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タイトル:Daily Drama Express 2004/09/10 世界の中心で、愛を叫ぶ (最終回)  2004/11/02


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                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2004/09/10 (Fri) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.金曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 金曜日の連続ドラマ
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タイトル 世界の中心で、愛を叫ぶ
局  名 TBS系
放映日時 金曜22時
キャスト 松本朔太郎(山田孝之)
 廣瀬亜紀(綾瀬はるか)
 松本朔太郎(緒方直人)
 小林明希(桜井幸子)
 中西光太(西洋亮)
 谷田部敏美(松下由樹)
 廣瀬綾子(手塚理美)
 廣瀬真 (三浦友和)
 松本謙太郎(仲代達夫)
 大木龍之介(田中幸太朗)
 中川顕良(柄本佑)
 上田智世(本仮屋ユイカ)
 松本芙美子(夏帆)
 松本潤一郎(高橋克実)
 松本富子(大島さと子)
脚  本 森下佳子

あらすじ ●2004年
 病院で治療を受けた明希(小林幸子)が意識を取り戻す。朔太郎
(緒方直人)は目に涙を浮かべながら「本当にもう頼むよ、明希、さ
ん」と声をかける。

 バイク事故の現場へ行き、割れた小瓶を拾い上げる朔太郎。破片で
指が切れ、血が流れ出す。その血を見つめる朔太郎。雨が降り出す。

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 −生きている者への思いは死者への思いに勝っていくという。その
残酷な事実に返せる言葉が僕にはもうない。亜紀の死と過ごした17年
が終わっていく気がした。きっと流れる血は、いつしか君の記憶さえ、
彼方へ運ぶのだろう。僕はあと何度君の名を呼ぶんだろう。あと何度
あんな朝を迎えることができるのだろう。与えられる未来と失われる
過去の狭間で君の名を呼ぶ−亜紀……
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●1987年
 空港で倒れた亜紀(綾瀬はるか)を背負い搭乗ゲートへ向かう朔太
郎(山田孝之)。その様子を見た空港関係者があわてて押しとどめる。

 結局亜紀は病院へ運ばれる。病院内のベンチでうつろな表情でいる
朔太郎。潤一郎(高橋克実)が飲みものを持ってくる。朔太郎が「亜
紀は?」と尋ねると、潤一郎は「大丈夫だ」と答える。それを聞いた
朔太郎はひとまずホッとして緊張の糸が切れ、ばったりと倒れてしま
う。

 病室で危篤状態の亜紀を、綾子(手塚理美)と真(三浦友和)が付
き添っている。亜紀がうわごとで「そ、ら……ウルル……まいて……
サ、ク……」と言う。

 翌朝、朔太郎が意識を回復すると富子(大島さと子)が付き添って
いるのが目に入る。朔太郎が「亜紀は?」と尋ねると、富子は沈痛な
面持ちで「今朝ね……」と言いだす。亜紀の死を知った朔太郎は亜紀
の病室へ駆けていく。もぬけの殻の病室を見て、朔太郎はシーツや枕
を投げ飛ばして荒れる。富子は「安らかな最後だったって。笑ってい
たって。あんたの名前を呼んでたって」と言って朔太郎を落ち着かせ
ようとするが、朔太郎は「そんなの、全部嘘だと言ってよ」と現実を
受け止められない。

 亜紀の葬儀の日になるが、朔太郎は抜け殻状態で、部屋に引きこも
ってしまう。

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 −目を閉じると亜紀がいた。このまま目が覚めなければいいと思っ
た。
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 潤一郎が部屋に入ってきて、朔太郎を無理やり葬儀場に連れて行く。
朔太郎は葬儀場の手前まで来るが、たて看板に「廣瀬亜紀享年17歳」
と書かれているのを見て、逃げ去ってしまう。朔太郎の頭上に大粒の
雨が落ち始める。

 葬儀場では顕良(柄本佑)、龍之介(田中幸太朗)、智世(本仮屋
ユイカ)、谷田部(松下由樹)らが最後の別れを伝え、花と記念品を
棺おけに入れていく。
 一方朔太郎は強い雨の中を走り続ける。朔太郎は「なんだよ、なん
で俺、生きてんだよ」と泣く。

