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タイトル:Daily Drama Express 2004/04/11 オレンジデイズ (1)  2004/04/30


===================================================== 発行部数   13 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2004/04/11 (Sun) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.日曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 日曜日の連続ドラマ
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タイトル オレンジデイズ
局  名 TBS系
放映日時 日曜21時
キャスト 結城櫂 (妻夫木聡)
 萩尾沙絵(柴咲コウ)
 相田翔平(成宮寛貴)
 小沢茜 (白石美帆)
 矢嶋啓太(瑛太)
 高木真帆(小西真奈美)
 堺田教授(小日向文世)
 萩尾ゆり子(風吹ジュン)
脚本  北川悦吏子

あらすじ  明青学院大学4年生の結城櫂(妻夫木聡)は、時計のメーカー会
社、アルファ時計の入社試験の面接を受けていた。
 面接官に大学で専攻している社会福祉心理学のことを尋ねられ、
「主に病気の人や障害を持った人の、心理学に基づいた精神的なケア
です」とにこやかに答える櫂。面接官の1人に「だったら病院とかに
就職した方が良いんじゃないの?なんでうちみたいなメーカーに?」
と言われ、「福祉の精神は、どんなところにでも生かせると思ったん
です。メーカーという物を作る場所でも、人のことを考えるのに変わ
りはないのではないかと」と澱みなく答える櫂。面接官は納得したよ
うに頷いた。
 しかし、既に病院や福祉センターなどは落ちまくり、何でもいいか
らとにかく内定を取らなければ――というのが櫂の本音だった。

 地下鉄のホームで電車を待つ櫂の右隣で、サラリーマンとおぼしき
男性が、携帯電話の相手に向かってペコペコと頭を下げながら話して
いる。
 一方左隣では、男子学生のグループが合コンの話で盛り上がってい
る。
 両者に挟まれた櫂は、まさに学生と社会人の間にいる存在だった。

 スーツ姿で大学への通学路を歩く櫂の肩を、後ろからバイクでやっ
て来た矢嶋啓太(瑛太)が叩く。
 「そんな格好で大学来んなよ」と言われ、「午前中面接だったんだ
よ」と答える櫂。

 校門の横にバイクを停める啓太を待ちながら、櫂はバイクのカゴに
オレンジが入って入るのを見つけ、「またそれ取って来たの?」とオ
レンジを手に取る。
 啓太は大学の近くの民家のオレンジの木からいつもこっそり取って
くるのだ。

 啓太は教室へ、櫂は就職課へと向かう別れ際、「じゃーねー」と明
るく去って行く啓太の後姿に、「お気楽だね、内定出てる奴は…」と
櫂はひとりごちる。

 オレンジを手にキャンパスを歩く櫂の耳に、バイオリンの音色が聞
こえてくる。
 見ると、芝生の中にあるベンチの横で、髪の長い女の子が1人でバ
イオリンを弾いていた。引き寄せられるように櫂が近づいても、女の
子は気づかずに厳しい表情でバイオリンを弾き続けている。

 やがてその女の子、萩尾沙絵(柴咲コウ)は櫂に気付き、手を止め
る。目が合い、櫂が拍手をすると、沙絵は黙って櫂に向かって掌を差
し出してくる。
 櫂は「え、お金?取んの??」と驚き、「あ、じゃあ、これで…」
とオレンジを沙絵に手渡す。沙絵は無表情でオレンジと櫂とを見比べ
る。

 そこへ、「ゴメンゴメン、遅れちゃって」と若い男性が沙絵のもと
へやって来る。
 沙絵はオレンジをベンチの上に置いてバイオリンをケースに仕舞い
始める。
 ボンヤリしていた櫂は、男性に「あれ?何か用?」と言われ、「イ
ヤ、別に…」と言ってその場を立ち去った。

