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■======================================================2004/06/10=■ 「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.41 ■=================================================================■ 「徒然に思う断章」 長崎の衝撃的な事件が起こってから10日が経ちました。代理人は精神鑑定 を要求するとのことですが、「果たしてそういうことなのか?」という率直な 疑問も持ちます。 少し前に書いた今回の本文では「分からない」が正直なところと告白してい ますが、今の時点ではそうとしか言いようがないですね。しかし、きのう会っ たさる元文部官僚氏は「人を介した意見としてだが、起こるべくして起こった のではないか」とも話しておりましたな。バーチャルな世界の際限のない発展 が、そう仕向けているということのようです。 でも、どうなのでしょう。私たちの感性や情感のなかに、果たして子どもた ちの未来のために、“利潤追求第一義”の姿勢を少しでも改めようとの気持が あるのかどうか。次から次に出てくるPC機能付きのオモチャや、ゲームが満 載されたケータイなどを見るたびに思いますね。ケッ! 訳の分からない子ど もを作り出しているのは、大人自身なのではないかと……。 □■□ 「風のひとり言」その40□■□----------------------------------- 「北鮮、年金、小学生殺人」 小泉首相を「評価する」というのは 皮肉なのかどうか? 北鮮、年金……などと書くと、何やら「三題噺」めいてしまいます。しかし、 決してそういった意図ではありません。国情が揺れて、さまざまな動きがあり ましたが、収斂してたどり着いたのは、「代わる人がいない」という小泉評価 と年金法案成立の虚しさだけです。何時もながら、「この国はどこに行こうと しているのか?」と思わざるを得ない心境です。 話を長くしないように、今回のこの3つのテーマについて、ごく手短に自分 の意見を述べて終えるようにしたいと思います(エっ? それでも長いって?) 。 まず、拉致被害者家族の帰国について。5人の方だけでも、とりあえず帰れ たことは、多くの国民が反応したように、大変に嬉しいことであるのは間違い ありません。しかし、家族会が言うように、これを象徴的な“幕引き”として、 「これ以上追及しません」では困るわけです。 それなのに、今回、国民のかなりの割合が見せた家族会に対する冷たさは何 なのでしょうか。この温度差は、後から問題にはなってくるだろうと首相帰国 時から思ってはいましたが、案の定でした。私の歳若い友人まで「満富さん、 あの連中の言うことはヒドイ。許せないですよ」とハッキリ話すことに驚きま した。どうも、イラク人質事件の被害者3人(2人?)と同様に、彼らは情緒 の面で日本国民を敵に回してしまったようです。 今でも、「大局的な見方をしろ」という意見に代表される、相対的に拉致事 件を極小化しようとする動きがありますが、私は個人的に真っ向からこの動き に反対します。 やはり、白昼、いきなり自分の家族を連れ去られた人間の悲痛な叫びには、 どこまでも耳を傾けるべきなのではないでしょうか。確かに、解決に向けた方 法論の問題はあると思いますよ。しかし、ここに来て、日本人はあまりに冷た い。私にはそう思えてしまいます。 しかも、小泉純一郎首相は5月28日、朝鮮総連第20回全体大会にあいさ つのメッセージまで寄せた――。この一事の重大さ、意外さについて、マスコ ミはまったく報じていませんが、考えようによっては驚天動地だ。だって、テ ロを行った国に対して、「これからもよろしく」と頭を下げたのも同然なので す。北鮮の要人らが手を叩いて喜んだのも、無理からぬことでしょう。 年金法の審議も デタラメの極 年金法案のことに話を移しましょうか。これまでにも何回か、この法律のい い加減さには言及しているので、あまりクドクドとは言いません。しかし、「 将来にわたって安定的な制度の枠組みができた」(神崎公明党党首)なんてい うのは、全くの嘘っぱちですから、そこのところは指摘しておきましょう。 まず、これまで厚生年金保険料率は年収の18・30%(労使折半)、国民 年金のそれは1万6900円を上限とすると、政府は何回も強調してきていま す。しかし、これは全くのウソです。 報道もされているように、国民年金法にはこの限度額を「16年度価格」と する但し書きがあり、実際の保険料は賃金上昇率などが加味されるため10年 もすると、2万円を超える可能性が残されているのです。同様に、給付水準だ って「50%以上」なんていうのは、反故を前提とした約束のようなものでし ょう。 