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============================================================ [[ e p - f i n a n c e ]] edition: 29-Jan-2005 ============================================================ こんばんは。 発行人しております、shi でございます。 emichanproduction.com http://www.emichanproduction.com で、毎週連載中の経済小話を紹介して行きます、本メルマガは 発行人の知識と経験をもとにいろいろな、社会人なら 知っておきたい話から、こんなこと知ってるのは、金融業界の ほんの一握り!といったカルト話まで、盛りだくさんで進めて いこうと思っております。 さて、もう一ヶ月が終わろうとしているんですねぇ。 なんだか早いですね(笑) と言いつつも、今週も私は出張漬けでした。 ただし、今週は都内から近県を 文字通り歩き回り(大体トータルで10時間位かな) 足がぱんぱん、足の裏も痛くなる思いでした。 # だって、タクシーもこないようなところなんだもん…(泣) ところで、自分の靴(パンプス、ヒールを除く)の裏側ってよく見ますか? 私は昔から結構脱いだ靴の裏側を見るのですが、 社会人になってもうすぐ10年になるのですが、学生の頃以上に かかとの外側から削れて行く傾向が強くなっているなぁ、と 感じています。 これって。。。O脚が進んでると言う証拠? さて、今回のコラムですが、今年から施行された改正信託業法。 信託銀行に勤める私としては、どうしても逃げられない話ですので、 自分なりに現時点で出てきた論点などをまとめてみました。 <<<<<<<<<<<<<<<<<< financial talk >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> [企業資産の流動化と信託 : 改正信託業法と流動化] 2005年1月1日から改正信託業法が施行されました。 メディアでは当初 「長年、銀行の兼業のみを許してきた信託業が広く門戸を開いた」 として歓迎ムードで迎えられていたのですが、実際にその全容が 判明するに連れて、その門戸を開けんとして意図したあいまいさと、 それを急遽監督省庁が慌てて(しかも中途半端に)補強した結果、 当初意図されていたようなものが事実上実現しづらいものになって しまった感があります。 下記では、改正の結果どうなったのか、ということと、その影響が どのように資産流動化に与えることになりそうかを私見を交えて まとめていきます。 まず、大きく分けると信託業法を改正したことで、次の観点で従来の 規制が緩和されたと考えられています。 - 受託出来る財産の限定撤廃という緩和 - 信託会社の免許制という形での銀行業以外への参入障壁の緩和 このうち、前者の意味するところは、従前の信託業法においては、 金銭や債権、不動産、そしてある特定の動産というように限定列挙 と言う形で資産の範囲を定めていましたが、今回の改正により この限定が撤廃され、一身的なものでなく換価出来る物であれば何でも 受託出来るようになったのです。これにより、従前より信託を使っての 流動化スキームの限界とされていた、特許や著作権といったいわゆる 知的財産権や、ワインといった一般的な動産の流動化も検討出来るよう になるのです。 これ自身は次に延々と掲げることになる論点を除けば歓迎されるべき ところで、これにより SPC と信託勘定がほぼ対等に比較できる導管体に なったと言えるでしょう。 問題は、もう一点の信託会社の免許制への意向です。 こちらは一見規制緩和に見えます。なにせ 金融庁のホームページ http://www.fsa.go.jp/syouhi/syouhi/shintaku.html にある申請書をダウンロードして印刷して記載事項を埋めて、適宜会社の 資本を厚くすればあたかも免許が与えられるように見えるからです。 当初、マーケットでもこれで不動産あたりは不動産会社が信託会社を 作って始めるのでは、と思われていたり、某業界でも業界のための 信託会社を作って共同で資金調達するのに使おうか、という話も 流れたくらいです。 しかし、今回の信託業法の改正では、実は法文自体丸ごと書き換わっていて、 その中には、以前にはある意味明示されていなかったことが明示されているのです。 それは 「受託者の責任・義務の範囲」 です。 信託法を含め、今までも信託の受託者がその義務として負わねばならない レベルと言うのは 「善意の管理者の注意義務」 略して善管注意義務ですが、これは一般的には 「その状況に応じて 社会通念上要求されると考えられる程度の注意義務」 といわれているものの、銀行にとってのこの「善管注意義務」というのは 一円足りとも間違えてはいけない業種とされている以上、厳格な レベルだと言われています。 とはいえ、年金運用などの運用の判断をお任せ、という「一任型信託」と 言われる器だけでなく、会社の「頭」も要求する信託であればそれでも いいかもしれませんが、 # とはいえ、通常は年金運用で損しても補填しませんからねぇ。。。 