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======================================================================== ━┓→ N┃→ 仮想力線電磁気学 ━┛→ ======================================================================== ------------------------------------------------------------------------ ●第64回 第3章・力線の理論(その32) ------------------------------------------------------------------------ 当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。 前回に引き続き『ブレーキ電気力』についての解析です。 なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。 **************************************** 88.電磁誘導 **************************************** 超光速への加速を阻む『ブレーキ電気力』は、磁電誘導と電磁誘導という二種類 の誘導の組み合わせによって生じます。 前回は、磁電誘導により磁界が生じる現象の解析を行いました。 今回からは、その磁界から電磁誘導によりブレーキ電気力が生じる現象について 解析を行います。 まずは、前回求めた磁界をもう一度記してみましょう。 Hox' = 0 Hoy' = 0 Hoz' = ( v・y・q ) / ( 4・π・( r ^ 3 ) ) ただし、 r = ( ( x ^ 2 ) + ( y ^ 2 ) ) ^ ( 1 / 2 ) 上記の式からもわかるように、磁界Hoz'は x(と y )を含む関数です。 ですから、 x(や y )が変化すれば、磁界Hoz'も変化します。 一方、加速される荷電粒子●と、電極内の荷電粒子○は、相対運動しています。 (前回の図を参照してください。) したがって、x は変化します。 以上のことから、磁界Hoz'が変化することがわかります。 さて、磁界Hoz'が変化するということは、磁力線の本数が変化する、ということ です。 そして、磁力線の本数が変化するためには、磁力線が移動(運動)しなければな りません。 磁力線の移動が起これば、磁力線が横切っていくことになるわけですから、電磁 誘導により、電気力が生じます。 こうして、ブレーキ電気力が生じるわけです。 さて、この電気力を求めるためには、磁力線の(相対運動)速度を求める必要が あります。 そこで重要になってくるのが、次に述べる『力線の連続の式』です。 **************************************** 89.力線の連続の式 **************************************** 『力線の連続の式』については、第39〜41回で説明しましたので、そちらを 参照してください。 ここでは、結果だけを記すことにします。 ( ∂ Hoz' / ∂t ) = - ( ∂( Hoz'・vbz'x' ) / ∂x' ) - ( ∂( Hoz'・vbz'y' ) / ∂y' ) ちなみに、vbz'x'とvbz'y'は、それぞれ、磁力線の速度のx'成分とy'成分を表し ます。 この式を(3・30・1)式としましょう。 なお、磁界の成分には、この他に、Hox'とHoy'がありますが、いずれも 0 ですの で、力線の連続の式を考える必要はありません。 さて、(3・30・1)式には、vbz'x'とvbz'y'という二つの速度の項があります が、実は、後で説明しますが、この問題の場合、磁力線の性質より、 vbz'x' = 0 となるため、(3・30・1)式は、 ( ∂ Hoz' / ∂t ) = - ( ∂( Hoz'・vbz'y' ) / ∂y' ) となります。 この式を(3・30・2)式としましょう。 この(3・30・2)式に、前回求めた磁界Hoz'を代入して得られた方程式を解く ことで、磁力線の速度vbz'y'が求まることになります。 **************************************** 90.磁力線の性質 **************************************** さて、それでは、上で後回しにした『磁力線の性質』について説明しましょう。 それは、 『電荷(からのびた電気力線)の運動によって生じた磁界を表す磁力線は、電 荷の運動方向には動かない』 というものです。 たとえば、下図のように、電荷◎が直線L上を右方向へ運動している問題を考え てみましょう。 ━━━━━━━◎⇒━━━━━━L すると、直線Lの回りに磁界が生じます。 この磁界を表す磁力線は、直線Lを中心とし、直線Lに垂直な円の円周、すなわ ち、環状になります。 /\ /\ │ │ │ │ ━━━┿━┿━◎⇒━┿━┿━━L │ │ │ │ \/ \/ この図は、磁力線が環状であることがわかるように、少し斜め方向から見た様子 を描いたものです。 なお、テキスト・アートの限界ゆえ、形が歪んでいる(環が角張っている)こと を御了承願います。 さて、電荷◎の右側では、電荷◎が近づいてくるにつれて、磁界の強さが強まり ます。 つまり、磁力線の本数が増えます。 これは、どこかから磁力線がやってきたことを意味します。 では、それらの磁力線は、一体、どこからやって来たのでしょうか? もし、磁力線が横方向に動いたのだとしたら、磁力線(の環)が、空間のどこか で、突然、発生したことになります。 しかし、力線が勝手に発生することは、許されないことです。 同様に、電荷◎の左側では、電荷◎が遠ざかるにつれて、磁界の強さが弱まりま す。 つまり、磁力線の本数が減ります。 これは、磁力線が、どこかへ行ってしまったことを意味します。 では、それらの磁力線は、一体、どこへ行ってしまったのでしょうか? もし、磁力線が横方向に動いたのだとしたら、磁力線(の環)が、空間のどこか で、突然、消滅したことになります。 しかし、力線が勝手に消滅することは、許されないことです。 このように、磁力線が横に動いたとすると、矛盾が生じてしまうのです。 もっとも、『電荷◎と一緒に磁力線も(横方向に)動く』とすれば、上記の矛盾 は解決できますが、別の問題で矛盾が生じます。 それは、電荷◎が加速したり、減速したりした場合です。 電荷◎の速度が変われば、磁界の強さも変わるため、磁力線の本数も変わらなけ ればなりません。 それ故、もし、磁力線が電荷◎と一緒に動くならば、本数が変化するためには、 やはり、磁力線の発生・消滅が起こることになってしまいます。 これは、許されないことです。 というわけで、磁力線が横方向に動くとすると、どうしても矛盾が生じてしまう のです。 ですから、電荷◎の運動方向と同じ横方向には動かない、ということになるわけ です。 そもそも、磁界は、電荷◎の横方向の運動によって生じたのですから、これは妥 当な結論であると言えるでしょう。 以上のことから、こうした問題では、磁力線は、電荷の運動方向とは垂直な方向 に動くことになるわけです。 磁力線の本数の減少は、磁力線の環の大きさが無限小になる現象が、次々と起こ った、と説明されます。 / ̄ ̄ ̄\ │ ↓ │ │→ ←│ ⇒ ・ │ ↑ │ \___/ 向かい合った部分の磁界の向きは逆向きなので、磁力線の環の大きさが無限小に なると、打ち消しあってゼロになるわけです。 / ̄\ ↑ ↓ ↑+↓=ゼロ \_/ 同様に、磁力線の本数の増加は、磁力線の無限小の環が大きくなる現象が、次々 と起こった、と説明されます。 / ̄ ̄ ̄\ ↑ │ │ ←・→ ⇒ │ │ ↓ │ │ \___/ このように、磁力線が、電荷の運動方向とは垂直の方向に動くことで、磁力線の 本数の増減、すなわち、磁界の強さの変化が説明できるのです。 以上のように、磁力線は、電荷の運動方向には動かず、それとは垂直な方向に動 くのです。 このため、巨大加速器の問題でも、磁力線の速度のx'成分であるvbz'x'はゼロに なり、力線の連続の式は(3・30・2)式のようになるわけです。 ======================================================================== 発行者 : tarkun(たーくん) mailto:tarkun2@yahoo.co.jp 配信 : MailuX http://www.mailux.com/ バックナンバーの閲覧、購読の解除、配信先の変更は、下記のHPへ。 http://www.f8.dion.ne.jp/~tarkun/mm/mailux.htm 購読の解除や、配信先の変更は、御自分でお願いします。 ======================================================================== |