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タイトル:[アダルトチルドレンを描く No.5 機能不全家族のパターン]  2004/11/21


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◇[アダルトチルドレンを描く No.5 機能不全家族のパターン]
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●家族から受ける影響●

 心が柔軟で影響を受けやすい子供時代に、自分の育った家族のなか
で長い時間をかけて習得した行動、態度、思考、感情、人間関係のつ
くり方は、大人になっても自分の基礎として残っており、自分の性格
の一部となり、無意識のうちに日常の行動となって出てきやすいもの
です。

 人間は、生まれつきの素質や気質と、育った環境や人間関係と、自
分の意志や選択が、3つの大きな要素としてからみ合い、性格を作り
上げると考えられます。

 ここでは、過去に起こった出来事が、どのように自分の行動に影響
を与え、現在の問題の引き金となっているのかについて考えて行きま
しょう。


●機能不全な家族のパターン●

 機能不全な家族にはさまざまなパターンがあります。そのなかで、
人がどのような影響を受けてしまうのか、それぞれの場合について見
て行きましょう。


▽愛のないつめたい家族 

 愛のないつめたい家族の中で育つと、自分もどのように他人や子供
に愛を与えればいいのか分かりません。

 むやみやたらと表面的に愛情をくれそうな人にしがみついたりまた
反対に、誰とも人間関係が持てなくなったりします。

 親が病気がち、いつもうつに落ち込んでいた、自殺や家でがあった
などの経験をしている人は、どこかに孤独感があり、さびしさがぬぐ
いきれない場合もあります。

 見捨てられる不安にかられて、パニックに陥ったり、人を頼れない
ことも少なくありません。

 何を言っても相手にされず、聞いてもらえなかったりすれば、人は
、世の中は何を言ってもムダであると思いこんだり、自分をも否定し
てしまうことになりかねません。


▽子供を肯定しない家族

 他人や兄弟姉妹といつも比べられたり、差別されたり、悪いことは
全部自分のせいにされたりして育つと、すぐ自分は他人より劣ってい
ると思ったり、間違っていると思いこんだりします。

 または、他人が自分が悪いと思っているのではないかと疑ったり、
その思いこみから怒りを相手に爆発させたりすることも、ままありま
す。

 猜疑心から、ほんのちょっとのことを大きく感じ、防衛的になった
り攻撃したりしてしまいます。

 なにかと抑圧され、批判され、嫌みや皮肉を言われ、罪の意識をう
えつけられたり、コントロールされて育つと、自己(セルフ)という
ものが成長しません。

 自分そのままであってはいけないというメッセージを受け取ってし
まうのです。

 親の言うとおりにして、いい子にしていないと、批判され拒絶され
るという恐れは、大人になってもなかなか消えるものではありません


 ときには、自分自身が、自分に対する一番過酷な批評家になってし
まうこともあります。

 特に「こんなにしてやっているのに」とか「あなたのためだ」と親
に言われて罪の意識を植えつけられて育つと、親がよかれと思ってや
ってやっているため、親にはっきりイヤだと言うわけにもいかず、つ
い自分の本音を殺して親のいいなりになったりしてしまうのです。

 親に反抗すれば、「わがままだ」「自分一人がよければ良いと思っ
て!」と、ますますコントロールが強まったりします。

 こうして大人になった人は、にせの仮面をかぶった自分と、本当の
自分との葛藤で行きづらさを感じてしまいます。

 まだ生きづらさを感じている人は救いもありますが、親の言うとお
りに生きてしまって、疑うことなくロボットのように成った人は、自
分の人生よりも親の人生のために生きる操り人形と化してしまいます


 こういう人は弱々しく、なんでも親の言うことに「ハイ」と言って
従い、親にされたことと同じ事を自分の子供に要求して、子供の個性
をつぶしてしまったりするのですが、一見とてもできた人に見えるだ
けに、むしろ怖いのです。


▽親の期待が大きすぎる家族

 親の期待が大きすぎたり、親の見栄、親のお人形として育てられた
人も、本当の自分と期待される人物像のギャップに苦しみます。

 能力以上のことを要求されたり、自分の個性とは全く違うことを期
待されると、どうでも良いと自暴自棄になったり、自信をなくしたり
、または完璧を求めて強迫的になったりすることがあります。


▽表面だけ良く振る舞う家族

 他人の目を気にする、表面だけ良く振る舞う家族も、裏と表が違う
人間を作り上げることがあります。

 肩書きや地位、お金やブランドや商品、有名校だけが重視されて、
人間の中身はどうでもよくなってしまいます。

 名の通った学校への入学、大手の会社への入社が成功であるという
たった一本のものさしではかられる人生は、人間の幅を縮め、選択肢
の少ない、面白くもない人生を生み出します。

