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久々のロングバージョンがブラックカルチャーネタじゃなくて「ラ ティーノ特集」だからって解約しちゃダメよ。ラティーノって黒人 ととても近い関係にあるのだから。ちなみにブラックカルチャーネ タはこちらにあります。 http://www3.diary.ne.jp/user/310766/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア mini #292 ラティーノについての、1日で3つのお話 2004/08/01 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (その1/映画祭) ニューヨークでは今、毎年恒例の「ラティーノ・フィルム・フェ スティバル」が開催中だ。これはラティーノ監督&俳優によって、 ラティーノ文化をテーマに作られた作品を上映する映画祭。長編、 短編、ドキュメンタリー、海外作品の計63本が、7月27日から 8月1日の5日間に渡って上演されている。 アメリカ在住のラティーノといってもプエルトリコ系、ドミニカ 系、メキシコ系、キューバ系などさまざま。作品の舞台もニューヨー クもあれば西海岸もあるし、ドミニカやメキシコでロケをされたも のもある。作品のストーリーも都市部のラティーノ・コミュニティ に於ける貧困や犯罪を取り上げたものから、幻想的な恋愛ものまで いろいろ。 先週は長編「107th Street」を観た。これは主にドミニカ系が多 く住むウエストハーレム107丁目とアムステルダム・アベニュー を舞台にした、“人生のひとコマ集”ともいうべき作品。 恋人と別れたばかりの青年が取り憑かれたように近所に住む若い 女性たちの電話を盗聴する。盗聴されている女性たちのそれぞれの 生活。同時進行で描かれる、107丁目の歩道にイスとテーブルを持 ち出し、毎日のようにドミノというゲームに興じている男たちのこっ けいなエピソード。 ニューヨーク市立大学の映画科の同窓生だった監督と俳優たちが 作った低予算映画で、洗練された作品とは言い難い。けれどニュー ヨークに暮らすラティーノたちの暮らしぶり〜恋愛、家族の在り方、 宗教〜などを垣間見ることができる。 今日は5本の短編を観た。田舎町でトレーラーハウスに住む若く 貧しいカップルと、ラティーノたちが必ずといっていいほど車のダッ シュボードに飾る聖人の人形の物語「廃車場の聖人Junkyard Saints」。じんわりとした味わいのある作品だった。 ニューヨークのクイーンズ区で、暴力、裏切り、麻薬に飲み込ま れていく青年の一日を描いた「シャンデリアLa Arana」。同じニュー ヨークのラティーノ地区であっても、マンハッタンやサウスブロン クスとはまた違った雰囲気がクイーンズにはあるようだ。 メキシコシティーに暮らすアメリカ白人青年が、たったひとりで 呑気な反ブッシュ・キャンペーンを繰り広げる「白人のマラソン Gringoton」。マイケル・ムーアの思いっきり気の抜けたバージョ ンという感じで楽しめた。 ちなみにもっとも観たかった「La Sueno Americanoアメリカン・ ドリーム」は見逃してしまった。ニューヨークのラティーノたちの 中ではもっとも古い歴史を持つプエルトリコ系と、もっとも新しい グループであるメキシコ系の対比を描いたドキュメンタリー。残念! どの作品も、本編の始まるまえにラティーノ作家からのメッセー ジが上映される。今年はメキシコ系男性が登場し、まったくスペイ ン語訛りのない標準英語で(つまり高等教育を受けているというこ と)、「西海岸の金持ち白人の子はメキシコ人の乳母に育てられて スペイン語を覚える。ぼくたちメキシコ人は公立学校に通って英語 を学ぶ」「でも恋愛の場ではスペイン語のささやきのほうがずっと ロマンチックで効果的だ。英語で『やぁ、どうだい?』なんて言う よりよっぽどいい」などと、知的ユーモアたっぷりに語る。 ちなみに一昨年は、映画のエンドクレジットを模した画面が流れ、 それをよく読むとラティーノ俳優の役どころは犯罪者か娼婦ばかり、 というものだった。 (その2/万引き) 映画を見終わってから、映画館の近くのスターバックスでコーヒー を飲んだ。場所はマンハッタン・イーストサイド59丁目で、オフィ ス街と、超高所得者街の交わるエリア。スターバックス店内の客も ほとんどが白人だった。 そこへひとりのラティーノ青年が入ってきた。なんだかそわそわ した様子で店のいちばん奥へと向かった。トイレに急いでいるんだ ろうと思い、とくに気にも止めなかった。しばらくすると戻ってき て、スターバックスのオリジナル・カップを置いてある棚の前で立 ち止まった。相変わらず落ち着かないそぶりだったけれど、私はや はり何も気にせず、読みかけていた映画のパンフレットに視線を戻 した。その次に何気なく顔をあげると、ラティーノ青年が売り物の サーモカップ(ステンレス製の保温機能付きのカップ)を、自分が 着ているTシャツの下に潜り込ませた瞬間だった。そして彼と私は 目と目が合ってしまった。 彼は店に入ってきた時からそわそわと目線が泳いでいたので、私 に見られてさらに動揺したのかどうかは分からなかった。ただ、彼 もニューヨーカーだ。店員でもない限り、他人の万引きにいちいち 声を上げる人間がそんなにはいないことは知っている(*)。青年 は、そのままあっさりと店を出ていった。 (*)=他人に危害を加えている場合は別だけれど、コーヒーカッ プ程度の万引きを店員に通報して犯人に逆恨みをされるのは得策で はない。加えて、青年の落ち着かない態度と、盗んだところでどう にもならないモノを盗んでいることから、彼が麻薬でハイになって いる可能性も高いと推測した。 (その3/有罪!) こんなちょっとした体験のあと、地下鉄6番線でスパニッシュハー レムに行き、壁画アーティスト、ジェームズ・デラヴェガのギャラ リーに寄った。 デラヴェガ逮捕の件は、ミュージック・マガジン7月号に書き、 ホームページの以下には写真もアップしてある。 http://www.nybct.com/photo6.html http://www.nybct.com/photo6-2.html かいつまんで説明すると、デラヴェガは建物の壁にグラフィティ を描いているところを現行犯逮捕され、「グラフィティは公共物破 損かアートか」を裁判で係争中。とはいえ、有罪であることはすで に確定していて、その量刑(懲役刑か執行猶予か、もしくは地域奉 仕かといった刑罰の内容が言い渡されること)が29日に出されて いるはずなのだ。最悪の場合は懲役6ヶ月。 ウエブサイトに量刑がアップされていないので、直接ギャラリー に行き、本人か(懲役刑を受けていなければ!)、息子のアーティ ストとしての生き方を強力にサポートしている母親、もしくは支援 者に話を聞こうと思った次第。 今日は本人の姿は見当たらず、いつものように母親と支援者の女 性がギャラリーの前の歩道にイスを持ち出し、座っていた。ふたり によると、デラヴェガの弁護士が判事に「情状酌量の陳情ための準 備期間が欲しい」と頼み、判事もそれを受け入れて量刑日を10月 に延期。 デラヴェガのギャラリーには、子どもが書いた手紙のコピーが置 かれていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私のインスピレーションを逮捕しないで Karmenife Gomez Paulono(11歳)ハーレム在住 私のヒーローを逮捕しないで 私の友だちを逮捕しないで なぜかと言うと、彼は私のインスピレーションだから 私にアートで自己表現することを教えてくれた人を逮捕しないで そして私も逮捕して なぜなら私も床とコンクリートに自分のチョークで絵を描いたから 私たちのデラヴェガを自由に (デラヴェガの似顔絵) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー デラヴェガはスパニッシュハーレム&サウスブロンクス地区より 州議員に立候補することを表明した。 ============================== ■発行人:堂本かおる Keidee@earthlink.net http://www.nybct.com ============================== ■登録/解除の方法 http://www.nybct.com/7-5.merumaga.html このメールマガジンは上記URLよりいつでも登録/解除可能です。 ============================== |