 男性が「じゃ、行こっか」と言い、沙絵は頷いてその後について歩
く。そしてふと気付いたようにベンチの上のオレンジを取りに戻って
くる。

 櫂と啓太が精神療法の講義を受けていると、教室のドアの向こうか
ら、痴話ゲンカかのような女性の泣き声が聞こえてくる。
 教授の堺田(小日向文世)はそ知らぬ顔で講義を続けるが、終了の
チャイムの音に、「お、天の助け」とおどけてみせる。

 教室の外では、おミズ系の派手な服装をした女の子、アリサ(佐藤
江梨子)が泣いており、その横にはアリサを無視して携帯電話を覗き
込む相田翔平(成宮寛貴)がいた。
 アリサは「翔平、色々ひどくなーい?」と廊下に座り込んでしまう。

 そこへ櫂と啓太がやって来、啓太はアリサの横にしゃがみ込み、
「あのねぇ、こいつはひどいよ、極悪非道。俺なんかどう?優しいし、
優しいし、…優しいよ?」と言い、「やめとけよ」と櫂は啓太を小突
く。

 翔平は講義が終わったことを聞き、「出席扱いにしてもらわねぇと
単位ヤバイんだよ」と、慌てて堺田を追って走って行く。
 アリサもそれを追って行き、残された櫂と啓太は顔を見合わせ、
「あの子、昨日も来てたよな」「うん、ストーカーだね。完璧なスト
ーキング。24時間体制」と呆れる。

 校内のベンチに腰掛けている沙絵。
 男性が自分の財布から万札を数枚取り出し、沙絵のバイオリンケー
スの上に置くが、沙絵は首を横に振る。
 さらに数万追加するが、沙絵は無反応。
 男性が「オッケオッケ、じゃあ、10万でどう?」と両手を広げる
と、沙絵はにっこり微笑んで立ち上がり、男性の前まで近づいて、真
顔になって首を横に振った。

 キャンパスの中庭にあるベンチで、高木真帆(小西真奈美)が後輩
と手話の練習をしている。
 そんな中、真帆はふと何かに気付き、「ちょっと待ってて」とその
場を離れ、残された3人の後輩は「彼氏だよ、年下の」とクスクスと
笑う。

 啓太と中庭を歩いていた櫂は、真帆が駆け寄ってくるのに気付き、
「やべっ」と言って啓太の後ろに隠れる。
 「櫂くーん、就職決まった?」と明るく聞く真帆。
 「いや、まだ…」と答える櫂に、啓太が「真帆さん、直球ッスね」
と笑う。

 真帆は櫂の就職活動が難航していることを聞き、「頑張ってね。頑
張るんだよ」と櫂を励ます。
 笑顔で「私今手話の練習中なの。だから行くね、バイバイ」と言っ
て走って行く真帆を見、啓太は「相変わらず元気だねぇ。テンション
高いっつーかさ。上手くいってるんだろ?」と言い、櫂は「いってる
よ」と答える。

 夜、櫂のアパートには妹の愛(岡あゆみ)が来ていた。
 機嫌の悪い櫂に、「面接の電話ないからって、あたしのせいじゃな
いもんねー」と憎まれ口を叩く愛。
 櫂は「俺は今、幸せな奴とは話したくないんだ」と拗ねてベッドに
潜り込む。

 その時櫂の携帯電話が鳴り、電話の着信を見て「非通知だよ」と櫂
はニヤリとする。
 不思議そうにする愛に「就職試験の電話って、非通知で来るんだよ」
と説明し、電話に出ると、はたして受話器からは、『こちらアルファ
時計人事部の者ですが』と言う声が聞こえてきた。

 『あなたなかなか感じ良かったんですけどねぇ…、ルックスが今ひ
とつ…』と言われる。
 櫂が「なんか変だ…」と不審げに言うと、『だまされた?』と言う
翔平の声。
 啓太と翔平がイタズラで掛けてきたのだ。
 飲みに来ないか、と誘われるが、「いい加減にしろよ」と怒って櫂
は電話を切る。

