メルマガ:ep-finance
タイトル:[ep-finance] あなたの債権は売られました (笑)  2005/04/24


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         [[ e p - f i n a n c e ]]

         edition: 2-Apr-2005

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こんにちは。
発行人しております、shi でございます。

emichanproduction.com
http://www.emichanproduction.com

で、毎週連載中の経済小話を紹介して行きます、本メルマガは
発行人の知識と経験をもとにいろいろな、社会人なら
知っておきたい話から、こんなこと知ってるのは、金融業界の
ほんの一握り!といったカルト話まで、盛りだくさんで進めて
いこうと思っております。

やっと、やっと、やっと、3月が終わりましたね。
なんとか生きながらえて、この4月を迎えることが出来ました。

いやぁ、長かったぁ。。。この数ヶ月、本当によく働いたぁ。
ということで、昨日、うちのチームで飲みに行ったのですが、
思わず深酒してしまいました(苦笑)

というか、お酒に弱くなったんですかねぇ。
最初ビールでしょ、そこから赤白のワインをいただいて、その後
日本酒、そしてデザートワインを飲んで、最後にジントニック。

。。。いや、これって落ち着いて考えると、単にチャンポンしすぎかも(笑)

さて、今日から生活を改めねば。
でも、今日はちょっと早めのお花見なんだよなぁ(爆笑)

さて、前回、金銭債権の流動化の概論をお話ししましたが、今回は
金銭債権の流動化のポイントとなる、「債権譲渡」について
ちょっと考えてみましょう。

<<<<<<<<<<<<<<<<<< financial talk >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 [企業資産の流動化と信託 : 金銭債権の譲渡と債務者との関係]


前回金銭債権信託の概要を軽くご説明しましたが、今回は商品別の各論に入る前に、
商品全般に関わるものの、一つのキーになる「債権譲渡」という問題について
いろいろと検討してみたいと思います。


さて、「債権譲渡」という行為、わかりやすくするために、前回例示したケースで
再度見てみたいと思います。

例えば、「某銀行」が「とある優良取引先」に貸し付けているローンを10本計100億円あるとして、
これを信託に譲渡して受益権化して売却したい、というニーズがあると想定します。

この場合、「某銀行」が「信託」に対して、「とある優良取引先」から将来100億円(と利子を)
受け取る権利を譲渡する、という行為が発生するのですが、落ち着いて考えてみると、
「某銀行」と「信託」との間で、この「権利」を譲渡する、と「とある優良取引先」の
知らないところで勝手に決めてしまっても大丈夫なのでしょうか。

もし、この信託への債権の「譲渡」が「とある優良取引先」に対して何も知らされていない場合、
「とある優良取引先」は当然「某銀行」に債権の弁済代金を支払ってしまうでしょうし、当然
そうやって支払った元本に相当するだけの金額は「とある優良取引先」からみての「債務」から
減って当然と考えるはずです。となると、債権を譲渡されたはずの「信託」には一銭も入ってこない
ことになりそうです。それでいいのでしょうか?


さて、信託を使った資産流動化案件では、この点については二つのアプローチのいずれかを
取ることになります。

* 債務者に対して債権譲渡を通知して、新しい債権者に対して弁済するように促す
* 債務者に対してはなにも言わず、そのかわり、委託者が信託の代わりに債権を回収して信託に引き渡す

前者の場合は特に信託にちゃんと移っている、ということがわかるので問題はないと思うのですが、
これをやった場合、このケースですと「某銀行」にしてみれば自分の資金調達のためにやったから
いいものの、「とある優良取引先」にしてみれば、付き合いのあるはずの「某銀行」が自分に対する
貸金を売った、なんてことをしてくれるんだ、ということで、今後の「某銀行」との取引を減らす
などの影響があり得るので、あまりやりたくないことが多いようです。

後者の場合、「とある優良取引先」の立場から見ると何も起きているようには見えないですので、
その借りたときと同じく「某銀行」に契約に従って支払いを行うのですが、その裏側で、
「某銀行」は「信託」と結んだ「回収代行契約」に基づいて代理で回収したに過ぎないということで
受け取ったお金をそっくりそのまま「信託」に引き渡すことになります。これですと、とりあえずは
「某銀行」にとっては、「とある優良取引先」に対してはその貸し手としての面目は
立ちますし、しかも資金調達も出来るし、と万々歳な方法に見えます。が、そんな商品を買う
投資家の立場から見ると、いくつかの点で気になることが出てきます。


Q1. もし「某銀行」が破綻した時、「とある優良取引先」から受け取った支払いが「某銀行」の
ほかのお金と混ざってしまうため「信託」にちゃんと支払われないのでは?

