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======================================================================== ━┓→ N┃→ 仮想力線電磁気学 ━┛→ ======================================================================== ------------------------------------------------------------------------ ●第96回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その26) ------------------------------------------------------------------------ 当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。 さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。 前回の続きで、エネルギー配分が偏る話についてです。 古典的な近接作用の理論であるマックスウェル電磁気学では、エネルギーが極端 に偏って配分される現象は説明できません。 そのため、量子論というトリックが必要になるわけです。 今回は、その説明の第三回目です。 なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。 **************************************** 108.配分のされ方が問題 **************************************** 今回は、前々回示した三つの欠陥のうち、前回残した「第二の欠陥」について考 えてみたいと思います。 ちなみに、第二の欠陥とは、下図の問題において、「エネルギーは物体Bだけに 配分されるのではなく、ごくわずかながら物体Cにも配分される、ということが 説明できない」ということでした。 [図94] B ○ ○ ○ A C エネルギーが、一つの粒子ではなく、複数の粒子という形で存在するという考え 方により、複数の物体にエネルギーが配分されることが可能になることは、前回 も説明しました。 このことから、第二の欠陥についても解決されているように思えるかもしれませ んが、何か一つ重要なことを忘れてはいないでしょうか? それは、エネルギー配分のされ方の問題です。 単に、複数の物体、すなわち、物体Bと物体Cの両方にエネルギーが配分されれ さえすればよい、というものではありません。 物体Bに極端に多く偏ってエネルギーが配分されなければならないのです。 はたして、そのことがうまく説明できるでしょうか? そこが問題なのです。 **************************************** 109.作用の強さとの関係 **************************************** 前回、物体が受け取るエネルギーには、(エネルギーの)粒子の数が関係し、そ れ故に、粒子の存在確率が関係してくることを述べました。 粒子の存在確率が高い位置(注:正確には「領域」。以下、同様)にある物体ほ ど、多くのエネルギーを受け取ることができることになるわけです。 しかしながら、粒子の数が関係してくるのは、物体が受け取るエネルギーだけで はありません。 実は、物体が受ける作用の強さも、粒子の数が関係してくるのです。 強い作用を受けるためには、粒子の数が多くなければならず、それ故、存在確率 も高くなければいけません。 作用が弱い場合は、その逆です。 したがって、各物体が存在する位置における存在確率は、各物体が存在する位置 における作用の強さに似合う値でなければならないのです。 だとすると、物体Bと物体Cとがそれぞれ受け取ることになるエネルギーの大き さの差は、せいぜい、各物体が存在する位置における作用の強さの差から推測さ れる程度にしかならないのではないでしょうか? 作用の強さには、物体Aからの距離が関係してきます。 となると、エネルギーの大きさの差は、せいぜい、距離の違いから推測できる程 度にしかならないのではないでしょうか? もしそうなら、困りますよね。 はたして、どうなのでしょう? **************************************** 110.受け手が単数か?複数か? **************************************** もう一つ、心配事を指摘しましょう。 それは、エネルギーを受け取る物体の数が、単数の場合でも、複数の場合でも、 うまく説明できるのか?、という疑問です。 下図の問題を見て下さい。 [図96] ○ ○ A C これは、エネルギーを受け取る物体が単数の場合ですよね。 これに対し、これまで取り上げてきた図94の問題は、複数の場合です。 