 火葬場の煙突から煙が立ち昇るのを見ている谷田部、龍之介、智世、
顕良に綾子が一人一人に亜紀が残したテープを渡す。龍之介が朔太郎
のはないのかと聞くと、綾子は最後まで一緒にいるつもりだったから
ないと答える。谷田部、龍之介、智世、顕良の4人はそれぞれ自分宛
のテープを聴き、亜紀のことを思って涙する。

 その晩朔太郎は今まで亜紀とやりとりしたテープをすべて取り出し
て、交換日記のウォークマンでボーっと聞いていた。

 翌日、綾子と真は亜紀の遺品の整理をしている最中に一冊の絵本を
見つける。それは亜紀が入院中真島のスケッチブックをもとにひそか
に作っていたものだった。絵本を眺めながら真は亜紀の骨をウルルに
まいてやることを決める。

 朔太郎は相変わらず自室で寝転びながらボーっと亜紀のテープを聞
いていた。そこへ顕良がやってきて朔太郎を波止場に連れ出す。波止
場には龍之介と智世もいて、それぞれ朔太郎を元気付けようとするが、
朔太郎は無気力さから抜け出せない。朔太郎は「寝ていると会えるん
だ、亜紀に。夢見ているときはこれは夢だって思わないじゃん。その
うち目さめなくなったりしてさ」と薄笑いを浮かべる。龍之介は朔太
郎を殴りつけ立ち直らせようとするが、朔太郎は受け入れない。

 朔太郎が家に帰ると、富子がオーストラリア行きのチケットを渡し、
真と綾子がウルルで亜紀の骨をまくのに同行して欲しがっていること
を告げる。しかし朔太郎は「おれ、いい」と受け付けない。それを聞
いた潤一郎は「何を傷ついたふりをしているんだ。お前がとどめさし
たようなもんじゃないか。わかってたんだろ。ああもう死ぬわって知
ってて連れ出したんだろ。やりたい放題やって自分が一番かわいそう
か。悲劇のヒーローは大威張りだな。お前は亜紀さんのためじゃなく、
自分のために泣いてんだ」と朔太郎を責める。カッとなった朔太郎は
潤一郎に突っかかるが、潤一郎は朔太郎を庭に突き飛ばし、「どうし
て送ってやることひとつできない!、どうして死んだ人間の頼みひと
つ聞いてやれないんだ!、情けない」と叱り飛ばす。それを聞いて朔
太郎はようやくオーストラリアへ行くことを受け入れる。

 真、綾子、朔太郎の三人がウルルへやってくる。真と綾子は骨をま
くが、朔太郎はためらってすぐにはまけない。綾子は悲しみがぶり返
し感情的になるので、真は綾子を落ち着かせようとその場を離れよう
とし、朔太郎に「下で待っている」と言って先に行ってしまう。朔太
郎はボーっとした感じで返事もせず立ち尽くしたままでいる。

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 −なぜだか、世界が色を失っていた。あんなに青かった空も、赤か
った土も。そんな世界の中で、きっと骨だけは白く、変わらない真実
だった。
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 骨を握り締めた手をじっと見つめる朔太郎。

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 −温度もない、重さもない。吹けば飛ぶような白い粉、それが亜紀
だった。
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 膝から崩れ落ち、「亜紀ー!」と絶叫する朔太郎。

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 −僕の好きな人だった……
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 日本に戻った朔太郎は、亜紀の骨を小瓶に入れておく。そして亜紀
との思い出の品々である、テープ、写真、ウォークマンなどをすべて
箱に収め、物置にしまいこむ。

 学校で谷田部が「ちゃんと送ってあげられた、廣瀬?」と尋ねると、
朔太郎は小瓶を谷田部に見せる。朔太郎は「これが亜紀なんだと思う
と、やっぱりできなくて。ずっと持ってようかなって」と言う。谷田
部は「忘れないように?廣瀬とのこと?」と尋ねると、朔太郎は「亜
紀が、死んだことを」と答える。そして「先生、俺医者になろうかな
って。やっぱり無理ですか?」と言う。谷田部は「人を救う仕事でも
歩けど、人を看取る仕事でもあるんだよ」と諭す。朔太郎は「俺、結
局亜紀のために何もできなかった気がするんです」と思いつめたよう
に言う。谷田部は「まっ、まずは授業に出なさいよ」と言ってそれ以
上の話を打ち切る。