Q2.「某銀行」が破綻した後、いったい誰が「とある優良取引先」から取り立てるのか?

Q3. もし「某銀行」が破綻した時に「信託」が「とある優良取引先」に
     「今まで黙ってたけど実は自分が正当な債権者だ」と、自分が言えるか。

Q4.  そもそも、このスキームを行うにあたって、同じ債権をもとにして複数の同じスキームを
作ることも出来るから、仮にそうされても、ほかのスキームに先んじて自分のスキームに対して
弁済されるようにする必要があるのでは?


とまぁ、実は「某銀行」が(行政によって守られて)ちゃんと会社として動いているうちは
問題のない話ではあるものの、ひとたび破綻してしまうと、このスキームにも影響が起きてしまう、
という、オリジネーター(債権の生成者)/サービサー(回収業者)の会社リスクを背負っている
スキームだということがわかると思います。

「あれ?債権の流動化ってオリジネーターのリスクを排除するんじゃなかったっけ?」

という疑問は確かにあると思います。そこで、上記のようなリスクはこうやって回避している
ことになっています。


Q1.  もし「某銀行」が破綻した時、「とある優良取引先」から受け取った支払いが「某銀行」の
ほかのお金と混ざってしまうため「信託」にちゃんと支払われないのでは?

A1.  この、「コミングリング(混在)」リスクについては、スキームに要求される保証の度合いに
よって異なるものの、1-3回分の回収金、もしくは配当金をあらかじめ「信託」で準備するように
して、その分だけは凌いでその間に問題解決を図る、と考えられています。

Q2. 「某銀行」が破綻した後、いったい誰が「とある優良取引先」から取り立てるのか?
Q3.  もし「某銀行」が破綻した時に「信託」が「とある優良取引先」に
「今まで黙ってたけど実は自分が正当な債権者だ」と、自分が言えるか。

A2/A3. (「あなたの債権は売られました」という内容の)債権譲渡の通知は債権譲渡が起きて
すぐに打たなくともよいとされていることから、このような「某銀行」の破綻時まで通知を
先送りにしておく事自体は問題ではないようですが、債権譲渡を「とある優良取引先」に
認知してもらう(この債務者対抗用件を具備する、と言います。)には

*「某銀行」(債権の譲渡人)が「とある優良取引先」(債権の債務者)に通知する
* 事実を知った「とある優良取引先」が「信託」(債権の譲受人)に承諾する
* 以下で説明する債権譲渡登記の通知書を送る

のいずれかをすることになり、その結果債務者に事実関係を認知してもらい、「信託」に支払うよう
誘導することになります。
ちなみに、債権の種類によっては、債権回収の専門家に破綻時以降代わりに債権回収を
行ってもらう(バックアップ)契約を別途結ぶことも多いです。

Q4 そもそも、このスキームを行うにあたって、同じ債権をもとにして複数の同じスキームを
作ることも出来るから、仮にそうされても、ほかのスキームに先んじて自分のスキームに対して
弁済されるようにする必要があるのでは?

A4. 一つの債権を複数の先に譲渡する事自体は確かに信義則に反するようにも見えるのですが、
それぞれの譲渡自体は成立してしまうので、債務者の立場からすると、いったい誰が正当な
譲受人なのか、という譲受人の間の権利関係の強さを決める必要があります。言い換えると
当然、最初に譲渡を受けた人が正当だと言うのがわかるものの、どれが先なのか、という決め方が
必要になります。そのルールを第三者対抗用件というのですが、そのルールは

* 債務者対抗用件通知に確定日付という公証役場でもらえる日付を取った場合にはその日付
* 債権譲渡登記をした場合にはその登記の日付

の一番早いもの、ということになります。従って、こういったスキームでは債務者への通知は
打たないものの、債権譲渡登記という第三者対抗用件の具備だけは債権譲渡を行ったその日に
おこなうことがほとんどです。


