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======================================================================== ━┓→ N┃→ 仮想力線電磁気学 ━┛→ ======================================================================== ------------------------------------------------------------------------ ●第68回 第3章・力線の理論(その36) ------------------------------------------------------------------------ 当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。 前回に引き続き『電極板の温度上昇』を取り上げます。 なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。 **************************************** 99.漏れによる損失 **************************************** ここで、前回のおさらいをすると、次のようになります。 運動する荷電粒子●が減速(静止)するのは、制動波という電磁波が発生するか らです。 また、電極板の温度が上昇するのは、発生した電磁波(制動波)を、電極板が吸 収するからです。 さて、そこで問題になるのは、『発生した電磁波(制動波)のうちの何割が、電 極板に吸収されるのか?』ということです。 もし、発生した電磁波の全てが電極板に吸収されるのなら、電極板は、●が失っ た(運動)エネルギーを100%受け取ることになります。 したがって、電極板の温度上昇の仕方は、速度の増加による●の運動エネルギー の増加を、よく示すものになるでしょう。 ところが現実には、発生した電磁波の一部は、電極板の外部に漏れ出てしまうの です。 このため、その分、電極板に吸収される電磁波の割合は少なくなります。 したがって、電極板は、●が失った(運動)エネルギーを、一部しか受け取れな いことになるのです。 そうなると、電極板の温度上昇の仕方は、速度の増加による●の運動エネルギー の増加を、よく示すものとは言えなくなってくるのです。 なぜなら、前回の『97.定説の問題点』の『たとえ話』で示したような「思わぬ 増加があった」という錯覚があり得るからです。 こうしてみると、電磁波が、電極板の外部に漏れ出ることによる損失というもの が、重要なポイントとなっていることが、おわかりいただけると思います。 **************************************** 100.深度との関係 **************************************** それでは、上で述べた『漏れによる損失(の量)』は、何によって決まるのでし ょうか? たとえば、●が、電極板の表面近く、つまり、浅いところで(巨視的に見て)静 止したら、どうでしょうか? 電磁波(制動波)は、電極板の表面近く、つまり、浅いところで発生することに なりますから、電極板の外部に漏れ出しやすくなります。 それ故、『漏れによる損失』が多くなり、電極板が受け取るエネルギーの割合が 少なくなります。 それでは、●が、電極板の内部まで入り込んだ場合、つまり、深いところで(巨 視的に見て)静止したら、どうでしょうか? 電磁波(制動波)は、電極板の深部で発生することになりますから、電極板の外 部に漏れ出しにくくなります。 それ故、『漏れによる損失』が少なくなり、電極板が受け取るエネルギーの割合 が多くなります。 以上のことから、『漏れによる損失』は、●が(巨視的に見て)静止する深度と 関係があることが、おわかりいただけると思います。 **************************************** 101.速度と深度 **************************************** それでは、●が(巨視的に見て)静止する深度は、何によって決まるのでしょう か? それは、●の速度です。 速度が大きいほど止まりにくいため、電極板のより深部まで入り込んでいくこと になります。 速度が大きいほど止まりにくくなるのには、二つの要因があります。 一つは、速度が大きいほど、運動量・運動エネルギーが大きくなるからです。 しかし、もう一つ、それ以上に大きな要因があります。 それは、前々回に説明した『減速抑制電気力』の影響です。 前回も述べたように、●は、電極板内の荷電粒子からの電気力を受けて減速(静 止)します。 ところが、●は運動しているため、それとは逆向きの電気力、すなわち、『減速 抑制電気力』が誘導により生じます。 言うまでもなく、『減速抑制電気力』は、●の減速を妨げる働きをします。 そして、『減速抑制電気力』は、速度が大きくなるほど、強くなります。 このため、速度が大きくなるほど、●は減速(静止)しづらくなるのです。 以上のことから、●が(巨視的に見て)静止する深度は、速度と関係があること が、おわかりいただけると思います。 **************************************** 102.速度との関係 **************************************** 以上の話を整理すると、次のようになります。 荷電粒子●の速度が小さい 荷電粒子●の速度が大きい ↓ ↓ 減速抑制電気力が弱い 減速抑制電気力が強い ↓ ↓ 止まりやすい 止まりにくい ↓ ↓ 電極板の表面近くで静止 電極板の奥深くまで進入 ↓ ↓ 制動波の多くが電極板外に漏出 制動波の多くが電極板に吸収 ↓ ↓ 電極板の受け取り分が小 電極板の受け取り分が大 ↓ ↓ 温度上昇が小 温度上昇が大 これが、速度が小さい場合に比べて、速度が大きい場合に、温度上昇の仕方が異 常に大きくなる理由です。 つまり、速度の違いにより、●の運動エネルギーだけではなく、『漏れによる損 失』も違ってくるため、電極板の受け取り分の違いが、予想以上に大きくなって しまった、というわけです。 このように、『電極板の温度上昇』も、『質量の増加』などという考え方を用い ることなく、電磁気現象として説明することができるのです。 **************************************** 103.補足のたとえ話 **************************************** ここで、補足のために、もう一つ『たとえ話』をしておきたいと思います。 損失というものは、時に、差を拡大するものです。 その最もわかりやすい『たとえ話』として、税金の話を取り上げてみたいと思い ます。 税金は、納める(とられる)側からすれば、損失ですよね。 日本では、累進課税といって、豊かな者には税率を高く、貧しい者には税率を低 く課税しています。 こうすると、貧富の差が縮小されます。 それでは、逆に、豊かな者には税率を低く、貧しい者には税率を高く課税したら どうなるでしょうか? 豊かな者は、損失が減り、ますます豊かになります。 一方、貧しい者は、損失が増し、ますます貧しくなります。 それ故、貧富の差が拡大されますね。 『電極板の温度上昇』も、これと同じです。 豊かな者 → 速度が大きい場合 貧しい者 → 速度が小さい場合 貧富の差 → 温度上昇の仕方の違い と置き換えてみて下さい。 そうすれば、速度が小さい場合に比べて、速度が大きい場合に、温度上昇の仕方 が異常に大きくなる理由が、おわかりいただけると思います。 ======================================================================== 発行者 : tarkun(たーくん) mailto:tarkun2@yahoo.co.jp 配信 : MailuX http://www.mailux.com/ バックナンバーの閲覧、購読の解除、配信先の変更は、下記のHPへ。 http://www.f8.dion.ne.jp/~tarkun/mm/mailux.htm 購読の解除や、配信先の変更は、御自分でお願いします。 ======================================================================== |