そこで、思い出していただきたいことがあるのです。 それは、物体Cが受け取るエネルギーが、図94の問題と、図96の問題とで、 異なることです。 実は、これが問題になってくるのです。 もし、物体Cの位置における粒子の存在確率が、図94の問題と、図96の問題 とで、同じだとしたら… 物体Cが受け取るエネルギーは、図94の問題と、図96の問題とで、同じにな ってしまうのではないでしょうか? もしそうなら、これまた、困りますよね。 はたして、どうなのでしょう? **************************************** 111.確率と実際の結果との違い **************************************** 実は、上で述べた二つの心配事は無用です。 それが(粒子の存在)確率のおもしろいところなのです。 以下に、その理由を説明しましょう。 まず(再)認識しなければならないのは、「確率」は「実際の結果」とは異なる ことです。 たとえば、コインの表・裏が出る確率がそれぞれ50%だったとしましょう。 すると、確率的には、表が出るのも裏が出るのも半々ということになりますね。 ところが、実際の結果は、表か裏しかないのです。 つまり、100%か0%しかないのです。 これが「確率」と「実際の結果」との違いです。 同じことが、エネルギーの粒子にも言えるわけです。 個々の粒子について考えてみて下さい。 一つ一つの粒子は、どれも、物体Bか物体Cのどちらかにしか受け取られないの です。 つまり、ある粒子を一方の物体が受けとってしまうと、もう一方の物体はその粒 子を受け取ることができないのです。 ですから、結果は100%か0%なのです。 たとえ(存在)確率がいくらであったとしても。 まず、このことを理解してください。 **************************************** 112.個数ではなく時間 **************************************** 次に理解しなければならないのは、存在確率の意味です。 ここで、こんな問題を考えてみましょう。 8個の玉が入っている箱があるとします。 箱の内部は二つの領域からなり、一方を領域B、もう一方を領域Cとします。 一方、玉は、自力で、箱の中を動き回れる(移動できる)とします。 このため、領域Bと領域Cとを行き来することができます。 そして、領域B・領域Cにおける玉の存在確率が、それぞれ75%・25%であ るとします。 さて、そこで重要になってくるのが、75%・25%という数字の意味です。 これは、「全部で8個ある玉のうち、75%(=6個)が領域Bに、25%(= 2個)が領域Cに存在する」という意味ではありません。 つまり、「玉が、領域Bには75%にあたる6個、領域Cには25%にあたる2 個存在する」という意味ではないのです。 では、どういう意味なのかというと、個々の玉、すなわち、任意に選んだある一 つの玉が、領域Bに存在する確率が75%、領域Cに存在する確率が25%であ る」という意味なのです。 つまり、存在確率とは、「全ての玉の個数に対する、そこに存在する玉の個数の 割合」のことではなく、「ある一つの玉が、そこに存在する時間的な割合」のこ となのです。 ですから、ある時間(時刻)において、領域B・領域Cに存在する玉の個数が、 6個(=75%)・2個(=25%)でなくなってもよいのです。 たとえば、7個・1個とかになってもいいわけです。 この場合、個数の偏りが、存在確率の偏りよりもひどくなっていますね。 とにかく、そういうことが可能なわけです。 さて、同じことが、エネルギーの粒子についても言えるのです。 「ある位置における粒子の存在確率」とは、「全粒子数に対する、そこに存在す る粒子の個数の割合」のことではなく、「ある一つの粒子が、そこに存在する時 間的な割合」のことなのです。 ですから、物体B・物体Cに受け取られることになる粒子の個数の割合は、存在 確率と等しくなくてもいいのです。 つまり、より偏った値とかでもいいわけです。 となれば、エネルギーが大きく偏って配分されることがあってもよいことになり ますね。 **************************************** 113.先取りの優位性 **************************************** さて、三つ目に重要なのは、先取りの優位性です。 たとえば、こんな問題を考えてみましょう。 いま、「あたり」と「はずれ」がそれぞれ一本ずつのくじがあります。 このくじを、BさんとCさんの二人が引く問題を考えます。 もし、二人が全く同じ条件でくじを引いたならば、「あたり」が出る確率はどち らも50%で同じになりますね。 ところが、ルールを次のように変えると、話が違ってくるのです。 まず、Bさんが先にくじを引く。 そして、Bさんが「あたり」を引いたら、その時点でくじ引きを終了する。(つ まり、Cさんはくじを引けない。) Bさんが「はずれ」を引いたら、「はずれ」くじを戻し、改めて、Cさんがくじ を引く。 