================================================================ 〜言葉を風にのせて〜 高安ミツ子 |
新しい季節を知らせるように
沈丁花は紅色の明かりをともした
三月の香りが私の心に広がる
ふと不安の風船をふくらませていた君たちの
短くて長かった一年がよみがえる
澄んだ歌声 ぬぐいきれない汗の光
届かなかった思い
小さな悲哀 新たな道しるべ
抱えきれないほどの喜びの花束を抱え
でんぐり返った君たち
そして記念写真
次々と交差しては消える時間は
思い出オルゴールを鳴らしていく
今日の庭でつぶやく私の声は
八分音符の速さでよみがえり
春の息吹の沈丁花にかさなってゆく
熱い心にあたる風の冷たさに
見上げると澄んだ青空に卒業の二文字が
どこまでも続く命を包むように広がっていた