「ごめん、でもどうしても気になって」と真由美に
向かい「大丈夫?なんかいつもと違うように見えた」と声をかける。
しかし真由美は「平気よ、私は大丈夫」と無理に笑ってみせる。利絵
は「悦ねぇ」と非難がましく悦子を見、悦子は「ごめん」と謝る。

 利絵は「それじゃ戻ろう、ええ漕ぎしとった。練習続けよう、この
感じ忘れんように」と指示を出す。しかし悦子は「待ってよ、リー」
と止めようとする。利絵は「悦ねぇは黙っといて。私らに必要なのは
ロウアウト精神よ。練習せな勝てん。私ら根性ないからだめなんよ、
もっと練習して変わっていかなきゃだめなんよ」と語気を強める。

 悦子はそれを聞くや「ダメやない。そんなダメやない。確かにロウ
アウト精神も必要やと思う。でも無理して変わらんでもええ。私らは
私らのままでええ。イモッチ、ダッコ、ヒメ、リーはみんな今のまま
で。私らええとこたくさんあると思うんよ。私らのペースで漕いでこ
う。楽しく、楽しいから頑張れるんよ。どんなに辛くてもボート漕ぐ
んは楽しいってにこにこして。そんなチームがええ。でも今のイモッ
チは辛そうや、見てられん」と切々と訴える。そして「イモッチ、え
えよ、辛かったら辛いって言っていいんよ、言うてほしい正直に。ず
っと同じボート漕いできたから分かるんよ。隠しても分かる」と優し
い口調で言う。

 すると真由美は堰を切ったように「ゴメン、私しんどい、ゴメン」
と本心を打ち明け始める。真由美はダイエットが思うように進まない
ことに焦り、みんなの足を引っ張らないようにとろくにご飯も食べら
れない辛い日々が続いていたのだった。そして「ゴメン、今日はもう
止めてもええ?」と弱々しく尋ねる。すると敦子は「止めよう今日は」
と微笑みかけ、多恵子も「ええよ今日は。もうそんなら最初から言っ
てよ」と軽く非難する。そして悦子は優しく微笑みながら頷く。
 それを見て真由美は「ありがとう、悦ねぇ」とホッとして表情が和
らぐ。その一部始終を男子部員たちは黙って見ていた。恭一は「よう
見とるなあ、篠村は。部員の顔をよう見とる」と呟き、浩之たち男子
部員も悦子の気配りに感じ入る。

 練習後、悦子は利絵を心配して部室から出てくるのをじっと待って
いた。利絵は部室に1人残ったまま、真由美の変調に気づけなかった
自分を責めていた。

 しばらくして利絵は重い足取りで部室を出てくる。階下の艇庫では
浩之が備品の手入れをしていた。浩之は「お疲れさん」と声をかける
が、利絵は黙り込んだまま俯いてしまう。浩之は「お前、ようやっと
った。お前がんばっとった。わかっとるけん、みんなわかっとるけん」
とやさしく声をかける。そんな浩之の言葉に利絵は抑えていた気持ち
が一気にこみ上げてきたかのように、「好きよ、私、関野くんのこと
が好き……」とそっと告白し、じっと浩之を見つめる。浩之は不意の
告白に驚いて利絵をじっと見るが、やがて困ったかのように俯いてし
まう。
 利絵は自分の気持ちが受け入れられなかったことを悟り艇庫を駆け
出していく。
 浩之はただ立ち尽くすしかなかった。

 駆けてきた利絵を見て悦子は「リー」と声をかけるが、利絵は泣き
ながら悦子のそばを走り去っていく。

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 −もし本当に神様がおるんなら、次の試合、どうか勝たせてほしい、
願わずにはおられんかった。こんなに傷ついて、惨めな思いして、
100%の思いでがんばっとるんやから。どうか次の試合、勝たせてほ
しいって……。
*------------------------------------------------------------*

 次の日の練習に利絵はなかなかやって来なかった。多恵子らは「遅
いなぁリー。どうする?」と悦子に尋ねる。悦子は「もう少し待とう
よ」と心配げに利絵のオールを見つめる。

*------------------------------------------------------------*
 −でもリーは来なかったんよ。次の日も、その次の日も……。
*------------------------------------------------------------*


寸  評  非常に面白かったです。普通ドラマは1度見て筋がわかってしま
うと2度目を見ようとは思わないのですが、今回は見終わった直後に
もう1度見ても飽きませんでした。何度でもじっくり見て楽しめる回
です。こんなことは昨年の「白い巨塔」の最終回以来です。
 何度も書いてきましたが、やはりドラマは登場人物の魅力に尽きる
と実感します。練習方法に関しての悦子のマイペース主義も、利絵の
勝つための努力至上主義も両方とも同じくらい理解できます。それは
突き詰めれば悦子と利絵のどちらも魅力的であるということだと言え
ます。もし片方が魅力的でない場合、どんなに対立させようとしても、
魅力ある人物の言い分に見ているほうはついていってしまいます。登
場人物がしっかり描けてなければできないことです。
 また利絵の告白シーンでは浩之がOKと言うはずがないと結果は
100%わかっていてもとても切なく感動的なのは、利絵が告白してその
答えをどんな気持ちで受け止めるか見てみたいとか、浩之ならどう答
えてくれるのだろうとか期待してしまうからだと思います。告白シー
ンは山ほど見てきて食傷気味であると思っても面白く感じるのは、見
ている者は告白シーンを見てるのではなくて、告白する人物を見てい
るからだと思います。同じシーンでも面白くなるかならないかは人物
の魅力に依存していることの証明といえるでしょう。
 利絵は主人公を食わない程度に、つまり悦子を引き立てる役として
かっちりできていると思います。去年の「ウォーターボーイズ2」も
同じ5人組の部活物でしたが、ストーリーとしては奥深さを感じませ
んでした(シンクロで魅せる方が主眼だったかもしれませんが)。そ
れは泳吉と張り合えるだけの脇役がいなかったからではないかと思っ
たりします。
 あと、登場人物の心の揺れ動きがドラマの軸であるボートとしっか
り結び付けられているのにも感心しました。非常に丁寧に作られてい
る作品だと改めて思いました。この回は前の時間帯の「海猿」の視聴
率を上回ったようで、おそらくは視聴層が若年層に限定されていると
思われること、メインキャストは売り出し中の若手であることを考え
れば大健闘のような気がします。来週以降も期待したいです。

執 筆 者 ケン()

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2. 編集後記
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 前回まで「新海」高校を「新開」高校と表記していました。最初に書くとき
HPのあらすじ参照したのですが、間違ってしまったようです。申し訳ござい
ません。このドラマ、中盤に来てかなり盛り上がってきていると感じます。
1話削られてしまったのが返す返す残念です。(ケン)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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