 そこへ、再び櫂の携帯電話が鳴り、見ると真帆からだった。

 櫂がアパートの下に降りていくと、真帆が待っていた。
 公園のベンチに腰掛け、真帆は櫂に『就職成就』と書かれたお守り
を渡す。
 「昼間渡し忘れた」と言う真帆に、櫂は「サンキュ」と笑い、「啓
太がいたから昼間渡せなかったの?」と尋ねる。
 真帆は3つも年上だから、なんだか気を使ってしまう、と言い、大
学院に残る自分を置いて櫂が卒業してしまうことが不安だ、と告白す
る。
 櫂はそんな真帆の肩を黙って優しく抱き寄せた。

 翌日、中庭の掲示板で櫂が就職ガイダンスの案内を見ていると、沙
絵がいつのまにか横にいる。
 櫂が「4年生?どういうとこ受けんの?」と尋ねると、沙絵は黙っ
て離れ、隣の掲示板を眺め出し、櫂は「口くらい聞けよ」と呟く。

 櫂を呼ぶ真帆の声がし、見上げると校舎の窓から真帆が顔を出して
「翔平君達が探してる。これから大教室で就職説明会だって」と言う。
 櫂が「うん。行く行く」と答えて鞄を抱え直すと、お守りが鞄から
落ちるが、櫂は気付かない。

 櫂は沙絵に「説明会、行かないの?」と声を掛けるが、沙絵は黙っ
て首を傾げるだけ。
 櫂はため息をついて去って行き、沙絵は落ちているお守りに気付く。

 お守りを拾って沙絵が途方に暮れていると、友人の小沢茜(白石美
帆)がやって来、『どした沙絵?大丈夫?』と手話で話しかける。

 就職説明会で、啓太が翔平に「お願い、一生のお願い」と頭を下げ
ている。
 櫂が「そんなに可愛いの?」と聞くと、啓太は頷いて「転入生なの
かなぁ。あんなのいたら、絶対目立つもん。今まで気付かないはずな
いと思うんだ」と答える。
 啓太は必死になり、翔平にデートの約束を取り付けて欲しい、と頼
む。
 やがて終了のチャイムが鳴り、3人が教室を出て行こうとすると、
ドアの外からアリサが中を覗き込んでいた。

 喫茶店にアリサを連れて行き、翔平は、実は自分は啓太と付き合っ
ている、と嘘をつく。
 「うそ」と信じられないアリサだが、啓太は気まずそうに「スイマ
セン」と言い、櫂も罪悪感を感じつつ肯定する。
 アリサは泣きながら「このオカマヤロー!」と怒鳴ってコップの水
を翔平に掛け、走り去る。

 アリサが出て行ったのを見、翔平は笑って「悪かったな、助かった
よ」と啓太に言う。
 「それより、俺の方も頼むよ」「交換条件かよ」と何でもないよう
に話す2人を見て、櫂は「…泣いてたぞ」と言う。

 翔平は、好きな男はゲイだった、というのが1番女のプライド傷つ
かないんだ、と自慢げに言い、アリサのことを、どうせロクでもない
女だ、と言う。
 櫂は「いい加減、ちゃんとした女と付き合えよ」と言い、その勢い
で、翔平が就職活動をまったくしようとしないことを非難する。
 翔平はサラリーマンなんかになりたくない、と就職活動をバカにす
るが、「じゃあお前は何になるんだよ」と言う櫂の問いかけに答える
ことができず、怒って店を出て行ってしまう。

 翌日、翔平は中庭のベンチで読書をしている沙絵の姿をカメラで撮
る。
 全く沙絵が気付かないのをいいことに散々撮った頃、やっと沙絵が
顔を上げた。
 翔平が笑いながら「失礼。さっきから撮ってんのに、全然気付かな
いんだもん。音、聞こえなかった?」と言って近づくと、沙絵は立ち
上がり、翔平に向かって手を差し出す。
 一瞬驚き、翔平が「はい」とカメラを手渡すと、沙絵はカメラをし
ばらく眺めた後、突然振りかぶってカメラを投げ捨てようとする。
 驚いた翔平は慌ててカメラを抱き止め、「あぶねー、あんた、見か
けによらず暴力的だね」と言い、沙絵は翔平を睨み付ける。