資産のパフォーマンスのみに依存すべき流動化の際に必要なのは 「非一任型信託」と呼ばれる、契約書にのみ従って管理さえしていれば よく、管理財産を勝手に売却する判断されては困るので「頭」が要らないわけ ですから、契約書のさえ忠実に従えばいい程度の「善意無重過失」、 言い換えれば、知っててやってはいけないし、とんでもないポカを しなければいい、くらいの義務で本来は足りるのであり、従前の契約でも そのあたりは実質軽減する条文が入っていても何ら問題はありませんでした。 しかし、今回の信託業法では、受託に関して忠実義務は当然としても、 「信託業務の委任」の結果においても「善管注意義務」を課す事を 明示しているのです。 さて、これだとピンと来ないと思いますので、ちょっとした例示をしたいと 思います。今まで不動産の話をしてきたので、それをベースで考えます。 不動産信託において、信託は土地や建物の「保有」と「管理」を依頼されている 訳で、「保有」については委託者から譲渡を受け、その受けた事実を登記するなり し続けることで事実上実現するのですが、「管理」というと、実際にその 建物に人を置いて毎日掃除したり、機械のメンテナンスを行ったり する必要が出てきます。 # 実はそれによりちゃんと占有して「保有」を主張する、ということにも # なるのですが。。。 しかし、一つの土地と建物を譲渡されることに、社員を一人そこにずっと 座らせておくわけにも行きませんし、所詮は「銀行員」ですので、たとえば給湯用の ボイラーが壊れたときに修理することなんて(普通は)出来ません。 となると、普通にこういったビルのメンテナンス会社に仕事を依頼することに なり、実際、流動化案件ではプロパティマネジャー(PM)と呼ばれる人として、この ような管理会社を起用することが多いです。さらに言えば、このPMに起用される 人は、たいていの場合、不動産の投資を行う人があらかじめ決めて連れてきて、 受託者に「この人と PM 契約結んでね。」というわけですので、事実上 PM の 選択肢は受託者にはないことになります。 しかし、今回の改正において、信託業務の委任を行う際には 次のことが要求されています(第22条など)。 - 選任時に委任先が業務遂行出来ることを受託者が判断すること - 事務委任中に委任先が自己の財産と委任している財産とを分別管理できること - 委任先に問題が起きた際にはすぐに解任できること など、今までPMがちゃんと業務を行うことが出来るかどうかについては 投資家が判断すればよかったものの、受託者もちゃんと委任できるか、 しつづけられるかどうか判断する必要が出てきたのです。 また、従来であればPMの事務エラーは受託者は責任を負わずに投資家の経済的 パフォーマンスに反映させれば足りていたところ、継続的に監督しなければ ならない、ということも含めて、もし信託財産にPMによる責任で毀損などが 発生すると、受託者もその責任を取って受益者に補償し、その後でPMに対して 補償請求しなければならなくなったのです(第23条)。 で、現在マーケットで言われていることとして、この義務について 信託契約のなかで「信託業法にはそうは書いてあるけど受託者を 免除してあげるよ」、と書いてしまうと、信託業法の観点では無効だろう、 と言われて、ひどい場合には書いてあることでお咎めを食らう、とまで いわれています。 そして、最悪の場合、たとえばPMによるそもそもの業務遂行出来なかったことによる エラーの結果、受託者は選任基準を誤った、もしくは解任しそびれた、 として信託業法違反を問われて、業務改善命令や業務停止、果ては免許取り消し というリスクを負うことになってしまっているのです。 よくよく考えてみると、ただの導管体である信託と受託者に、PM の 業務遂行出来るかどうか判断を求めること自体、投資家からしてみれば、 自分が起用したい PM を使うのだから文句は無いはずなのに、 受託者から判断されるのは余計なお世話、ということでしょうし、 物とそのスキームで意図した管理方法のうまい下手で収益が決まるという 流動化のそもそもの趣旨にそぐわないことであるのは明確なのです。 また、金銭債権の場合、オリジネーターがサービサーを兼務するのが 一般的ですが、そのサービサーの破綻時にバックアップサービサーに 代わりに債権の回収を行わせるのがスキーム上の準備としてあるのですが、 過去において実質的にバックアップサービサーが発動した事例はなく、 それを踏まえると、本来はサービサーの交代をしなければならなかったにも かかわらず、さまざまな理由で交代出来なかった場合にも信託業法上の違反を 問われる、という受託者としては不条理なケースに陥ることも考えられます。 で、なぜこれが新規参入の障壁になるかというと、信託会社の免許の交付の 判断の一つに信託業務を的確に遂行する人的資源があることが要求されて いるからです。上記の委任と抱き合わせで考えると、 「物を預かる以上、そのものの管理が自分でちゃんとできないで人の 業務内容が適切かどうか判断できないから、委任先なんて適切に判断 出来ないだろ?」 というロジックが成り立ちえてしまうのです。もちろん、不動産会社で あれば不動産に、貸金業者であれば貸金にそれぞれ特化した人的資源は 用意できると思いますが、何を持って法文で要求している 「じゅうぶんな社会的信用を有して」いるのか分からない、というか、どう 監督官庁が判断するのかが明確でない、というのが実情でしょう。 話は残念ながら、ここに留まらないのです。 今回の緩和に伴って、「信託契約代理業」という、登録を必要とする業が 発生したのですが、これは「信託契約の締結の代理(信託会社又は外国信託 会社を代理する場合に限ります。)又は媒介を行う営業」を行うために 必要なライセンスで、これに流動化のアレンジ業が入るかどうか、という これまたややこしい話が出てきています。