メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  2004/02/05


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月刊小説メールマガジン         2004年2月5日 発行
『君が好き!』  vol.73
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こんにちは、皆様。メルマガ配信が遅れまして申し訳ございませんでした。
瀬乃パソコンがソフトのインストール失敗でいかれていたもので、リカバリー
後のバックアップ復旧に時間がかかってしまいご迷惑をおかけ致しました。
ニューマシン投入も決まりましたので、もうしばらくしましたら落ち着くかと
思われます。よろしくお願い致します。
ああ…、どうかニューマシンが届くまで今のパソコンが持ちますように。
なんかさっき変な音がしてましたが…(汗)。
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼密やかな花・07         瀬乃美智子
▼けだるい午後のひととき・06   篠原美姫緒
▼あとがき
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            「密やかな花・7」
                           by瀬乃美智子

「私は…。」
やっと開いたオーカーの唇。

「私は、たとえ永遠の命を得ても、その者が人であると自ら信じる限り、人な
のだと思う」

静かな、しかし言い逃れとは違う確かな信念。
たとえどんなに長く生きようとも、力なく、魔族の助けを必要とする限り永遠
の命を得ても思えは人間なのだと…、オーカーは真剣な目は告げていた。

「それも一つの考えだ」
少しだけ満足そうにうなづいて、しかし少しだけ困ったように苦笑を漏らす。

彼は…カウネルは、一体誰の味方なのか。

「魔族が人間に望みを抱くのは間違っているのは分かっている」
オーカーは静かに告げた。
「それでも、私はお前に生きて欲しいのだ。体を直し、本当の実力を発揮した
お前に仕えてみたいのだ」


何千年も生き、数え切れぬ程の人間に仕えてきて…それでも初めて抱いた欲望。
オーカーと知り合った時、カウネルは既に体を壊しており、闘う気力はもうな
かった。
だから本来ならもっと広げられた領土も諦め、自国の繁栄だけに力をかしてき
たのだ。


しかし…、望めるのなら、一度でもいい、闘う彼の横に添い、全力を発揮した
彼に力を貸してみたかった。
それが…、それを可能とする永遠の命を手に入れる手段をやっと見つけたのだ、
オーカーは生まれて初めて主に自分の望みを口にした。。

そして、好きにすればよいと…やっと言ってもらえたのだ。
だからイグルーツを連れてきたというのに…。


「本当は、望んでなどいないのか?」
「ん?」
「永遠の命を…。」


オーカーの問いに、カウネルはどう答えたらよいのかと…。少し考えた後、不
確かな言葉で答えたのだ。

「私に…、永遠の命を手に入れる資格があればの話だがね」


一体、以前イグルーツとの間に何かあったというのだろう。

カウネルの部屋を後にしたオーカーは、自分の部屋に向かう中、考えていた。
二人の間には何かひどくもめる事があって、怒ったイグルーツが彼の元を去っ
た―――それは古参の魔族たちなら誰でも知っている噂であった。

しかしそれはあくまでも噂であり、誰も真実を知るものはいない。
ただ、知るのはカウネルとイグルーツの二人のみ。


イグルーツと分かれた頃のカウネルは、この城の前の城主を戦いで打ち滅ぼし
た後ぐらいだったという。

まだ率いる民を持っていたわけではなく。
イグルーツを失った事からかしばらくは自暴自棄になって城に閉じ篭った時期
もあったようだが、しばらくして城から少しずつ出れるようになり、その知識
で前城主に置き去りにされた近隣のものたちを助けたりなどした事から自然に
新しいこの城の王となったという話だ。
最も、歳もとらず、どんな強力な力を持っているかわからぬ相手だから民も逆
らわなかっただけかもしれぬが…。
今ではこの国も裕福になり、カウネルが王であり続けることに不服を言うもの
も表立ってはいないというのが現実であった。


オーカーはというと…、これがまた妙な縁での出会いであった。
彼はその頃ある王国の国王に召喚された。
王の娘は隣国であるカウネルの国の侵略を恐れ、王女を嫁に差し出そうとして
いたのだ。
要するに政略結婚というわけだが、王女は魔法を使うカウネルを大変怖がり、
その為にオーカーは召喚されたのだった。

もし、カウネルが王妃にひどい扱いをするような暴君であれば王女を守り、も
し彼が良君であれば、彼を主と決め、従う事と…それがカウネルとオーカーの
出会いであった。
そして幸いにも、オーカーは良き主であったカウネルに今でもつき従っている
のである。

                              《続く》
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          【けだるい午後のひととき】第6話
                           篠原美姫緒