 そこへ茜が「どうしたの?」と言ってやって来、翔平を見て不審げ
な顔をする。
 沙絵は怒った顔で茜に手話で説明をし、翔平は沙絵が手話を使うの
を見て驚く。
 状況を把握した茜は翔平に「もう、ダメだよ!勝手に撮っちゃ!」
と怒り、翔平は戸惑って「スイマセン」と謝り、そして「あの、俺こ
の人にちょっと用があったんですけど…」と言う。

 翌日、翔平は啓太に沙絵との約束を取り付けたことを報告する。
 「マジ?」と喜ぶ啓太に、「おう、明日1時にとしまえんの入り口」
と翔平。
 「ベタだけど、ま、いいか」と啓太は翔平を食堂に連れて行き、
「何でも食ってくれよ!」と言う。
 「学食かよ…」と呆れる翔平。

 啓太は偶然食堂にいた櫂を呼ぶが、翔平は顔をそらし、櫂も気まず
そうにする。
 しかし啓太がうどんを取りに席を外したので2人きりになり、翔平
と櫂はお互いに謝り合う。
 次第に普段通りに話し出す2人。
 翔平は、「何かしなきゃいけないことはわかってるけど、何だかピ
ンとこないんだ」と言い、櫂も「俺も流れに流されてるだけだ。とり
あえず就職しなきゃ、内定取らなきゃって…」と答える。
 翔平は自分なりに考えてみる、と言う。

 その夜、古びたアパートで、翔平の妹のあゆみ(上野樹里)が夕食
の支度をしている。
 軽く足を引きながら歩くあゆみを見、翔平は表情を曇らせる。
 冷蔵庫の中にケーキの箱が入っているのに翔平が気付くと、「お母
ちゃんが持って来た」とあゆみ。
 翔平は「家に上げんなよ」と冷たく言うが、あゆみは「上げんなよ
って、お母ちゃんだよ、私達の。今度の彼氏若いらしくて、こういう
ケーキ屋さんとかよく知ってんだって」と無邪気に言う。
 「彼氏とか言うなよ!お前がそういうこと、言うな!」と怒る翔平。

 一方啓太は、広々としたマンションの一室で、明日のデートのプラ
ンを練っていた。
 「長かったー。大学4年にして初彼女、しかもチョー可愛い!マジ
ヤバイ!」と1人浮かれる啓太。

 翌日、めいっぱいキメてきた啓太だったが、翔平に沙絵が聴覚障害
だということを聞かされ、「それ、俺聞いてない」と驚く。
 翔平は「だから喋れない」と言い、「はぁ?喋れないの?」と啓太。
 「うん、まぁ喋れないのか、喋らないのか知らないけどさぁ。うん、
喋んなかったな。手話?あれやってた」と翔平。
 啓太は一気に顔を曇らせ、「そんなぁ、どうすんだよ。どうやって
デートすんだよ」と泣き声を出すが、翔平は「男と女に言葉なんかい
らねぇんだよ。押し倒して、やっちゃえば」とふざける。
 そこへ櫂が現れ、「朝からどんな話だよ?」と笑う。

 講義中、啓太は2人に一緒にデートに来て欲しいと頼むが、にべも
なく断られる。
 「だったらさ、俺の代わりに行かない?」と言うと、翔平は「俺、
バイト」と言い、櫂は「お前が誘ったんだろ、自分で行けよ」と言う。
 「だって櫂、手話できるじゃんかよ。彼女に付き合ってよくやって
るじゃないか」と啓太。
 しかし櫂は「自分で行きなさい」とキッパリと言う。

