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タイトル:[M4 Action! 7]「アーチストのイグジット」  2005/04/15


通巻79号 2005.4.15発行


                  M4 Action!
                  「アーチストのイグジット」


 まずは、先日の配信の訂正。
 「ビジネスマンの寿命は、企業の寿命より短い」
 とありましたが、多くの方々ご指摘頂きました通り、
 「企業の寿命(約30年)は、ビジネスマンの寿命(約40年)より短い」
 の誤りでした。文脈からおかしいと感じ、メール頂いた方々、正解です!


 さて、最近、アートや芸術を簡単に消費してしまう傾向がよく見受けられるよう
になりました。まさか、ピカソの絵画を足拭きマットに使う人はもちろんいないで
しょうが、音楽や書籍、映画などデジタル化されたものはどうもコモディティ化し
てしまい、相対的に価値が低下しているように思います。

 今も売れっ子の吉本のお笑い芸人であるロンドンブーツ1号2号の田村亮さんに数
年前パソコンを教えに行ったときのことです。「最近、すごい売れていますね。レ
ギュラー何本あるんですか。」と私が言うと、亮さんは「いや〜、前に出ちゃダメ。
出ないほうが賢い。」と言いました。その時は「ガサ入れ」などが流行語になり、
既に若者たちの間では一斉風靡していた頃、謙虚な芸人さんだなぁ、と思ったもの
ですが、どうやら、それは真理だったようです。

 つまり、テレビに出まくると大衆に消費される。消費されれば、飽きられる。消
費されない位置で、ずっと芸能界にいるほうが賢明、ということらしいのです。そ
うは言うものの、ジャニーズ事務所のSMAPや土曜20時で既に「ひょうきん族」を超
えた長者番組となった「めちゃイケ」のナインティナイン、そして、ロンドンブー
ツ1号2号といったアーチストたちは、未だに大衆に消費され尽くされずに、芸能界
での地位を確固たるものにしています。

 彼ら長寿アーチストに共通しているのは、環境の変化への対応に常に努力してい
ること。どこか長寿企業と似ているところがあります。アイドルだけどお笑いにも
充分対応できるSNMAPの路線は、今やジャニーズ事務所の規定路線となり、後輩たち
も長寿を続けています。消費され、飽きられる前に、新しい魅力を醸し出す。かな
りの天才集団です。

 彼ら天才たちは、いわば誰もがマネのできる対象ではありません。天才が努力を
し続けるのですから、誰もかなわない。では、私たち凡人はどうすればいいでしょ
うか?

 ただ、私たちも実はアーチストなのです。他人と違うものを作り出し、世に発表
していく、そんな活動がアート・芸術だとするならば、ブログを毎日書いている人
もアーチストだし、経営者ももちろん、アーチストでしょう。

 自分の努力をすぐに発表できる場があるもの、音楽家や小説家、映画監督、スポ
ーツ選手などをよくアーチストとして私たちは認識していますが、クリエイティブ
な活動をしている人はみんなアーチストです。アカデミー賞やグラミー賞、芥川賞
などなど業界ごとに確固たるヒエラルキーが存在し、そこを目指していくことがで
きる場があれば、実はみんなそこに向かって努力をし続けることが出来るわけです。
しかし、そんな出口(イグジット)がない業界も存在するし、そういう出口を持たな
いアーチストもたくさん存在します。日本は特にそういう傾向が強いのではないで
しょうか。

 例えば、企業は上場をひとつのイクジットとする向きがありますが、実は上場は
株主のイグジットであり、経営者にとっては、決してイグジットではありません。
さらに、まさにアーチストとでも言うべき、ギタリストにも実はイグジットがない
のです。天才ギタリスト、という抽象的な出口でしょうか。

 最近の身近な例だと、国内でMBAを取った人たちにもイグジットがありません。ビ
ジネススクールに行きました。論文まで書きました。それで?私はそれが見つけられ
なくて、博士課程で延命をしたのかも知れません。博士のイグジットはなんでしょ
うか?それはノーベル賞を取ることでしょう。壮大すぎますが。

 一時的な出口でもいいのです。漠然と何か役に立ちそうだ、とか、そんなことで人
は努力できるものでしょうか。生きるインセンティブとまではいきませんが、アー
チストにはイグジットが求められています。流行らない資格や、人気のない仕事、ど
うも優れない社員。どれにもイグジットがないのです。消費される以前の問題です。

 もちろん、アートは固有価値。市場でいくらで取引されようと、その人固有の価
値があります。だから、イグジットだって、みんなそれぞれでいいのですが、分か
りやすい出口が見えれば、みんな行動しやすいと思いませんか。そういうものを見
えるようにしていかないと、日本にアーチストがひとりもいなくなってしまうので
はないか、そんなことを最近考えています。


                  (こくぶ ひろゆき hk@ihg.jp http://lvsh.jp/)


追伸) 初めてこのメールマガジンをお送りさせて頂いた方もいらっしゃいますが、
  1994年から(当時はFAXでしたが)不定期に発行しているものです。徒然なるまま
  に思いつきを皆さんにお送りするものですが、ご迷惑でしたら、一番下の解除
  方法で解除できますので、お手数ですが、ご自身でご手配をお願いします。
  「おいおい、ふざけんな!」という方はその旨、ご返信下さい。そういう方には
  こちらで対応させて頂きます。
   なお、バックナンバーM4 Visionについては以下のホームページにあります。
   http://www.sm4.jp/new/m4_index.html


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國分 裕之 (Hiroyuki Kokubu), LVS Holdings Inc.
E-mail hk@ihg.jp URL http://lvsh.jp/

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