メルマガ:ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア(ハーレム)
タイトル:NYBCT#299/映画コラテラル  2004/08/18


今回はロングバージョンです。
miniバージョンは【原則・月水金】にお届け。
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         New York Black Culture Trivia #299
    ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア

  黒人なのに“地味”に勝負する役者ジェイミー・フォックス
           「コラテラル」

           2004/08/18
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 ジェイミー・フォックス主演の最新作『コラテラルCollateral』
を観た。……こんな書き方をすると、映画会社は喜ばないだろうな。
一般的にはもちろん「トム・クルーズ最新作」ということになって
るから。ただし、「共演のジェイミー・フォックスがトム・クルー
ズと互角の演技」というレビューがすでにあちこちの新聞や雑誌に
出ている。「互角」? いやいや、それ以上だと思うけど。


 今回、トム・クルーズはリチャード・ギアばりの白髪に変身し、
スタイリッシュなスーツを着こなすクールな殺し屋ヴィンセントを
演じている。ノートブックで標的のデータをチェックしながらLA
市内をタクシーで回り、一夜のうちになんと5人を殺すのだ。


 そんなヴィンセントをたまたま拾ってしまった不運なタクシー運
転手が、ジェイミー・フォックス演じるマックス。マックスは病気
の母親の面倒を見ながら12年間タクシーを走らせてきた真面目な
男。


 つまり、キレイ好きという以外にこれといった特徴もない、ひた
すら地味な男が、冷血殺人マシーンを乗せて一晩中、死のドライブ
をするはめになるのだ。タイトルの『コラテラル』とは「巻き添え」
という意味。


 余談:この映画でトム・クルーズが殺す予定の5人には白人、ラ
ティーノ、アジア系、黒人がバランスよく含まれている。なかなか
ポリティカリー・コレクトな映画である。


 さてさて、これまで常にオール・アメリカン・ボーイ(*2)を演
じてきたトム・クルーズにとって、外観はクールで中身はクレイジー
な殺し屋とは「おいしい」キャラクターだ。とことん演じ切ればア
カデミー賞ノミネートも可能だったと思う。


 ところがジェイミー・フォックスの「ジミ男」ぶりが凄まじく上
出来で、トム・クルーズの影がかすんでしまった。映画を見終わっ
た後も、銀髪のトム・クルーズではなく、銀ブチ眼鏡をかけたジェ
イミー・フォックスの押さえた演技(「な、な、な、なんなんだよ、
これは……」と狼狽しつつ、グチる)がじわーんと余韻を残す。


 ジェイミー・フォックスの本業は、実はコメディアン。ヒネリな
しの直球系ギャグに物まねと歌を添えて笑いを取るタイプ。わたし
的にはキツいジョークで黒人社会を斬りまくるクリス・ロックの方
が良いと思うけど、アメリカでは分かりやすいギャグはウケがいい
のだ。


 ところが、アメフト映画『エニイ・ギブン・サンデー』(95/
監督:オリバー・ストーン、主演:アル・パチーノ、共演:LLクー
ルJ)での選手役、 モハメッド・アリの伝記映画『Ali』(01/監
督:マイケル・マン、主演:ウィル・スミス)でのセコンド役によ
り、本業よりも演技に才能があることが発覚。それまで何本かのシッ
トコム(TVコメディドラマ)や映画で騒がしいか、または間の抜
けたキャラクターを演じてきたジェイミー・フォックスが、役者と
して強い印象を観客に与えた始めた。


 『Ali』を監督したマイケル・マンも驚くと同時に感服したのでは
ないかな。だからこそ、今回の『コラテラル』でジェイミー・フォッ
クスを再度、使ったのだろう。


 実はジェイミー・フォックスは昨年、テレビ映画でかなり難しい
役に挑戦している。『Redemption(贖罪-しょくざい)』(03)
だ。実在するロサンゼルスのギャング団クリップス(*2)の創始者
トゥーキー・ウィリアムズの人生を、これまた押さえに押さえた演
技で渋く演じ切った。


 さて、役者として今後もますます期待大のジェイミー・フォック
スの次作は、今年亡くなったレイ・チャールズの伝記映画。後年の
レイ・チャールズを演じるにはまだ若すぎる気もするけれど、レイ・
チャールズのイカれた陽気さはうまく演じてくれそう。なにより音
楽もかなりこなせる人だしね。いやいや、来年の公開が今から本当
に楽しみ、楽しみ。
http://www.availablelightphoto.com/portraits_charles.html


*1=「All American Boy」とはアメリカでもっとも好まれるタイ
プの若い男性を指す。気さくで明るい性格、さわやかな笑顔、スポー
ツが得意などなど……要するに「トップガン」「ア・フュー・グッ
ドメン」「ザ・エージェント」などのトム・クルーズ


*2=クリップスは青のバンダナ、対抗するブラッズは赤のバンダナ
を着用する。日本の「カラーギャング」の原形だが、日本のそれと
は比較にならないコワさ


コラテラル公式サイト(日本今秋公開予定)
http://www.collateral-themovie.com/


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