 他人の気持ちを思いやれる心の豊かな人間、一人一人の人格と真の
幸福を尊重する人間とはほど遠い、人に上下をつけて、軽蔑するよう
な人間になりがちです。


▽秘密や隠し事のある家族

 あまりにも秘密があったり、隠し事があったりする家族で育つと、
自分は他の人とは違うと感じるようになったり、恥の意識が強く、自
分を主張できなくなったりします。

 つかなくでもよいウソをついて他人をかばったり、自分も隠し事が
多くなったりすることがあります。

 自由にふるまったり、自由に感情や意見を出したりするのが難しく
なったりもします。

 とくに性的虐待などがあった家族では、よく「誰にも言うな」と固
く口どめされ、脅されて育つので、大人になっても人と気楽な友人間
嘉永が持てず孤立してしまったりします。


▽容姿やからだについて否定的なことを言う家族

 顔や姿についてからかわれたり、見下されたりして育つと、もちろ
ん恥の気持ちが強くなったり、自分の顔や体に自信が持てなくなりま
す。

 ムリにダイエットして摂食障害になったり、整形手術を何度もして
みたりなど、表面的な美しさのみにとらわれてしまったりすることも
ときにはあります。

 また、その反対に顔や体のことなど少しもケアをしなくなる場合も
あります。男女交際なども劣等感から、うまくできなくなる場合もあ
ります。

 治すことができない身体障害があった場合などは、からかわれたり
卑下されると、とくに強く心が傷つき、自己嫌悪に陥ったり、他人の
前に出られなくなったりします。

 また、性的なからだの成長のことに無神経に言及されるのもつらく
、自分の性を恥じたり、なるべく外に自分の性的発達を見せないよう
にと異常に気を使うようになったりします。


▽親と子供の関係が逆転している家族

 子供が大人の役を果たすような家族で育つと、子供時代の無邪気さ
を経験することができません。

 親のけんかの仲裁に入ったり、親のグチを聞かされたり、問題の相
談役になったり、親の気分を直してやろうとなぐさめたり、自分の歳
に似合わないほどの家事をしたり、親の世話をしたりして育てば、大
人になっても他人の世話ばかりする共依存者になってしまうのも不思
議ではありません。

 常に気をきかして、親のご機嫌をとって肩をもんでやったり、お茶
をくんでやったりすると、親からはほめられるので、それがたったひ
とつのアイデンティティーになってしまうのかもしれません。

 別に、親のために助けると言うことが悪いわけではないのですが、
ただ必要以上に自分の欲求を認めず、犠牲になって他人に仕えすぎる
と、大人になっても問題のある人に惹かれて、その人の世話だけで人
生が終わるというようなことになりかねません。

 親から自分と競争されたり、嫉妬されたりすれば、親に勝つはずは
ないので、絶望感にとらわれたり、裏で親を軽蔑したり、弱い者いじ
めに走ったりすることもあります。


▽子供を過度に甘やかす家族

 子供を過度に甘やかす家族で育てば、自分を適度に規制する力がつ
かなかったりします。自分の欲しいものがすぐ手に入らないと怒りを
爆発させたりする、相手の気持ちをまったく考えないナルシスティッ
クな人間になるかもしれません。

 親が何から何までやってしまい、日常の基本的な自分の世話すらで
きなくなってしまっている人も多いのです。

 あまりにも過保護に育っており、世の中に出て挫折を経験するとガ
タガタとくずれてしまうなど、精神力が弱い場合もあります。

 親が自分のひとりよがりやさびしさなどの精神的欲求から子供を溺
愛して離さなかった場合は、大人になっても一人立ちできなかったり
、親の意見を聞かないと自信が持てなかったり、マザコンになったり
など、親の手足の一部となって分化できないことがあります。


▽子供を否定する家族

 自分を否定されて育った人は、自分自身を受け入れるのが難しくな
ります。

 「おまえなんか産むんじゃなかった」などといつも言われていれば
、生きていること自体に罪の意識を持ってしまって、自殺願望も生ま
れてきます。

 また、「男の子だったらよかったのに」と自分の性を否定されるの
も、自分が女性であることへの嫌悪感や劣等感をうえつけます。

 自分は自分であってはいけないというメッセージを受け取ることは
、とてもつらいことです。人生すべてのことに暗い悲観的な視点を持
って接するようになる可能性もあります。

 また、他人から認められたいという気持ちが異常に強くなる場合も
あります。


▽依存症のメンバーがいた家族

 家族の中に依存症や共依存症の人がいた場合、大きな影響を与えま
す。

 特に、親がアルコール依存症や薬物依存などにのめりこんでいた家
族では、身体的、精神的アビューズ(虐待)が、ひんぱんに起こる可
能性があります。

 親が酔うと暴れるなど、何がいつ起こるかわからないような家族で
育てば、びくびくしたり、または自分の感情が鈍麻して、からだから
出るメッセージに気がつかなくなったりします。また、ものごとを最
初から最後まで落ちついて完成させることができないくせがついたり
、衝動的に反応したり、怒鳴り声や物音に異常に萎縮してしまったり
します。