そもそも、制度設計の前提となっている数値が極めていい加減なものである ことは、前回のメルマガでも指摘したとおり。「合計特殊出生率」(現在1・ 32)が、2050年に1・39まで上がると言われてにわかに信じられます か?(これはいみじくも、また、1・29まで下がりましたね)。これは、同 じく前提にしている物価上昇率も同じなのです。 極めつけは、国民年金保険料の未納率の改善について。現在、37・2%ま で上がっている未納率が、何と平成19年度には「目標」の20%まで下げら れることを前提にしているのですよ。ヒェーという感じですな。国会審議を見 れば、今後の未納率が上がることはありこそすれ、下がることなんてあり得な いと思うけどねぇ〜。 実体のない 人間関係は狂気を生む 最後に長崎の事件について、簡単に触れておきます。 とかく、大きな事件が起きる度に、多くの反応が「信じられない」「まさか、 こんな子が……」ということになりますが、今回は私も全く同じ反応しかでき ません。途方に暮れるとはこのことでしょうね。 しかし、何とも驚いたことの一つは、ネット社会がここまで浸透していたの かということ。今一つは、匿名性の影で、この年代の少女たちが「ウゼー」と か「ジコマン」とか……何とも私たちの想像を超える語彙を持っている(早熟 さに驚く部分も多い)こと、使用している事実でしょう。これは、皆さんも納 得してくれると思います。 それ以外のことは、正直分かりません。私にも小学生の娘がいるので、ちょ っとでも考え込むことが恐ろしくなる部分もあります。 ただ、一点だけ言えることがあるとすれば、それは今の子どもは生身の体験 と困難――つまり、近所の悪ガキに泣かされたとか、うるさいオジサンに散々 しぼられたとかの、遊びを通じた“辛さ”を体験していないことです。いわば、 バーチャルの体験は多々あっても生身の人間と触れ合っていない。そのことが、 この加害児童のようなバーチャルリアリティーを生んでいるのかどうか? そ こはあくまで想像でしかありませんが、“遊び”と“真の交友”を奪っている 環境があるのだとすれば、大人の責任は大きいと思えます。 □■□ 後書きのつぶやき□■□---------------------------------------- 「報道の危機」 今回は忙しさにかまけて、また大分に間が空いてしまいました。お詫びをす るとともに、これからも読んでもらうような意気込みだけは示しておきたいと 思います。 最近、「おかしいな」と思ったことの一つは、首相が北朝鮮に行ったときの 日本テレビ記者の同行拒否事件。さすがに、後で慌てて撤回しましたが、指摘 される前はかなりの強硬さだったと聞きます。これも、あのでぶっちょ飯島秘 書官の入れ知恵に違いないのですが、こんな大事なことをなぜ、日本のマスコ ミは全社一丸となって報道しないのでしょうか。 不思議ですよねぇ。日テレの連中がよほど嫌われていたか(それにしても、 この問題とは別でしょう)。スクープへのやっかみがあったのかねぇ。まさか ね。私の記者クラブに長くいたから分かるのですが、独特の閉鎖性があること は事実でしょう。しかし、個々の記者たちは常識人(?)なのですから、こう いう時こそ手を組むべきとは思いますが。 本文でも触れたように、小泉首相の北鮮大会へのメッセージといい、何か間 違っているような気がします。小泉首相には、見るべきものが何もないのに、 支持率だけがまったく落ちないという不思議。「人生イロイロ、会社もいろい ろ……」なんて言われて、黙っている方がオカシイとは思うのですが。思いま せんか? イヤ、日本というのは実に不思議な国です。 今週のことば……「合計特殊出生率」 女性1人が15歳から49歳までの間に産む子どもの数の平均値。今回、こ の数字が1・29まで下がったことでまた、さまざまな議論を呼び起こしそう だ。日本の出生率は75年以降、低下の傾向が続いているが、これは欧米も同 様だった。しかし、イタリアやドイツは男性の育児支援などに力を入れて、上 向きの傾向。また、フランスは養育手当などを充実させることで、94年の1・ 65を底に02年で1・88まで回復させている。スウェーデンについても、 所得保障などに力を入れることで出生率を回復させた(02年、1・65)こ とは話題となった。日本はもちろん、先進国では最低ということになる。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行:メディア教育研究所 http://www.trimup.com/media/ 配信先変更、中止はこちら → http://www.trimup.com/media/melmaga.html ご意見、ご要望、お問い合わせはこちら → manchan@lapis.plala.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |