メルマガ:音楽で食べていく方法
タイトル:音楽で食べていく方法  2005/07/30


     
    大胆企画
   「音楽で食べていく方法」         


                     トライトーン発行  第4号

   CM音楽制作会社で活躍しているアーティストたちが
   音楽で食べていく方法をお教えいたします。
   
   毎回、持ち回りで各アーティストが音楽の実践を語ってくれます。
   その中で、実践していくテクニック、楽しさ、裏話またプロとしての
   初仕事、仕事をもらうきっかけ などをもとに
   どうやって音楽を生業としてやっていくのかを、探っていただければ
   幸いです。(正直、我々も仕事を獲得するのに必死で頑張ってます。)
  

 
      目次
 
 
  1 音楽の現場から 「音楽の仕事との出会い」  多美恵 (初登場)
  2 音作りについて 「誰でも分かるオーディオデータ圧縮 2」 桝屋直紀
  3 気になる音楽  「サントラで嗜む極めて私的な映画紹介 4」 呑舎利
           

---------1 音楽の現場から------------------------------------------


     「音楽の仕事との出会い」  多美恵


     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
      多美恵

     95年よりボイスレッスンを受ける
    00年よりコンペ用仮歌、ゲーム挿入歌、ケーブルTV用
    ガイドボーカル、CM曲を歌う他、作詞も手掛ける
    04年よりヒーリングのオリジナル制作に取り組む

     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

     私が初めて歌手の仕事をしたのは30歳。
   29歳の時は歌手になりたい思いと現実との間で
   悩んでいました。
   そんなとき、ロンドン一人旅へ。
   複雑な思いを抱えたままの旅でした。

   もう歌手なんか諦めよう。。。バッキンガム。
   でも歌好きだしさ。。。トラファルガー。
   じゃぁ、素人として歌えば。。。ビックベン。
   プロになりたい。。。大英博物館
   あ〜、だけど29歳じゃん!テート・ギャラリー
   悩みながら、ちゃっかり観光してました。

   そんなとき、コヴェント・ガーデンという植物園に行きました。
   そこで背の高い、美しい女性に話し掛けられました。
   私が野生リスを見つけ「わ〜!」と驚嘆していたため
   彼女は「何がいるの?」と。
   英語力の貧弱な私は「リス」なんて説明できるはずもなく
   「that! so cute!!」と指差したのです。
   通じました。(笑)
   それで、「どこから来たの?」とか「名前は?」なんて話になり
   「職業は?」となったのです。
   彼女は答えました。
   「オペラ歌手なの」

   ホテルに帰った後、「オペラ歌手、、、歌手、、、歌手、、、」と
   私は頭の中でくり返しました。
   歌と何の関係もないところで会うなんて、これは神様のメッセージ?
   「歌を諦めてはダメだよ。きっと歌手になれるさ!」ってこと?

   帰国後、ネットで募集していた「仮歌(コンペ用デモで歌う人)の
   オーディション」に応募し、そこで、はじめての歌の仕事をしたのでした。

   夢を諦めてはいけないと思いました。
  
   

   次回は「仮歌ボーカリスト」という仕事について 
   多美恵 がお話いたします。




---------2 音作りについて----------------------------------------------

  
     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~    
     桝屋 直紀

     明治大学 理工学部卒、AMVOX で作曲、編曲を学ぶ。
     作曲家穂口雄右氏に師事。主な作品 東邦銀行(TVCM) ほか。
 
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    『誰でも分かるオーディオデータ圧縮』2 桝屋直紀

   前回はオーディオCDのフォーマットについてご紹介しました。
   今回はオーディオ圧縮についてお話したいと思います。

   音楽CDをPCに取り込むだけですとオーディオCDデータは『WAV』や『AIFF』
   という拡張子のファイル形式になります。前回お話したとおり、
   オーディオCDデータは1分間で40MBytesです。CDには十数曲しか収められま
   せんし、Web上で扱うには少々大きすぎます。この圧縮によって1/5から1/20
   というフレキシブルな、用途に合った、容量にできます。

   ご存知の方も多いと思いますが、PC上のプレイヤーによっては、
   オーディオCDから取り込んだデータの拡張子が『mp3』,『wma』や『m4a』
   という形式になることもあります。それはまさに取り込んだ後に圧縮した
   データということになります。
   今回はこの『mp3』という形式に絞ってお話しましょう。

   ●第2回 圧縮技術(MP3)
   『MP3』とは『MPEG1 Audio Layer-3』という名前です。『MPEG』とは
   『MovingPicture Experts Group』の頭文字絵を取ったもので、動画像の圧縮
   フォーマットの一つです。この動画像の圧縮技術のオーディオ部分として
   規格化されました。

   この技術のコンセプトはマルチメディアデータの冗長性と人間の生理特性を
   うまく利用した技術と言えます。

   音声信号は時間と周波数と振幅から成り立っています。『ある時間区間に
   どのくらい周波数の偏りがあるか』を見るためにフーリエ変換という信号
   処理工学の理論が使われます。前回、サンプリング周波数についてお話
   しましたが、この理論にもフーリエ変換が関係しています。難しい理論です
   のであまり突っ込んだ内容にまでは触れませんが、この技術が非常に重要で、
   基本的には他の圧縮形式もこのフーリエ変換の技術が基礎になります。

   実は身近にこのフーリエ変換の技術を目にすることがあります。それは
   『グラフィックイコライザ』です。周波数別に(左から右に高周波数)上下に
   バーが波のように動くのはそれぞれの周波数帯域でどれだけ音量(ゲイン)が
   あるかを示しているのです。
   この解析によって人間には聞こえやすい周波数帯域とそうでない帯域が
   どこなのかを判断できます。

   基本的に周波数の中域はよく聞こえます。特に人間の声、1kHz前後と言う帯域
   はよく聞こえるようになっています。

   言い換えると、低音、高音はあまり聞こえないと言うことになります。
   この聞こえやすさ、聞こえにくさのことを人間の可聴周波数特性といって、
   一般的なモデルの特性グラフからどの周波数帯域で無駄なのかを判断します。
   (*)

   さらに、大きい音の中で小さい音はかき消されてしまう『マスキング効果』
   を利用したデータ削除と、音声データを0と1のデータに符号化したものを
   効率よく並べ替える技術というものも利用されています。

   ここで重要なのは圧縮後のデータはオーディオCDデータやPCに取り込まれた
   WAVデータより音質が劣化しています。圧縮と音質は相反することで、削除する
   データ量と音質の兼ね合いが重要になります。ソフトの開発者たちはこれらの
   技術で必要となるパラメータを考慮し、より高圧縮で高音質なソフトを
   考え出しているのです。


   (*)上述の冗長性とは情報の無駄と解釈されますが、マルチメディアデータ
   (芸術)に無駄はないと言う考え方もできます。

   この話は哲学的な領域に踏み込んでしまいますので、圧縮技術では人間の
   生理特性からみた無駄という解釈で冗長性を扱っていると考えてください。



   次回は●圧縮の方法について です。







---------3 気になる音楽------------------------------------
   

    「サントラで嗜む極めて私的な映画紹介」 第4回   呑舎利


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     呑舎里 (どんしゃり)

   "呑舎利組合"主宰。
   一応音楽の学び舎を卒業しているらしいが、多くを語ろうとしない。
   長い修行・熟成の期間を経て、
   いよいよ音楽業界へ本格的なダイブを画策中。
  
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   『 ウォーターワールド 』(1995年 米)
   監督:ケビン・レイノルズ 
   音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

   気が付けば、早4回目。
   いよいよ脈絡の無いチョイスですね。
   今回、映画フリークの方は少々驚かれるやもしれません。
   なにせ公開当時は、世間の酷評を浴びていた作品です。

   今ではブルース・ウィリスと並び、「ハリウッド産超有名禿男優」
   の誉れ高いケビン・コスナー主演です。
   かけた制作費たるや、半端じゃ無かったこのSF近未来作品。
   なにせロケのために人工島を建造してしまったくらいです。
   実際は撮影中に台風が直撃、こっぴどい事になっていたみたいですが。
   作品の出来も、金をかけたという割りには
   ケビンの頭のような淋しい仕上がりでした。。

   しかしこの作品。
   世間の評価とはウラハラに、音楽はもったいないくらい
   素晴らしい出来なのです。
   ジェリー・ゴールドスミスやアラン・シルヴェストリの流れを組んだ、
   純ハリウッド的オーケストラによる劇判は、見事な盛り上がり。
   近年、このカテゴリーで一番目立っているのは
   多作で有名なハンス・ジマーでしょうか。
   しかし、ハンスには無い「グっと来るメロディー」が
   この作品にはあるのです!

   確かに、劇判には「シーンを盛り上げろ」
   という最重要の使命があります。
   前出のハンスは、これに関してはとっても上手。
   煽りの楽曲をやらせたら、現在この人の右に出る者はいないでしょう。
   しかしハンスの場合、そこへのウエイトが重すぎて、
   情緒(≒メロディー)が薄すぎるのです。
   このような楽曲はしばしば、サントラを音楽単体として聴いた時に
   空虚な印象を持たざるを得ません。

   もちろんメロディーが強すぎると、
   映像と合わせた時には邪魔にもなり得ます。
   その轍を踏んでは、作品自体を台無しにしてしまう。
   絶妙なバランスがあって初めて「劇判として」、
   なによりも「音楽として」成立することが出来るのです。
   プロデューサーや監督の希望に答えると同時に、
   音楽の美学を追求するのはとても大変な事です。
   かといって、音楽家がその追求を諦めてしまうと・・・・。
   大御所にはジョン・ウィリアムスやジェリー・ゴールドスミス等、
   素晴らしいメロディ・センスを持った劇判作曲家がいます。
   果たして新しい世代の作曲家はどうでしょう??

   今回は少々熱く語り過ぎました。(BOSS、文字数大丈夫ですか?)
   続きはまた別の機会に・・・。





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    以上、今回も内容、盛りだくさんでした。
    お楽しみいただけましたか。
 
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     <注意>
 
    「音楽で食べていく方法」に記載した全文は
    トライトーンはじめ、執筆者が著作権を有するもの
    であり、固く複製禁止をお願い申し上げます。
                       
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     大胆企画
     「音楽で食べていく方法」 は

     来週金曜日、発行予定です。
     次号をお楽しみに!!
               
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