 いつもイライラして、怒りが爆発するようになったり、バランスが
とれなくてものごとに一貫性が無く、気分が落ち込んだりして感情の
上下が激しくなったり、自分も各種の依存症にとらわれてしまうよう
なことになるといったことがあります。

 このような家族で育つと、共依存症になる人も少なくありません

(共依存のチェックリストを参照して下さい)。


▽暴力のあった家族

 非常によく見られるのは、父親から母親への身体的・精神的な虐待
や、両親のけんかを見て育った場合です。

 最近の研究では、父親によって母親が虐待されるのを見て育った子
供が示す障害が、今まで考えられていたより大きいことが分かってき
ました。

 例えば、うつ病、攻撃的な行動や非行、友達からいじめられたりつ
まはじきにされる、アルコールや薬物依存、学業成績不振、不安症に
なる率が普通の子供に比べて非常に高いことなどがわかりました。

 ある統計によりますと、境界性人格障害(ボーダーライン・パーソ
ナリティー)の60%異常が子供のとき父親の母親虐待を目撃した者
であったという数字が出ています。

 あんなにいやだったのに、大人になって自分も妻を虐待する側にな
ったり、または虐待する夫やボーイフレンドといっしょになったりし
ます。

 虐待する父と、自分や子供の身を守ろうとしない母に対する怒りは
非常に大きなもので、大人になっても、親への軽蔑や怒りが消えなか
ったりします。

 また、上手く関係が作れず、緊張した夫婦関係を築く場合もありま
す。

 祖父母と両親、親類などとのいさかいも、同じように子供に非常に
不安を与え、大人になっても、少しでも対立があると、パニックにな
ったり逃げたりして、うまく処理ができなくなってしまうことも少な
くありません。


▽子供への虐待のあった家族

 幼少の頃、自分自身が虐待を受けていたような場合、その傷はより
深く、影響もより強いものになります。

 小さな子供が身体的に虐待を受けた場合、攻撃する力もなく、逃げ
ることも許されず、恐怖におののきながら虐待を受けるしか道があり
ません。

 気を失うような感じがしたり、息が吸えなかったり、息切れがした
り、からだがふるえたり、嘔吐しそうになったり、冷や汗が出たり、
胸がドキドキしたり、しめつけられるような気がするなど、パニック
状態を経験することもあるでしょう。

 そうした状態の中では、いつもびくびくしてしまい、気楽に生活す
ることなどとてもできないため、大人になっても人生を楽しむことが
できません。顔やからだにハリがなくなって無表情な人間になってし
まうという症状もよく見られます。

 また、アビューズされることが普通であったので、何が正常なのか
、異常なのか、わからなくなってしまいます。

 性的な虐待があった場合や、異常な怒りが爆発していたり、人格を
否定するような言葉やおどしなど、ひどい精神的な虐待があった場合
も、同じような状態になります。

 特に性的な虐待を受けて育った場合、極端にセックスを嫌って大人
になっても性的な関係が上手くいかなかったり、または反対に、誰か
れかまわずセックスしたり売春に走ったりと、不安定な性生活をする
ことも少なくありません。

 自分の体についての嫌悪感、信頼していた人に裏切られた怒り、自
尊心の低下、男性不信、ひきこもりや、さまざまな精神障害が併発す
ることがあります。

 こうした人たちの中には、大人になっても、PTSD(心的外傷後
ストレス症候群)の症状を示す人が少なくありません。

 トラウマの出来事が、まるで今起こっているかのように感じられる
フラッシュバックがよく起こります。トラウマが起こったときと同じ
ような状況にあうと、身も心も反射的にパニックを引き起こしてしま
い、トラウマに似ていたり関係がありそうだと思われる場所や人を避
けようとします。

 PTSD、解離(自分が自分から離れてしまって自分ではないかの
ように感じる)、境界性人格障害(感情の上下が激しく、人間関係が
不安定になる)などの障害が起こる場合があります。

 もちろん、虐待を受けた全ての人がなるというわけではなく、先天
的な要素、虐待のひどさ、期間、虐待を与えた人との人間関係(信頼
する身近な人から受けた場合はよりひどい障害となりやすい)、まわ
りに助けてくれたり理解してくれる人がいたかどうかなどで、相当違
って来ます。

 虐待を受けた多くのアダルトチルドレンは、自分のせいだ、自分が
悪かったからだ、自分はダメだ、自分は傷物だ、自分なんか生きてい
る資格がないなどと思いこんでいることが少なくありません。

 自己評価が低く、自暴自棄になったり、暴力をふるうなど、他人を
傷つけたりして不安定で、みじめな生活をしている人や、または、そ
の反対になんの感情もなくなって、ただひたすら仕事や子供に打ち込
み他の人から離れたり、他人を軽蔑したり、自分も成長して虐待する
親になる場合もあります。

(参考資料)
『アダルト・チルドレンと癒し』(西尾和美)

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