そして、Cさんがくじを引いたら、「あたり」・「はずれ」に関係なく、その時 点でくじ引きを終了する。 このルールですと、Bさんが当たる確率は50%で同じなのですが、Cさんの当 たる確率は、( 1 - 0.5 )・0.5 = 0.25、すなわち、25%になるのです。 なんと、Bさんの半分になり、差が出てしまいましたね。 つまり、BさんがCさんの二倍になるのです! このように、ルールによっては、先にくじを引く方が有利になることがあるので す。 これを『先取りの優位性』と呼ぶことにします。 もし、Bさんが「あたり」を引いても、「あたり」くじを戻し、Cさんがくじを 引くことができるルールなら、平等になるはずです。 ところが、Bさんが「あたり」を引いてしまうと、Cさんはくじを引く権利を失 ってしまうルールのために、不平等になるわけですね。 Cさんが「あたり」を引くためには、Bさんが「はずれ」を引いてくれなければ なりません。 ですから、後からくじを引くCさんにしてみれば、先にくじを引くBさんが「あ たり」を引いてしまうことは、まさに「あたり」くじを『横取り』される行為に なるわけです。 そして、このことは、すなわち、後から取る者が、先に取る者に『横取り』され ることが起きることを示しているのです。 ここまで来ると、もう話が見えてくるでしょう。 **************************************** 114.横取りが起こる理由 **************************************** 以上の話を総合すると、エネルギーが極端に偏って配分される現象が説明できる ことがわかるのです。 物体Bは物体Cよりも(物体Aに)近い位置にありますね。 一方、エネルギーの粒子は、物体Aから放出されます。 ですから、物体Bが粒子を『先取り』することになります。 すると、先の『先取りの優位性』の話からもわかるように、後から粒子を受け取 ることになる物体Cは、粒子を物体Bに『横取り』されて、ほんのわずかな数の 粒子しか受け取ることができないのです。 このため、エネルギーを『横取り』されてしまうのです。 すると、以前も説明したように、エネルギーが極端に偏って配分される現象が起 きるわけです。 以上で、第二の欠陥を含む全ての欠陥が解決されました。 ついでに、ここでもう一つ気付いてほしいことがあります。 それは、物体Cの位置における存在確率が、図94の場合と、図96の場合とで は、異なることです。 図96の場合と比較すると、図94の場合は、物体Bに粒子を先取りされ、横取 りされてしまうために、物体Cの位置における粒子の存在確率が低くなってしま うのです。 **************************************** 115.トリックを不要にするには… **************************************** 以上の話から、エネルギーの粒子という考え方を正当化させるのに、(存在)確 率という考え方がいかに有効かがおわかりになったでしょう。 また、さらに、近接作用においては、エネルギーの粒子という考え方がいかに有 効かもおわかりになったと思います。 とはいえ、エネルギーの粒子も、(存在)確率も、近接作用を救うための、苦し 紛れの御都合主義的トリックのような感じがします。 現に、アインシュタインは、「神はサイコロ遊びをしない」とか、「誰も見なけ れば月は存在しないのか?」などと言って、(存在)確率という考え方を批判し 続けました。 ならば、こうしたトリックを使わずに済むためには、どうしたらいいのでしょう か? 答えは簡単! 近接作用を捨てて、遠隔作用でいけばいいのです。 「ならば、なぜ、わざわざ、こんなトリックの話を長々としたのか?」と言いま すと、定説となっている近接作用との対応という形で説明した方が、遠隔作用が 理解しやすくなり、また、遠隔作用が近接作用に取って代われる理論であること を認識してもらいやすくなると思ったからです。 そして、そのためには、近接作用におけるトリックを知っていただく必要があっ たわけです。 というわけで、次々回からは、ようやく、遠隔作用の話に戻ります。 なお、次回は、少し脱線して、物理学全般に関係のある漫談(?)をする予定で す。 ======================================================================== 発行者 : tarkun(たーくん) mailto:tarkun2@yahoo.co.jp 配信 : MailuX http://www.mailux.com/ バックナンバーの閲覧、購読の解除、配信先の変更は、下記のHPへ。 http://www.f8.dion.ne.jp/~tarkun/mm/mailux.htm 購読の解除や、配信先の変更は、御自分でお願いします。 ======================================================================== |