 講義が終わり、啓太は携帯で誰かと話している。
 「いや、先輩の誘いとあっちゃあ…。ええ、大丈夫です。ハイ、行
きます」と言って電話を切り、櫂と翔平に、急に内定先のOBに誘わ
れたのでこれから行ってくる、と言う。
 「じゃ、後頼むわ。バイバイ!」と言ってそそくさと去って行く啓
太。
 驚く櫂に、翔平も「俺からも頼むわ。代わりに行ってやれよ」と言
う。

 結局、啓太の代わりに待ち合わせ場所に来ている櫂。
 顔も知らない相手を待っていると、自転車に乗って沙絵がやって来
る。
 まさかと思い、沙絵を見ていると、沙絵も櫂に気付くが、そ知らぬ
顔をして自転車を置きに行く。

 櫂は「マジかよ…」とため息をつき、意を決して沙絵に近づき、
「あのー、俺、啓太の代わり…」と話しかける。
 しかし沙絵は首を傾げ、櫂は「あ、ちょっと待って」と言い、鞄か
らノートを取り出して、筆談をしようとする。

 沙絵は櫂の手を止め、読唇術でわかる、と手振りで伝える。
 啓太が急用で来られなくなった、と櫂が言うと、沙絵は無表情のま
ま納得したように小さく頷き、さっさと踵を返し、自転車の方に向か
って行く。
 櫂は慌てて追いかけ、沙絵の持っていたバスケットを指し、手話で
『それ、弁当、作ってきたんじゃないの?』と話しかける。
 沙絵は驚いて『手話、できるの?』と言い、櫂は『ちょっとね。そ
れ、食べようよ』と答える。

 遊園地のテーブルで弁当を広げ、櫂は「美味しいよ」と言いながら
一生懸命食べるが、沙絵は弁当には手をつけず、煙草を吸い始める。
 一瞬驚いた顔をする櫂だったが、すぐに気を取りなおし、『これ、
時間かかったでしょ』と聞くと、沙絵は『お手伝いさんが作った』と
言う。
 『…そう、すごいね、お手伝いさん』
 『なわけないでしょ。お母さん』
 『あ、お母さん…』
 予想外の沙絵の態度にとまどいつつ、櫂はひたすら弁当を食べ続け
る。

 すると沙絵がテーブルをトントンと叩き、『そのタコ大丈夫だった?
賞味期限、切れてたんだよね』と言う。
 櫂が「…」と箸を置くと、『あれ、今の手話もわかったんだ』とバ
カにしたように言う沙絵。
 櫂は『これでも、心理学科の社会福祉心理学専攻。手話は必須科目
だった』と説明するが、沙絵は『そう』と一言で切り捨てる。
 『ボランティアで、聾学校にも行ったことある』と櫂が言うと、沙
絵は『ここに来たのもボランティア?』と言う。
 櫂はため息をつき、『違うよ』と答えるが、沙絵はそっぽを向いて
煙草をふかし、櫂はもう一度ため息をつく。

 遊園地の中を並んで歩く2人。
 沙絵は櫂に、『みんな1回ヤるまでは、それまでは頑張るわけよ。
でも、バレるまでね。耳が聞こえないことがわかると、振られちゃう』
と言う。
 何とも答えられず、櫂が目を逸らすと、沙絵は櫂の肩を叩き、『み
んな1回、ヤるまでは』と繰り返す。
 櫂はそれを遮り、『ちゃんとわかってるから』と答える。

 櫂は沙絵に「思うに、振られるのは耳のせいじゃないと思うよ」と
口に出して言う。
 沙絵が何も言い返さないので、再度手話で『思うに、振られるのは』
と言おうとすると、沙絵はそれを止め、『ちゃんと、わかってるから』
と言い返す。
 その可愛げのない態度に、櫂が『余計なお世話かもしれないけど、
耳よりその性格、何とかした方がいいんじゃないかな』と言うと、沙
絵は櫂を睨み付け、櫂の向うずねを蹴り飛ばしてスタスタと歩いて行
く。
 櫂は「痛っ!…蹴るかな、普通…。なんちゅう女だよ」とひとりご
ちる。