 このM井S友海上という保険会社は、会社の賠償金額に納得しないお客様(被
害者)には、お客様扱いしないという。そして、M井S友からの電話はその日を
境に来なくなった。
「あー、それ保険会社の手だから、こっちからかけなきゃ放置のままだよ」
 その後どうなった、と取材?らしく水晶が食料を漁りに実家へとやってきた。
 水晶曰く、「あそこはやばい!」らしい。
「合併してからさ、S友体質になったらしく、がめついわー。俺の知り合いにも
もめてるやついてさ、たかが80万そこそこの物損事故らしいが、顧問弁護士
とド素人が法廷対決だって。その裁判では、ド素人が顧問弁護士に勝ったんだ
が。」
「な、なんという‥」
「ようは、誰の目にも明らかなほどに、保険会社側が理不尽且つ保険金詐欺を
働いている。弁護士も弁護士法破りまくりで交渉してるって話だ。俺今度、ノ
ンフィクションでそれやろうかな。刺されそうだけど‥」
 やっちゃえ!、と安易にいえない何かがあった。口封じに刺されるっていう
のもありえそうな会社だ。
「交通事故紛争処理センターに斡旋申し込んで。」
「で。って、なんで水晶が私に頼むのよ!」
 人をだしにして、いろいろな情報が欲しいのがバレバレである。
「あそこ、保険会社の顧問弁護士とかの天下り先なんだ。」
 とニヤニヤしている。
「でも、80%は解決してるっていうしなぁ。」
「どっちなのよ。。。。」
「とりあえず、申し込まないと東京は斡旋まで4ヶ月待ちだってよ」
「マジ?!」

 交通事故被害者の駆け込み寺として名高い交通事故紛争処理センター。出資
に損害保険機構かかわっているために、ここでの裁定に対しては保険会社は呑
まざるを得ない。裁判所の調停よりもはるかに効力を持つが、裁判ではない。
が、多くの被害者が涙している裁定だという噂もある。無料ということもあっ
てか、人気がある。裏を返せば、
「それだけ多くの人が保険会社に泣かされているわけだ」
 なんのために、高い保険を払っているのだろう。安い保険会社ほどその傾向
にある。さらに、外資系はこのセンターの裁定に効力はない。AHDとかAXDなど
は、「裁判!」で解決せざるを得ない現状だ。


 とりあえず、申し込むだけ申し込んでみる。
 申し込みの際、「保険会社が示談してくれない」といってみた。すると、当
日は保険会社と一緒に来てくれという。一ヶ月半待ちで済んだ。
「まぁ、新しい車も買ったし、気長に交渉するかな」
 そんな軽い気持ちだった。
 M井S友から、電話がかかってくる気配はないので、こちらからかけてみる。
 M井S友は、お二人の事故内容が合わないのと、そればっかりなので
「じゃあ、現場検証してください。現場を見ればどちらがいってることが正し
いのか、すぐわかりますから!」
 と、いうと東井は「そうですねぇ」と、現場検証を了承したのである。


 次の日、新井から電話があった。先方も現場検証してもいいというので、日
にちを決めたいという。
 と、その前にあの謎の発注事件のことを問い詰めてみた。

「松岡さんと連絡がつかないので、ディーラーに連絡するように頼んだのです」

 そう、新井は言った。
「うちには留守電もあれば、誰かいるから2、3回かければ連絡つくようになっ
てますよ!」
 あきれるばかりである。
「それに、修理する場合、いくらかかっても修理してくれるかどうかを聞いた
だけです。」
 と付け加えた。
「ディーラーは、あの車は修理しても乗れないっていってますけど」
 見た目は板金屋の名にかけて綺麗になるだろう。が、車は精密機械だ。エン
ジン部分が衝突されてつぶれている以上、そこだけ直すというわけにはいかな
い。現に、ディーラーは、直して乗ってもいいけど、うちでは一切保証できな
いよ。とはっきり言ったのだ。運転している途中にハンドルきかなくなっても
ブレーキが効かなくても、タイヤが取れたりしても、メーターがいかれても、
ディーラー側ではそのことがわかってて修理して乗っているんだから、という
ことなのだ。

そういう車をあなたは無理にでも修理して乗れますか?

 すると、新井は開き直ったらしい。
「だいたい、今更現場検証してもなにもなりませんよ。私も契約者と2人で現
場に行き、きちんと調べましたからあなたの言ってることはおかしいんです。」

 加害者と二人きりで現場検証?!