言い換えると、流動化の アレンジをするために、この「信託契約代理業」を登録し、内部体制を 整え、適度な頻度で金融庁の内部監査を受け入れる必要が出てくるのです。 今までそんな必要は無かったのですから、ある意味規制強化なので、 従前より行っている(特に外資系)金融機関などは不要とするように 話し合っているということも聞こえてきています。 あと、受託者の実務的な話として、受託を行う際に委託者に対して これからどのような契約に委託者が調印するのか説明する義務を課されている という、こともあげられます。多分これは不動産取引の際に宅建業者が 負っている説明義務に似せて作ったと思われるのですが、そもそも 特に不動産の場合には委託者は調印して受益権を売却すると スキームから離脱するため、その後の収益の分配の説明をされても 「なんのこっちゃ」 ということでしょうし、実際にこれを行ったものの話によれば、 40分ほど延々と読み上げることになったので、その場に居合わせた人たちからも 見るに耐えかねて 「いちいちやるのは面倒でしょうからこれからはテープに録音しておいて 再生したら?」 というお知恵まで頂いたとか。 さらには、決算ごとの信託財産の報告内容がこと細かく規定されたりと 正直なところ、これって事実上の規制ではないか、と思える点しかない、という 感が強いです。 これによる流動化ビジネスへの影響ですが、 1 免許が下りるかどうかの基準がよく分からない以上、これによって新規参入が 本当にあるかどうかはまず不透明です。 2. 受託者の義務が重くなったことで、本来、資産のパフォーマンスにだけに依存していた商品性に影響が出ること。 3. 金銭債権に関して言えば、内部管理体制の整わない中小企業オリジネーターの資産の流動化が難しくなった。 4. 不動産に関して言えば、マーケットでよく見られていた、いったん実体の無い SPC に PM を委任してそこから再委任を行うという「マスター PM」形式のストラクチャーが結べなくなった。 というが、今のところ見えていますが、今後もいろいろな形で影響が見えてくると思われます。 http://www.emichanproduction.com/ -> "Finance" <<<<<<<<<<<<<<<<<< financial talk >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> さて、で、さらに踏み込んで本音で言うならば、前回の通り 「ただの導管体としての箱かしなんだから」 というスタンスのタイプの信託銀行(要は発行人の働く信託銀行)には 新規参入同様なかなかつらい改正ではあるのです。ま、みんなで何とか しますけどね:-p いろいろな所にアンテナを張りながら執筆しておりますが、 「こんなネタ教えて?」 とか、 「これってどういうこと?」 というご質問から、 「それって嘘でしょ?」 というご指摘まで、いつでも大歓迎ですのでお気軽に メールくださいね。 さて、先ほどの O 脚の話ですが(笑)、椅子に座っているときに ふっとひざが離れてしまう、ということに実に覚えのある人、 私含めて(笑)いますのね。これって足の内側の筋肉が 衰えているのが原因の一つとか。 ということで、歩くときに足の親指の付け根に意識を置いて 歩くようにしてますが、それと今週の出張とでなんとなく 太ももがさらに太くなったような… 来週はまた日本縦断の出張が控えております。 今度は今週と違って飛行機や電車での移動が待っているので、 これで ANA の来年のフリークエントフライヤーに一歩近づくかな(笑) 皆さんも、足腰を含め、健康には気をつけて! 一昨日健康診断の結果を改めて見直して、 生活改善を心に誓った shi でした(笑) ============================================== ep-finance: 発行人: shi http://www.emichanproduction.com/ メニューの "main magazine" でバックナンバーと 登録/解除をどうぞ。 melcup: 39部 emaga: 54部 Mailux: 3部 メル天: 28部 メルマ!: 24部 ============================================== 本メルマガは転送は変更を加えない限り許可ですが、 あわせて、上記サイトからの購読をお勧めください。 ----- ところで、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、 ビジネス本レビューの ep-books <http://melten.com/osusume/?m=18931&u=18930> では、今スキルアップ思案中です。 80年代や90年代のポップスの紹介をする ep-music <http://melten.com/osusume/?m=18932&u=18930> で、アンビエントハウスから派生した音楽を追いかけてます。 また、ep-update <http://melten.com/osusume/?m=18652&u=18930>で この3つをダイジェストを中心にいろいろアップデートしたことや はみ出したネタなどをご紹介して行こうと思っております。 そして、発行人のもうひとつの顔、浅草のお土産屋のお兄さんとしての 浅草ガイド、 info-asakusa <http://melten.com/osusume/?m=18835&u=18930> も、ぜひご覧くださいね。 |