 それからも沙絵は『ポンペイの売春宿にはね、古代ローマ時代の
×××してる姿が、壁画になって残ってるらしいよ。しかも××とか、
××とか、バリバリやってたんだってよ!』などと、綺麗な顔に似合
わない下品な手話を連発し、櫂を辟易させる。
 櫂が沙絵に教わってその日覚えた手話は、関西ヤクザ風の『何言う
てんねん、ボケ!』だった。

 園内を歩き、櫂は沙絵にせっかく遊園地に来たんだから、ジェット
コースターに乗ろう、と言う。
 すると沙絵は急にためらいを見せ、耳が聞こえなくなってから乗っ
たことがないので怖い、と言う。
 それを聞いて櫂は乗るのをやめようとするが、沙絵は堅い表情のま
ま、『乗る』と言う。
 心配する櫂に、沙絵は『大丈夫』と答える。

 ジェットコースターに乗り、初めのうちは堅い表情の沙絵だったが、
勢いよく動き出すと、初めて笑顔を浮かべ、笑いながら櫂に『手を上
げて』と言い出す始末。

 ジェットコースターを降り、沙絵は櫂に『すッごく楽しかった!私、
あなたに感謝する。もうこういうの、全然ダメかと思ってた!楽し
い〜!』と嬉しそうに話しかける。
 『もともと好きなんだよね。富士急ハイランドのフジヤマも、よみ
うりランドのホワイトキャニオンにも乗ったことあるの』とまくした
てる沙絵に、櫂は『ごめん、そんなに早くちゃわかんない…』と言い、
沙絵は『あ、ゴメン』と素直に謝る。

 絶叫ポイントで撮られた写真を見て、2人は顔を見合わせて笑う。
 写真をキーホルダーにできると聞き、それを待つ間、テーブルに座
って待つことにする。

 櫂は沙絵に『いつから聞こえないの?』と尋ね、すぐに『ゴメン、
忘れて』と取り消す。
 沙絵は『…4年。まだ4年。でもどうして?どうして私が聞こえて
たって思ったの?』と聞く。
 櫂は『さっき乗る前、『聞こえなくなってから』って言ってたし、
あと初めて会った時、バイオリン弾いてたでしょ』と言い、沙絵は
『ああ、そうか…。耳、聞こえてた時はもっと上手かったのよ』と言
う。
 『でも、すげぇって思ったけど』と櫂が言うと、沙絵は顔を歪めて
首を振る。

 木の上にいる小鳥を見上げ、沙絵は『まだ耳ダメになって4年でし
ょ。まだ、慣れないの』と言う。こうして鳥を見ていると、自分がお
かしいんじゃなくて、鳥がおかしいような気がする、と。『なんで鳴
かないの?声、どこに置いてきたの?…声、置いてきたの、自分なの
にね…』と淡々と話す沙絵。
 櫂は何も言えず、黙って沙絵の顔を見つめる。

 そこへ、啓太から携帯に電話がかかってくる。
 「いやー、どうかと思ってさ」と言う啓太に、ちゃんと沙絵と会っ
ている、と櫂が言うと、啓太は「この埋め合わせはちゃんとするから
さ」と言う。
 電話を切った後、街中に1人でいた啓太は、ため息をつく。

