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出版業界の常識・ヒジョーシキQ&A 〜デキる編集者になるための心得100〜 講師●松本京也(まつもと・かずや) 1973年生まれ、31歳。出版社勤務を経て独立、1年間フリーライターとして活動した 後、編集プロダクション・KyoProを創立。2004年1月の法人化に伴い、代表取締役・ 社長に就任。 出版業界ではぼちぼち年末進行がひと段落して、忘年会シーズンもいよいよ佳境に。 かくいう当社も、何を隠そう本日が忘年会です。例年はこの時期、色々な出版社にお呼ばれして、連日の胃もたれに嬉し苦しんでいるというパターンでしたが、今年は仕事の予定とすべて重なってしまったため、残念ながらまだ0件…。ちょうどダイエット中なので好都合と言えば好都合ですが、そういう場に出向くのは、飲んだり食べたりするのが目的ではなくて、“顔つなぎ”や“お礼参り”をするのが本来の目的(やたらに名刺を配りまくると迷惑がられることもあります)。つまり、仕方の無いコトとは言え、今年はちょっと不義理な感じになってしまったワケです。その代わりと言っては何ですが、年明けに新年の挨拶まわりにでも行こうかと考えています。ライターの頃はしょっちゅう出入りしていた出版社も、事務所(現在は会社)を立ち上げてからはスタッフのうちのの誰かが直接の担当になっているので、ずいぶんと行く機会が減りました。もちろん、重要な打ち合わせには必ず出向いていますが、実はこれまでいわゆる“営業”というものをほとんどやったことがないんですよね。創立から約4年間、常に依頼される仕事量の方が大幅に先行していたため、「企画を売り込む」とか「仕事を取ってくる」という状況には至らなかったのです。しかし来年は、「ひと味違うKyoProを見せちゃおうかな」と画策していたりします。 2月には、待望の新人が加入します。良い応募者になかなか巡り逢えず、半年ぶり にようやく行った面接に訪れたのは、元ボクサーの大学生(22歳)。その経歴にそぐわず、私が生まれて初めて「自分より緻密な人間かもしれない」と思ったほどです。 今のうちからあまりに過大な期待をするべきではありませんが、6階級を制覇したオ スカー・デラホーヤのような…とは言わなくとも、勇利アルバチャコフや徳山昌守のような堅実で粘り強いタイプの編集者になってくれればいいなと思っています。 さて、2004年も残りわずかとなりましたが、今年最後のメールマガジンをお送りします! [入門編] Q5. 「前の会社は給料がほとんど上がらなかったので辞めました。御社では年収330万円 以上を希望します」(当社の応募者Aさん) A5. ほとんどの人が学生時代に何らかのアルバイトをされた経験があると思いますが、あなたはいくら時給を貰っていましたか? ちなみに私は、大学4年間ずっと書店勤めをして、690円からスタートした時給が、卒業と同時に辞めるときには1,050円まで上がっていました。最初は学習参考書や専門書などの1コーナーのみの担当でしたが、経験を積むに従ってすべての売り場をこなせるようになり、最終的には店長の右腕的存在でした。残り2年はかけ持ちでレストランのウェイターもやって、時給は1,200円。当時にしてはなかなか良いバイトでしたが、どれだけ年月を長くやっても労働量はさほど変わらないため、金額はずっと固定のまま。…この2つの事例から考えると、アルバイトの時給というのは<職種・経験・スキル・労働量>に見合った金額、ということになるのでしょうか? いえ、一概にはそうとも言えません。ナゼなら、上記の項目は働く人の“条件”ばかりで、支払う側(雇い主)の条件が含まれていないからです。例えば収入面…「いくらの収入が見込めるから何人雇える」、例えば経費面…「収入のなかからこれだけ出費があるから何人までに抑えたい」といった部分です。それらが折り合って初めて、適性な給料が弾き出されます。それを拘束時間で割り出したのが時給であり、日数なら日給、月数なら月給というワケです。 では、会社員としての年収はどうか? 接客業のように来店客数と商品単価などの予測ありきの仕事なら時給ぐらいは換算できるかもしれませんが、年収となるとどの業種でも正確な数字を算出するのは困難でしょう。例えあなたが「○○年間この会社に勤めます」と宣言してくれたとしても、長い年月の成長度・活躍度は計り知れないからです。したがって、企業が提示する初任給などの待遇は、その会社の経験則であったり、経済状態の顕れであったりするワケです。何が言いたいかというと、あくまで希望年収を提示するのであれば、あなたが何年間でどれだけの成長をして、どれだけの活躍ができるかを証明しなければならないということです。それを判断する材料が提示できないのであれば、「前の会社の給料がほとんど上がらなかった」という離職理由は大きなマイナスポイントにさえ取られかねません。ナゼなら、「給料が上がらない」=「会社の経済状態が悪い」、「会社の経済状態が悪い」=「社長や社員が無能」…つまり、「給料が上がらない社員」=「無能」という三段論法が成立するからです。付け加えると、「前の会社が倒産」という離職理由は人事担当者から最もバツを付けられやすい例の1つです。 ここまではどの業界にも当てはまる内容ですが、こと出版においては尚更シビアです。現在、出版社で正社員募集をかけているのはほんの数社だけ。大手でさえ、中途採用の契約社員をメインに切り替えています。しかも、年収は200万円台後半がほとんど(ボーナスも無い場合が多い)。「年収330万円以上」などと履歴書に書いたら、書類審査で落選というのがオチでしょう。とくに編集者は、“来店客”を相手に“商品”を販売する役割ではなく、“来店客”を掴むためのアイデアを考えたり、“商品”を作るためのノウハウ習得やコネクション作りが主な仕事となります。だからこそ、その会社における経験と実績こそがその人自身の給料の基準となるのです。そしてアイデアやノウハウやコネクションは、ときに莫大な利益を生み出すことがあります。 そんなことをやってのける異才の人間を、会社がいつまでも安い給料のままコキ使い続けるでしょうか? 例え突出した才能が無くても、コンスタントに仕事をこなせる人間は、会社にとって重宝すべき人材です。どちらにしろ簡単には得がたいものなので、会社は惜しまず投資をするでしょう。そのチャンスを掴むためなら、最初の数年間の給料が低かろうが、どれだけ待遇が悪かろうが、きっと我慢できるはずです。ただし、その会社の将来性を見極めることが最も難しい部分なのですが…。 【心得・其の五】 「給料・待遇にこだわっている人間は、自分の限界をアピールしているようなもの」 <会社紹介> KyoPro Co.Ltd.(有限会社キョウプロ) 〒171-0021 東京都豊島区西池袋5-5-21 ザ・タワー・グランディア3205 TEL.03-5911-0231 FAX.03-5911-0230 ■創立2001年2月15日 ■従業員7名 ■平均年齢25歳(編集スタッフ) ■資本金600万円 ■売上高5,700万円(2003年度) ■「足下を見失わず、目標は常に高く!」をモットーとして、出版業界を全力で駆け上がっている編集プロダクション。現在は主に男性向けの週刊誌・グラビア誌・実話誌を手がけているが、職業・雑学・格闘技・音楽・漫画など、幅広くオールジャンルを取り扱う。 ★オフィシャルサイト『KyoPro.net』URL (FLASH版)http://www.kyopro.net/ (HTML版)http://www.kyopro.net/kyopro.html ご質問・ご意見・ご感想はこちらまで sarakaze@hotmail.com |