メルマガ:屋久島発 田舎暮らし通信
タイトル:屋久島発 田舎暮らし通信  2004/09/25


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  2004/09/25
『世界自然遺産の島』   屋久島発・田舎暮らし通信(第112号)

      http://www.yakushimapain.co.jp/  屋久島パイン株式会社
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このメールマガジンは、北海道から屋久島に移住し、現在弊社屋久島支店の社員が
本人の移住経験を踏まえまして、屋久島の日常を発信しています。


●ある休日に

鹿児島市へ行くために、高速船のチケットの予約をしようと思った。
安房港から出ている朝一便に乗り、帰りの便も安房港入港で、夕方着く便がある
ので、充分日帰りは出来る。
ところが、「満席です。乗りたい場合は、当日並んでキャンセル待ちをしてくだ
さい。」といわれた。
「キャンセル番号一番なら乗れますか?」と、聞いたところ「それは解りませんが、
出航は7時なので、6時から入り口が空きますので、キャンセル待ちしてください。」

当日、余裕を持って5時から並ぶことにした。
屋久島でそんなに早く並ぶ人はいないだろうと、当然私が一番乗りだと思っていた。
私の家から安房の港まで、30分もあれば着く。
駐車場に車を止めて、すがすがしい朝の空気を改めて吸った。
港の入り口の方を見ると、一人待っている人がいるではないか。
「まずい、先を越されてしまった。もっと早くくればよかった。」と思った。

おそるおそる「何時から待っているのですか?」と聞いてみた。
「昨日からです。」と、学生風のおとなしそうな男の人が、大きいカバンを抱えなが
ら言った。
「船に乗るために徹夜したんですか?」と私が尋ねると、「昨日屋久島に着いて、近
くの民宿に泊まろうと思ったのですが、満室だったので、どっちみち朝一番の便で
帰らなければいけないので、その辺で野宿したのです。」ということだった。

いろいろ話しているうちに、屋久島へ来たのは急なことだったらしい。
会社員の方で、休みが取れたので、縄文杉に会いに行きたくなって来たのだという。
メディアなどで情報が行き届いているとはいうものの、縄文杉に簡単に行けること
が出来ると思ってしまうのは、どうしてだろう。
それほど、身近に感じてしまう存在なのか。
深い深い山奥に、縄文杉を見るために、往復8時間の登山をすることを省略して、
スゥ―と行けるような錯覚を覚えるのか。

その人は、屋久島に来るまでの道のりで、お金を節約したそうだ。
安い交通手段を使って。
屋久島までたどり着いたのが、昨日の夕方になってしまったという。
それで一晩だけ屋久島にいて、次の日の朝帰ってしまうなんて。
本当に、何にも見ていないという。
「屋久島の地に足をつけたというだけでも、友達に自慢できます。」と、うれしそう。
携帯電話を、あれこれ操作している。
船内では電源を切ることになっており、その為、専用の電話が設置してある。

6時になる頃、他にもキャンセル待ちの人が、集まってきた。
キャンセル待ちの番号を書いた紙を渡される。
結局キャンセル待ちで乗れたのは、その人と私の二人だけだった。
しかも、船の中でも隣同士の席。
船酔いのする私は、話し続けると酔いそうなので、寝たふりをした。
そしたら、本当にぐっすり眠ってしまう。
気がついたら、船は鹿児島市の港に到着する時間となっていた。
乗り物に乗ると眠くなるのは、どうしてだろう。

男の人は、「これから飛行場に行くまで時間があるので、その辺を探索します。」と
いって歩き始めた。
どこから来たのか、名前も聞いたけど忘れてしまった。
「僕の名前は珍しい名前だから、誰も覚えてくれないのですよ。」と言うとおり、本
当に全く思い出せない。
交通手段を安く上げる、そのために乗り継ぎなどの無駄な時間を費やしてしまい、
肝心の屋久島で、何にも見ることが出来なかったというのは、なんともったいない
話だ。
人事ながら、多少の下調べをしたほうが、もっと楽しめると思う。

さて、久しぶりに、人の多いところに来た私。
用事を済ませ、町の中を歩いていると、やたらに排気ガスの匂いが気になる。
それと、公衆電話も少なくなったと思う。
屋久島でも、公衆電話は数が減った。
携帯電話を持たない人は不便だろう、とちょっと心配になるくらい。
携帯電話といっても、万能ではない。
圏外になったり、充電し忘れで電池切れ、持って行くことを忘れたり、紛失したり
と。
それに携帯電話を持たない年齢層の人が、緊急のとき使えないというのは、どうだ
ろう。
利用する人が減れば、採算面で公衆電話が撤去されるのは、仕方ないことかもしれ
ないが。

利用者にありがたい無料公衆電話の「モシーボ」(電話機能付き情報検索端末)。
まだお目にかかったことはないが。
人の多く集まる場所に、設置される公衆電話。
15秒の広告が流れて、それを見た後で、無料で通話をすることが出来るという。
一般電話へなら9分も話せる。
携帯へなら1分。
都心部での設置。
しかし、人の少ない地方では、普及はしづらいだろう。

帰りの船の中で寝ていたら、知り合いのおばあちゃんが声をかけてきて、「操作が簡
単なものはあるかしら。」と、携帯電話の購入の話をしていた。
公衆電話が、少なくなったからなのかどうかはわからないが。
そうこう話しているうちに、高速船は安房港に着いた。
船から下りて、携帯電話の電源を入れて時間を見た。
6時を回っていた。
私にとって、携帯電話は時計代わりにもなっているのだった。



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発行責任者  角谷和雄   kakutani@yakushimapain.co.jp
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屋久島支店       鹿児島県熊毛郡屋久町原914番地
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