 櫂が沙絵のところに戻ると、沙絵は空を飛ぶカラスを見ていた。
 『カラスはどんな声だったかなぁと思って』と言う沙絵に、櫂は園
内で渡されたチラシの裏に『カァカァ』と書く。
 沙絵がペンを取り、その下に『まぁね』と書くと、櫂は「まぁねっ
てなんだよ」と笑う。
 チラシを表向けると、花火の案内だった。
 花火と聞いて、沙絵は嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 櫂は沙絵に啓太から電話があったことを告げ、『心配して電話して
きた。君にゴメンって』と言うと、沙絵は真顔になり、『今日はあり
がとう。つきあってくれて』と言う。櫂が『こちらこそ』と言って微
笑むと、沙絵も小さく笑顔を返した。

 そこへまた携帯が鳴り、櫂は『ゴメン。あ、ついでに飲み物買って
くるよ』と言って席を外す。
 電話はアルファ時計の人事からで、最終面接を受けに来るように、
と言われる。
 礼を言って電話を切り、櫂はガッツポーズ。
 すぐに真帆に電話をし、真帆も櫂の報告を聞いて大喜びした。
 それから櫂は飲み物を買うため、混雑する売店の列に並ぶ。

 啓太はバイト中の翔平に電話をし、今から行って、沙絵に謝ろうか
な、と言う。
 カメラマンのアシスタントをしながら翔平は「いいよもう、ほっと
けよ」と言い、沙絵と付き合う気がないのなら、もう関わらない方が
いい、と言う。
 「デートはビビってすっぽかしました、スイマセン。あなたと付き
合う気ももうありません、スイマセン。…ダメだろ、それ」と言う翔
平に、啓太は「俺、情けないな。男として、ダメな感じだな」と落ち
込む。

 やがて日が暮れ、雨が降り出す。
 やっと飲み物を買えた櫂がテーブルに戻ってると、沙絵はいなくな
っており、テーブルの上には26番の札が残されていた。
 キーホルダーのできあがりを呼ぶアナウンスは既に33番になって
いる。
 「呼ばれても聞こえないんだ…」と気付いた櫂は、慌てて沙絵を探
しに走り出す。

 一方沙絵は、傘を買うために混雑する売店に並んでいたが、結局買
うことができず、雨の中をトボトボと歩き出す。

 翔平の家では、あゆみが洗濯物を慌てて取り込んでいた。
 帰って来た翔平に手伝うよう言うが、翔平は「やだよ、俺が洗濯物
なんか取り込めるか」と言い、あゆみは「何よそれ」と文句を言う。
 その時玄関のブザーが鳴り、翔平はとっさに隠れ、あゆみに出るよ
うに言う。
 ブツブツ言いながらあゆみが出ると、ドアの前には綺麗な女性がお
り、「お兄さんいらっしゃいますか?」と言う。

 翔平と一緒に洗濯物をたたみながら、あゆみは「本当によかったの
?会わないで帰ってもらっちゃったりして」と言い、翔平は「うるさ
いんだよ、アイツ。アリサ」と答える。
 「アリサ?」「アリサっていうんだよ。ま、わかんないけどね。本
名かどうか。おミズ系だから」と翔平が言うと、「違うよあの人、そ
んな名前じゃないよ」とあゆみ。
 「私あの人、雑誌で見たことある。たしか、佐伯そよ子っていうモ
デルさん」
 「そよ子?」
 「うん。有名な人だよね。ビックリしたよ。うちに有名人が来るん
だもん」とはしゃぐあゆみに、翔平は慌てて「お前、それ早く言えよ」
と言い、上着を着て飛び出して行く。

 翔平は走って駅に駆け込み、電車がちょうど出て行ったのを見て、
ため息をつく。
 そこへ後ろから、「翔平君」と佐伯そよ子(山田優)が声をかける。
 翔平が「あんたさ、どこに行ってたの?」と聞くと、そよ子は「言
わなかったっけ?スペイン。ロケに行ってたんだ」と答える。
 そよ子の濡れた髪に触れ、翔平は顔を近づけて、「お土産買ってき
た?」と言う。
 「忘れた」
 「忘れるかよ」
 「違うよ、家に忘れたの」とそよ子は甘えた声を出し、翔平はそよ
子のコートの中に手を入れ、そのまま2人は抱き合う。
 待ちくたびれた、この辺にも汚いけどホテルがある、と言う翔平に、
そよ子は「たまにはいいかな、そういうのも…」と答える。