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 −それからの僕は、何事もなく過ごしながら、勉強に没頭した。も
ちろん入試のためだったけれど、難しいことを考えているのはありが
たかった。その間他のことを考えなくてすむから。だけど、朝おきる
と泣いている。悲しいからじゃない。夢から現実に戻ってくるとき、
またぎ越さなくてはならない亀裂があり、僕は涙を流さずにそこを越
えることができない。
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 小瓶を見つめ、「(亜紀はもう)いないって」とつぶやく朔太郎。

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 −何度も確かめて、それでもなお、ありもしない現実に期待する。
そんなことはあるはずもないのに。
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●2004年
 ずぶぬれ状態で、明希の病室に戻ってくる朔太郎。

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 −それが僕の17年だった。
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 明希はずぶぬれ状態の朔太郎をいぶかしがると、朔太郎は「落とし
て、割れちゃって、瓶。でもさこれでよかったのかなって。まいてほ
しいって言われたのに、俺が勝手に閉じ込めてきたようなもんだし」
と話す。明希はおもむろに自分と一樹を捨てた夫のことを話しはじめ
る。ひどい男だったけれど、彼がいなければ一樹はいなかったし、一
樹がいなければ朔太郎とこうしていることもなかった、そう考えると
いろんなものをもらっているんだなと思ってと言う。そして一人で子
供を育てる自信とか、人の助けを素直にありがたいという気持ちとか、
彼がいなかったことが自分を育ててくれたと思う、だから亜紀の骨が
朔太郎にがんばれって言ってくれたんじゃないのかな、朔太郎はそれ
に答え続けてきたんじゃないのかな、それはすごいことだと思う、そ
んなことは二度とないよ、かけがえのない17年をこんな形(落として
割ってまきちらしてしまったこと)で終わりにしていいの?と問いか
ける。

 朔太郎は自転車に乗り、亜紀の実家に行く。家の前に自転車を止め
ると、ちょうど買い物帰りの真に会う。朔太郎は少しおどおどしなが
ら「あの、亜紀さんに謝らせてください」と頼み、亜紀の部屋で仏壇
に向かい手を合わせる。

 海辺で真が亜紀の残した絵本を渡しながら、まだ一人らしいなと言
う。朔太郎は「はい、でもそろそろとは思ってます」と答える。真は
「もう忘れたか、亜紀のことは」と聞くと、朔太郎は「どうでしょう」
と口を濁す。真は「失礼だぞ、相手の女性に」と言うと、朔太郎は
「きっとこれから忘れていくんでしょうね、あっ、すいません」と答
える。真は「さみしいんだろう。俺もそうだ。見たくないことまで夢
にまで見てたのに、見なくなってね。そのうち思い出すのにも時間が
かかって、あの時はどうだったかと女房に確かめるようになって。で
も忘れたいのでも忘れたくないでもなくてね、人間は忘れていくんだ
よ、生きていくために」と語る。そして朔太郎を見つめ、「よくがん
ばったなぁ、サク。生死を扱う仕事はつらかったろう、もう十分だ、
ありがとう」と力強く締めくくる。朔太郎はこみ上げる涙をこらえな
がら「骨を少しだけもらってもいいですか、俺は亜紀を一度もちゃん
と送ってないんです」と頼む。

 自宅で亜紀の残した絵本を見る朔太郎。

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 ソラノシタ
 生きていくあなたへ。もしもおまえが枯れ葉ってなんの役に立つの
と聞いたら、わたしは答えるだろう、病んだ土を肥やすんだと。おま
えは聞く、冬はなぜ必要なの?すると私は答えるだろう、新しい葉を
産み出すためさ。おまえは聞く、はっぱはなんで緑なの?なぜってや
つらは命の力に溢れているからだ。おまえはまた聞く、夏が終わらな
きゃいけないわけは?はっぱどもがみんな死んでいけるようにさ。お
前は最後に聞く、となりのあの子はどこに行ったの?すると私は答え
るだろう、もう見えないよ、なぜならお前の中にいるからさ、おまえ
の足はあの子の足。
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 受け取った骨を携えて、朔太郎は自転車で亜紀との思い出の地(弔
辞を読む亜紀に傘をさしたお寺、告白をした波止場、紫陽花の丘など)
自転車で巡る。
 そして亜紀が自己ベストを出した競技場で骨を手に握り締め、「走
りたいだろう、亜紀」と話しかける。そして手のひらを開け、骨をま
く。