 被害者の言い分なしで先に加害者と現場検証をしているというのだ。
 その上で、天保と現場検証するのだというではないか。

 被害者をバカにするのもほどがある。こんな保険会社はいままで他にない。
加害者は自分の罪を軽くするため、当然嘘をつく。それに、こっちは事故直後
にしっかりと事故状況を伝えており、その主張はいままで曲げていない。

「口裏合わせってか。。。」

 ドラマのような展開にワクワクする天保であった。



 現場検証当日。
 いい天気だ。
 約束の時間朝10時に、現場に行く。
「こんな広い交差点でよくぶつかったよなぁ。しかも右と右で」
 父親は巻尺を片手に、道路の幅を計る。
「10m道路。40Km/時なら早回りすれば余裕で右折できるな」
 車の通りは少なく、広いがゆえに、速度も落とさず曲がっていく車がいた。
 しかも直線。
 青信号。
「こんな道路でぶつかるなんて‥」
 実に不運としか言いようが無い。
「前方不注意とか、ありえん。」
 
 しばらくすると、ミニストップの駐車場から二人のスーツを着た男が近づい
てきた。
「新井です」
「東井です」
 と、名刺を手渡された。
 事故日から1ヶ月経っているため、もう事故の跡はない。
「ここでぶつかったんです!」
 と、天保はマンホールを指さした。
 婦警と共に、現場で事情聴取をしているときに、「ここでぶつかったんです」
と、指さした先にマンホールがあり、その上にヘッドライトの破片が散乱してい
たので、よく覚えていた。
「そこはありえない」
 と、新井が言う。
 しばらくして、修理した車に乗って石井がやってきた。
「どもども」
 と、ニヤニヤしながら言う。
「俺はねぇ、この道をまっすぐ来て、車きてないから右に曲がろうとしたら、
あんたが突っ込んできたんだよ」
 ありえない。保険会社が加害者に入れ知恵でもしたのだろうか。こんな余計
に自分が不利になるような嘘をよくいったもんだ。
「あら〜? 私は信号が青になったから発進したんですよ? 対向車みえてな
かったんですねぇ。しかも私の前に車がいたんですから。車が来てないなんて
ありえません。」
「あ〜いや、曲がるときはちゃんと速度落としてたよ」
「へ〜、何キロくらいでてました?」
「そんなの、メーターなんかいちいちみてないってぇの」
「徐行していたっていうんですか?」
「ああ、していたね」
「じゃあ、その法定徐行速度って何キロかご存知でしょ?」
「んなの、知るかよ!」
 その石井の言葉に、新井と東井は顔をしかめた。
 天保はニヤリと東井を見る。
「と、いうことは、徐行していないってことですね。はい、修正要素です」
 徐行とは、ブレーキを踏めば止まれる速度で、一般に時速10Km以下となっ
ている。が、車のメーターに10Kmは数字表示されておらず、20Kmから数字
で20Kmずつ表示されているのだ。右折するときに、徐行していたというなら
ば、「メーターが20Kmより下だった」というのが、正解だろう。
「でもね、事故車の様子からスピードが出ていたというのは不自然で‥」
 と、新井は紙にベクトルの方程式を持ち出してきた。
「だから? 卓上の空論なんていいのよ。計算上で答えがでないから事故にな
るんでしょ。」
 ごもっともだ。と父親はうなずいた。
「それに、私は、赤信号で止まって青信号になってから発進したんです。スピ
ードでてるわけないじゃん。」
「ローギアだったというなら、馬力があるからな‥」
 東井はボソっといった。
「じゃ、じゃあ石井さんはどの辺で衝突したんですか?」
 話をそらすべく新井は衝突地点の話をしだした。
「ああ、あの線の先、中央にマークあるでしょ。あの辺」
 ああ、やっぱり保険屋と話あわせてるな。と、父親は耳打ちした。
「へ〜。私は婦警さんとお話した時に、この(歩道)信号の場所で話しをして
いました。そのときに、目先2m弱のところを指差したんです。しっかり覚え
てますし、ぶつかった直後に目撃している方もいらっしゃいますから」
「でも、その人は衝突したところを見たわけではないんでしょ?」
 と、保険屋はなんとしてでも有力な目撃者をつぶしたいらしい。
「ええ、でも、どの辺でぶつかっていたくらいは証言できるでしょ。ねー石井
サン♪ その人に聴けばどこでぶつかったかはっきりしてくれますしねー」
「ああ、あそこの家のおばちゃんだろ‥」
 新井は、手で顔を覆った。衝突した場所がどこであれ、目撃した人物がいる
ということを、加害者・被害者共に認めたわけだ。早いはなし、これは加害者
には不利である。
「過失割合だかなんだか知らんが俺は、あんたから金もらうつもりはないよ。
俺が全面的に悪いし、もう直しちゃったし。それにしてもこんな事故でなんで
こんなにもめるんだか‥」
 石井の本音であろう。加害者としては、高い保険料はらって保険に加入して
いるのだから、さっさと金払って終りにしたいだろう。
「では、9:1でどうですか?」
 突然、東井が言い出した。
「はぁ?」
「9:1で、石井さんはいらないというなら9:0で」
「いま、初めて聴きましたんで、どうコメントしていいかわかりません」
「示談ですから、譲歩して9:0で考えてみてください」
 わかりました。と返事をして、現場検証は終わったのであった。

                             <<つづく>>

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2004/2/5 73号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimisuki@hoshizora.jp
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