 すっかり日が落ちた遊園地で、櫂が沙絵を探しまわっていると、雨
により花火が中止になった、と放送が入る。
 花火の場所に沙絵が行ったのではないかと考え、櫂はその場所に行
ってみるが、沙絵はいない。

 とうとう遊園地は閉園してしまい、櫂は雨の中、売店で買った傘を
差して歩き出す。そしてゲートの側に沙絵の自転車が停めたままなの
に気付く。

 沙絵は、1人で家に帰っていた。
 シャワーを浴びてリビングに出てくると、ピアニストの母、萩尾ゆ
り子(風吹ジュン)がピアノを弾いている。
 沙絵は鼻をひくつかせ、鍋がコンロにかかったままになっているの
を見つけ、火を止める。
 ゆり子の肩を叩き、『お鍋、火にかけっぱなし』と言うと、ゆり子
は「あっ」と叫んで慌ててキッチンに向かう。

 2人きりの食卓につき、ゆり子は『リサイタル、明日じゃない?つ
いつい弾いてたら夢中になっちゃったの』と言い、沙絵は微笑んで頷
く。
 『どうやって帰ってきたの?』と言うゆり子に、『タクシー』と答
える沙絵。
 自転車は置いてきたので明日取りに行く、と言い、沙絵はふと食卓
の向こうに置いてあるオレンジに目を止める。

 ボンヤリする沙絵を見、ゆり子が心配して『どうしたの?さっきか
らおかしい』と言うと、沙絵は『やっぱり私、ちょっと出てくる』と
言って家を出る。

 タクシーで沙絵が遊園地に戻ってくると、雨は既に上がっていた。
 閉園して真っ暗なゲートを見、自転車の方に近づくと、自転車のサ
ドルに傘が差しかけてある。
 辺りを見まわすと、少し離れたところで櫂が傘を差したまましゃが
み込み、眠っていた。

 沙絵は驚いてゆっくりと櫂に近づき、隣に座る。
 櫂の手にキーホルダーがあることに気付き、それに触れると、櫂が
目を覚ます。
 櫂は目の前の沙絵を見て微笑み、『花火、中止だって』と言う。
 沙絵は櫂の顔をじっと見つめ、顔を近づけてキスをした。


寸  評  まだまだプロローグ、という感じですが、今後メインの5人(白
石美帆含む)がどのようにからんでいくのか、楽しみです。

 色々裏のありそうな翔平、これが野島伸二氏の脚本だったら、さぞ
暗い過去を背負ってそうですが、北川悦吏子さんだからなぁ。あまり
重たいのは厭かも。

 ちなみに今回の第1話、いくつか謎が残りました。

 1、沙絵と金額の交渉をしていた男性。何者?ていうか何のお
金??
 2、翔平の妹、あゆみの足。軽く引き摺っているように見えました。
 3、啓太の「OBに誘われた」というのは嘘だったのか?

 3については謎というわけではないですが、よくわからなかったの
で。
 もし嘘だったとしたら、啓太君の行動、どうかと思います…。

執筆者  まめを(mico314@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 初回から大変あらすじが遅くなり、申し訳ありません。
 1度遅れるとなかなか巻き返せず、どんどんドツボにハマっていく感じです。
 今後もこんな状態が続きそうですが、温かく見守っていただければ幸いで
す…。

 それにしても就職活動、今は本当に大変みたいですね。
 私の頃も就職難の嵐が吹き荒れていて、なんとか潜り込めた会社も今年で入
社6年目。
 今頃になって、「もっとちゃんと考えて会社選べばよかった…」と後悔する
ことしきりです。

 内定取れればどこでもいい、なんて考え方はつまらないですもんね。ホント。
(まめを)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
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