さて、本当にこれでオリジネーター/サービサーリスクは回避できたのでしょうか。
実は、このようなオリジネーター/サービサーが破綻したケースは国内では筆者の知る限りでは
全業種あわせても 4件と少なく、一応それらは最終的には投資家に全額元本は支払われたよう
ですからその意味では守られた、と言えるでしょうけれども、聞く限りにおいては本来の
シナリオと全く異なる動きのなかで解決しているようですので、何とも言いがたいものなのかも
しれません。
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さて、ここでふと1つの疑問が出てくるはずです。

Q. SPC でも同じことが出来るじゃない。どう違うの?

ええ、仰る通りです。少なくとも、債務者に通知する形の案件はまず間違いなく
同じように出来ます。問題はその SPC の設立の時間などがとれるか、設立コストも
払えるか、そして、SPC がその裏付けで債券を発行するとなったときのコストや
手間はどうか、という点です。
また、通知しない形でも同じでしょうけれども、債権譲渡の確実性(真正売買性)の
議論でどうも弱いようですね。私にはその違いがよくわかりませんが。

さて、各論に行こう、と思うのですが、次回はもう一つ、アレンジャーですら
勘違いを起こす、信託の名前の話について触れてみたいと思います。
なぜかって?実はこれが商品性を方向付けるときもあるからなのです。

いろいろな所にアンテナを張りながら執筆しておりますが、
「こんなネタ教えて?」
とか、
「これってどういうこと?」
というご質問から、
「それって嘘でしょ?」
というご指摘まで、いつでも大歓迎ですのでお気軽に
メールくださいね。

さて、信託業法のドタバタもまだ落ち着かない横で、とうとう施行されてしまいました。
個人情報保護法。

ちなみに、読者の皆さんのメルアドは私は知りませんので、ご安心ください。
いや、各メルマガのスタンドの情報保護ポリシーに乗っ取った形での保護に
なりますので、ご理解いただくとして。。。ん、そうか、まだ下記の通り
5000件に満たないので一応は法規制の外にいられるのか。よかった。

という具合に、どういう訳か、この法律のコンセプトが頭に入れざるを得ず、
そのおかげで仕事でもこの件に首を突っ込まざるを得ない状況に置かれております。
それも、多分、個人情報->情報->IT->おたく の流れで私に。。。

その流れですこしお話しすると、「信託」とその事務委任先、例えば、不動産信託の
建物管理やテナント管理会社さんで、個人のテナントを取り扱う会社さんですと、
これは確実に規制の中に落ちてきますが、今までマーケットでスタンダードと
されてきたそういった建物管理契約には個人情報保護に関する規定など
皆無でしたから、この4月を機に何かしら締結しないとまずいよね、という
ことで、準備をしているのですが、この個人情報保護法で求められる規制
内容がそのデータのカテゴリーで異なることから、いくつものバージョンを
準備しないといけない、ということで、まぁ、面倒です。
しかも、いまさら、別途契約を結べ、となると、先方もいやがるでしょうし。。。

なんにしても、日本中が大騒ぎになっているお話ですから
もし私がお願いに行ったら、ご協力をお願いしますね。

さて、4月、のんびりできるかと思ったら、まだまだ。
しかも来週はまるまる一週間全国を出張であちこちに飛びます。見かけたら声をかけてくださいね。
ちなみに、この3月末までで飛行機の搭乗回数は 20回。
あと10回(5往復)でまたブロンズクラスに。でも、このペースだと
プラチナ(年間 50回搭乗)も行けるかも。って喜んでいいのやら。

では、また次回お楽しみに。

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ところで、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、

ビジネス本レビューの

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では、今スキルアップ思案中です。

80年代や90年代のポップスの紹介をする
        
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で、アンビエントハウスから派生した音楽を追いかけてます。

また、ep-update <http://melten.com/osusume/?m=18652&u=18930>で
この3つをダイジェストを中心にいろいろアップデートしたことや
はみ出したネタなどをご紹介して行こうと思っております。


そして、発行人のもうひとつの顔、浅草のお土産屋のお兄さんとしての
浅草ガイド、
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も、ぜひご覧くださいね。

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