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 −追いつけない速度で去っていく亜紀を僕はもうつかまえることは
できない。
 生きている限り君と僕とは遠くなるばかりだろう。だけど僕は走る
ことをやめない。走り続ける僕たちの足跡は君がいた証だから。
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 「行け、亜紀!」と叫び、亜紀の骨の飛ぶ方向へ走る朔太郎。

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 −走り終わるそのときに、君に笑って会えるだろう。
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 松本写真館。朔太郎、明希、一樹の三人が写った入学式の写真。

 明希を自転車の後部座席に乗せ、一樹をおぶりながら3人乗りで走
る朔太郎。



 波止場に駆けてくる17歳の朔太郎。後ろから肩をたたき、朔太郎の
頬に人差し指を立て「びっくりした?」と笑いかける亜紀。2人で海
の彼方を見つめ、手をつないで歩き去っていく。(完)


寸  評  朔太郎は17年をかけて亜紀の死を乗り越えて、明希と一樹ととも
に新しい人生を歩もうとする気持ちになろうとする結末になりました。
そのことはよかったと思ったのですが、17年もひきずるような心の痛
手だったのですから、たとえば明希が病院に運ばれるのは朔太郎を救
おうとして、つまり朔太郎のために命をかえりみずに行動した結果と
してそうなるくらいでないと、少々説得力がないかなと思いました。
 全般として、朔太郎と亜紀のセリフがとても印象的でした。たとえ
ば空港へ向かう列車内での亜紀の「待ってたの、サクが生まれてくる
のをずっと待っていたの」というセリフなどはとても切なかったです。
ただ、そのセリフがもっと活きるためには、朔太郎と亜紀の出会いや
関係にもっと強いインパクトが必要な気がしました。朔太郎にとって
亜紀がかけがえでない存在であること、それは朔太郎が亜紀に対して
しか心を開けない人間であるといった他の人との関係とは違った部分
が必要かなと思いました。朔太郎は亜紀同様に龍之介たちともうまく
付き合えていますし、何がなんでも亜紀でなくてはダメと言う部分は
見えにくかったです。出会いのシーンもいわゆる自分でもわからない
という一目ぼれで片付けられていましたし。もっとこの人でなければ
ダメなんだというものがないと2人の間の強い結びつきが感じられな
い気がしました。
 34歳の朔太郎はドラマのオリジナルですが、あまりウケがよくない
という噂を聞きます。それは34歳の朔太郎と言う人物の魅力が弱いか
らだと思います。おそらくそれは亜紀の死後の朔太郎と亜紀の関係が
朔太郎の完全な一方通行だからということにあるでしょう。死者との
間のドラマを描くわけですからそうなるのは当然ですが、たとえば亜
紀は自分が死んだあと朔太郎にどうしてほしいのか、自分じゃなくて
他の人と幸せになってほしいのか、それとも自分のことをずっと忘れ
ないでほしいのかといった亜紀の気持ちがあり、それを朔太郎がどう
受け止めるかの葛藤がないと面白さが見えてこないと思うわけです。
亜紀は自分のことを忘れてと言ったが、自分にはそんなことはできな
いと頑なに亜紀との思い出を守ろうとするとかそういうところが見え
るとよかったのではないでしょうか?
 かなり厳しい評を述べましたが、社会現象になるほどの反響がある
のに、視聴率が同時間帯で放映されたジブリ映画に負けたり、20%を
狙っていたのに15%前後にとどまったのはどういう理由があるのだろ
うかと考えていたらこうなりました。

執 筆 者 ケン(kain_evel@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 2ヶ月半に渡って執筆させていただきました。初めてのこともありどう書い
ていけばいいのか試行錯誤の連続でした。文字で映像主体であるドラマを伝え
るのは思っていたより難しかったです。しかし個人的にはとても楽しく作業で
きました。一文一文が少々長かったりして読みづらい部分もあったと思います。
拙い文に最後までお付き合いくださった方々に感謝いたします。ありがとうご
ざいました。(ケン)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
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